2017年01月15日公開
毎年正月を過ぎると、行きたくて居ても立っても居られない釣り物がある。1月から3月までの季節限定で楽しめる、超が付く高級魚“オニカサゴ”である。
スーパーや鮮魚店でもめったに出ないこの魚を食せるのは、釣り人ならではの特権。そんな希少な魚が今、神奈川県小田原沖で釣れ盛っているとの情報。行かない手はないと1月8日に、小田原早川港『坂口丸』にお邪魔した。
オニカサゴ? イズカサゴ?
釣り人が呼ぶ“オニカサゴ”。和名ではイズカサゴと呼び、実はオニカサゴという名前の別種がいる。確かに姿は似ているものの、イズカサゴの方がより鮮やかな色合いをしている。なぜその間違いが生まれたのかは不明だが、“オニ”が冠に付くその名の通り風貌はいかつく鬼そのもの。そして何より強烈なのは、幸い筆者は経験したことがないが、背ビレと腹ビレに持つ毒棘。刺されようものならば激痛に苦しむそうだ。しかし、毒のある物に惹かれるのは人間の性。そのプリプリした白身は絶品なのだ。刺身、唐揚げ、煮付けはもちろんだが、この寒い時期に食べるシャブシャブや締めの雑炊は絶品。毎年この時期が楽しみで仕方ない。
小田原沖は相模湾の好漁場の一つ
オニカサゴは水深100mより深場の砂泥域や岩礁帯に生息し、水深が急に深くなっている小田原沖の岩礁帯は相模湾の好漁場として知られている。小田原早川港の『坂口丸』はオニカサゴに精通した船宿で、連日好釣果を記録している。同港へは都内からだと東名高速、小田原厚木道路を乗り継ぎ小田原西ICを下りてすぐ。1時間程度とアクセスがよい。出船は6時半なので4時半に多摩地区の自宅を出たが、余裕を持って到着出来た。年末年始は大変な混みようだったそうだが、この日はお正月明けの三連休の中日。しかも午後から天候の崩れが予報されていた。今日は私を含め4名での釣行となった。
途中イルカの大群に遭遇
本日ご指南いただくのは久保田幸司船長。小田原沖のオニカサゴのポイントや釣り方に最も精通した船長の一人であり、流し替えの度に水深等の指示をもらえて非常に助かる。午後の雨予報もあるので早々に準備を済ませていざ出船。ポイントまでは50分ほど。その航程で毎週のように海に通う筆者も初めての光景を目にする。数にして30頭程いただろうか? イルカの大群が海面をジャンプしている。この幸運は釣果に結び付くのだろうか?
先調子の短めの竿がお勧め
小田原沖のオニカサゴは水深100mから200mまでを幅広く攻める。使うオモリは120号。終日誘うことを考えるとなるべく短めで、120号を背負える先調子の竿がお勧めだそう。船長の話ではあまり長く軟らかいと、疲れると同時に岩礁帯で根掛かりしても気付きにくいと言う。確かにその通りだと感じた。ビシアジ用の竿などでいいのではないかというのが個人的な感想。付ける餌は10cmほどにカットされたサバの短冊が船で配られる。サケ皮やアナゴの皮などを自分で持ち込む釣り客もいるそうだが、サバの短冊が最も釣果が上がるそうだ。
最初の流しから良型の本命
最初は浅めのポイントからスタート。水深は90~100mほど。船長からの「あまり底ベタにすると根掛かりしますので、オモリが着底したら50~60cmほど上げて待ってください」という貴重なアドバイス付きのアナウンスで実釣開始。開始早々に最初のオニカサゴからの魚信が右舷艫(船尾)の間瀬博さんに訪れる。オニカサゴは特徴的な“ガツッ、ガツッ”という強い引きを定期的に見せる。オニカサゴにはウキブクロがなく、非常に生命力の強い魚なので深場から上げてきても弱ることなく最後まで抵抗を見せるので楽しいが、一方で注意も必要。丁寧なやり取りで上がって来た最初の1匹は700gほどの立派な本命。朝から景気がいいや。
周りで釣れたらより集中
オニカサゴは同じポイントに複数で生息している。1匹掛かるとそのすぐ横の仕掛けにも続けざまに掛かることが多々あるそうだ。一緒に買い物に行った友人が買った物が急にほしくなり、衝動買いするのに似ている気がした。しかし、いい意味でも悪い意味でもこの日は釣り客4人。きっちり4隅での釣りのために、お祭りを気にすることなくゆったり釣りができる反面、この衝動掛かり(?)はなかった。
流しの度に本命
コマセを使って魚を寄せるような釣り方と違って、魚のいそうなポイントに船を流す釣り方。希少な魚ゆえ、複数で生息しているとはいえ、同じポイントにそう沢山はいない。しかも好む場所は限られている。なので頻繁に流し変えてポイントを転々とする。この日は途中でアタリが遠のいた時間もあったが、特に後半は流しの度に本命の顔を見ることが出来た。しかも上がってくるサイズが500gを超える良型が多い。
折角の大型サイズが……
1kgを超える大型も1日に何回か顔を出すそうだ。この日も2回ほど姿を見た。姿を見たというのは、残念ながら船の上に上げることは出来なかったということも意味する。最初は右舷艫(船尾)の間瀬さん。明らかに強い竿先の叩きに良型であることを感じてはいたものの、カメラ片手でタモ入れを手伝うことが出来ず。そのまま抜き上げようとする間瀬氏からするっと落ちてしまった。本当に申し訳ない思いがした。1kgは確実に超えていた。そして2回目は筆者だ。タモ入れを手伝えなかった罰であろうか……間瀬氏と同じく引き上げ最中に、さようなら。いい場所を流してくれた久保田幸司船長、本当にごめんなさい。
5匹もの高級魚をゲット
予報通り正午を過ぎると本降りの冷たい雨が降り始めた。その悪い状況の中でも集中力を切らさずに、間瀬さんは計5匹の本命を釣り上げた。船長のアドバイスをしっかり守り、海底から数10cmほど上げた場所をきっちりとキープしていたそうだ。あまり誘いをかけなくても底ダチの取り直しがいい誘いになるそうだ。1匹顔を見れれば御の字というほどの希少な魚をおでこなしで1~5匹。この日もカンコやユメカサゴは交じったが、日によってはアラも交じるそう。十分以上に楽しむことが出来てこの日は終わった。オニカサゴのシーズンは潮が濁り始める3月から4月までだ。なんとかそれまでに再訪したい。
今回利用した釣り船
出船データ
出船:午前6時30分~午後2時沖上がり
乗合料金:9,000円(餌、氷付き)