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駿河湾・石花海の大型ヤリイカ、“開宴”秒読み!!

2017年01月01日公開

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「一年の計は元旦にあり」と言うが、ここ数年、「イカ釣りへの苦手意識を克服したい」と頑張っているのになかなか成長が実感できない。「石花海(せのうみ)のヤリイカが順調に発育している」との情報を聞き、武者修行のプチ遠征。静岡県・戸田港『ふじ丸』に出掛けた。

首都圏から2時間とちょっと

「ふじ丸」が停泊する戸田港は、東名高速・沼津ICから1時間弱。海岸線のルートと峠道のルートがあり、車好きならどちらを選んでも変化に富んだドライブを楽しめるだろう。午前3時過ぎ、峠から見下ろした戸田港周辺の夜景は、心にも火が灯るような光景だった。
『ふじ丸』の船着場は常夜灯に照らされていて初めてでも判りやすい。そのうえ、沿岸の小道を挟んだ向かいに車が停められ、投入器だ何だと荷物の多いイカ釣りには非常に有り難い。快活で声通りのよい船長の段取りによって、席決め、乗船名簿の記入、氷の配布が滞りなく進行し、「第5ふじ丸」は4時30分に出船した。
この船には6人分のベッドがあるキャビンと、4人が寝袋で横になれる天井の高いキャビンの2室があり、釣り場到着まで釣り人たちはゆっくり横になって仮眠が取れる。

朝から快調な滑り出し!

西風が強かったこの日、船は正面からウネリを受け、釣り場の石花海に着いたのは7時を回った頃だった。「ゆっくりでいいよ~」と船長に声を掛けられながら、釣り人たちは仕掛けの準備を始め、7時半にスタートした。風も強く、決して釣りやすい状況ではなかったが、右舷ミヨシ(船首)で竿を出していた常連の三枝辰雄さん(御殿場市)が開始間もなく船中1杯目を上げると、船のあちらこちらで竿が曲がり、電動リールが唸りを上げるというノリノリモードに突入した。今シーズンは昼近くまで我慢の釣りが多かったと言う石花海エリア。この日の嬉しいサプライズに「いつもは朝、釣れないんだよ」と船長にも笑みがこぼれた。

 

石花海のヤリイカ釣りスタイル

イカ竿と言えば8:2から9:1の竿が主流だが、石花海では軟調の竿を使う釣り人が必ず何割かいる。この日も船中1/3の釣り人がこのスタイルだった。外海のパワフルなウネリや、釣れるイカのサイズが大きく身も厚いので、この日も巻き上げ途中のバラシがことの外多かった。感度重視の先調子竿だけでなく、ノリのよい粘る調子の竿をお持ちなら、ぜひお試し頂きたい。また、釣り場までの航行が長いので、竿が転がったり飛ばされたりしないよう、手すりなどに縛り付けるマジックテープのロッドベルトやナイロン紐を持参すると便利だ。

釣ってる人は、知っている

好調なスタートを切ったこの日。このまま束釣り(100杯超え)突入かと思いきや、パタっと乗らなくなるタイミングが訪れる。かと思うと、投入された仕掛けをちょうど中層の70~80m周辺で止めるサバが交じったり、入れ掛かりのように釣れ始めたりと、流している間、一日の中でもノリに差があった。
その中でも着実に数を伸ばしていたのは宮宗和彦さん(川崎市)。「石花海は特別。(首都圏からでも)来る価値がある」と、このエリアの釣りと大型のヤリイカに魅せられた釣り人のお1人だ。「底でしか乗らない」というこの日のパターンを早いうちに掴み、落ち込みで底に着いた後の“待ち”のタイミングを計ったり、ツノ数を増やさず手返しを優先したりと工夫を凝らし、この日の竿頭に。また、仕掛けやカンナに付いたイカ墨を丹念に取り除いたり、曲がったり曇ってきたツノを交換するという、イカ釣りとしては基本的な心掛けも、実は釣果に大きく影響しているようだ。

年始にはパラソルサイズが!

今シーズンの模様を山田真一船長に尋ねると、イカの型は例年並みとのこと。シャクリ方はその日その日のパターンはあるものの、海底付近をじっくりゆっくり優しく誘う釣りが中心となるようだ。また、イカが中型・小型の頃には細い棒状のツノに、良型になると平べったい魚型のツノに反応が良い傾向がある“気がする”そうなのでご参考まで。年始には“パラソル級”と呼ばれる胴長50cm超えにまで成長する石花海のヤリイカ。この記事が掲載される年明けには、豊穣の海で繰り広げられる巨大ヤリイカの饗宴が真っ盛りのことだろう。

ヤリイカ釣りをゆっくり満喫できる船宿
『ふじ丸』で特筆すべきは、その快適さだ。港から遠く離れた石花海までの航行は、往路は自動車の運転の疲れを、復路は釣りの疲れを癒やすのにちょうど良い。シャクリや仕掛けの捌きに体力と神経を使うイカ釣りでは、この休息時間が非常に重要で、「ふじ丸」の清潔で心地よいキャビンは、身体を伸ばしてゆっくり休むことができる。
他にも仕掛けに片手を使いながら何かをすることの多いイカ釣りで、オケにジャストサイズのザルが用意されていたり、風の中でもツノが捌きやすいよう、船縁にピッタリの大きさにカットされたツノ掛けマットが貸し出されていたりと、快適さへの心配りがありがたい。
乗下船時や船上で事ある毎に「ゆっくりでいいよ」と言う船長の声掛けに救われる場面も多く、常連さんや乗り合わせた釣り師の方々も、オマツリで声を荒げたり、仕掛けの回収を急かしたりする「イカ船にありがちな険悪ムード」は微塵もない。「イカ釣りが苦手」と言う人が苦手としているのは、実はあの雰囲気なのではないかと気付かされる一日だった。
「次は温泉宿も一緒に予約しようかな」と感じる、『ふじ丸』はそんな船宿だ。

今回利用した釣り船

静岡県戸田港『ふじ丸』
〒410-3402 静岡県沼津市戸田289-12戸田観光協会
TEL:090-1474-9396
定休日:元旦 釣果・施設情報 ふじ丸 ホームページ

出船データ

ヤリイカ乗合(予約制)
乗船料金:1万4,000円(氷付き)
集合:船着場へ午前4:00(変動あり、予約時に確認を)
     
※記事の掲載内容は公開日時点のものになります。時間経過に伴い、変更が生じる可能性があることをご了承ください。

この記事を書いたライター

川添 法臣
釣りビジョンAPC
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他
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