2017年02月01日公開
細い道糸を用いて、オモリや釣り具の軽量化を図るライトタックル(LT)。船釣りのLT化は様々な魚種の釣りを身近なものにして来たが、その恩恵を最も受けた釣り物はアマダイではないだろうか。年末年始の赤い魚ブームも落ち着いた1月12日、驚きの良型と釣果を叩き出しているとの噂を聞き付け、平塚港『庄治郎丸』を訪ねた。
前日の釣果は9~11匹!?
今から800年以上前、かの源頼朝が落馬した逸話から「馬入川」と呼ばれるようになったと言う相模川の河口、湘南大橋の袂にある『庄治郎丸』。オオカマスやホウボウなど、目新しい釣り物に注目は集まるが、LTアマダイの「9~11匹(20~40cm)」との好釣果には目を見張る。
6時25分、「アマダイの方ぁ~」と休憩所にお呼びが掛かり、トラックに荷物を積んで船着場へ移動。受け付けの際に「年明けは空いてる」とは聴いていたが、大型船に釣り人5人とは、まさに“大名釣り”だ。細糸のためオマツリが大敵となるLTの釣り。これは手足を伸ばしてのんびり楽しめそうだ。
釣り開始15分後には1匹目がヒット!
航程わずか10分。平塚沖、水深70mのポイントからスタートした。程なくして左舷トモ(船尾)の近藤広幸さん(大和市)に船中1匹目がヒット。全長2.6mとやや長めの仕掛けを使っていたのが印象的だ。しかし、後が続かず船は大磯沖の水深100m前後のエリアへ。ここでも低めのタナで釣る近藤さんにアタリが集まり、アッという間に3匹を追加。好調な滑り出しに「ホウボウ船に乗るつもりで来たんだけど、アマダイにして良かった」と嬉しい本音がこぼれた。
LTアマダイとは…
水深100m前後の釣りとなるアマダイ釣りは、数年前まで片天ビンに80号のオモリをぶら下げた“吹き流し仕掛け”で釣るのが一般的だった。アタリの微かな餌盗りが多く、仕掛けの上げ下げにも時間が掛かることから、どちらかというと上級者向け、玄人向けの釣り物とされてきた。しかし、LTと小型電動リールの普及がこの釣りの敷居をグンと下げ、最近では「ディギング」と呼ばれる新釣法(平たく言うと特殊な鋳込み天ビンのコヅキ釣り)まで現れるなど、スポーティな釣りの対象魚へとイメージチェンジを遂げた。
アマダイは、グングンという“本アタリ”の前に、言葉で表現しにくい生命感が伝わってくる“前アタリ”があるのだが、LTではこれが非常に感知しやすく、“前アタリ”に対して、聞き合わせで仕掛けを張った状態から“本アタリ”を出して合わせる(ハリ掛かりさせる)までの一連の流れが作りやすい。かつての道具立てで「アマダイ=よく分からない釣り」と感じていた人ほど、LTアマダイのテクニカルな面白みにきっと驚くはずだ。
“本命”ではなくっても…
アマダイ釣りと言えば、美味しい“ゲスト”の交じる釣りでもある。釣り人にはアカボラと呼ばれることの多いヒメコダイ。これは魚体も小さく調理に手間は掛かるが、刺し身、天ぷら、干物に煮付けと何にしても非常に美味い。アマダイと釣れるタナが同じなので、積極的に釣って大事に持ち帰ることをお勧めしたい。そして、ムニエルではシタビラメと人気を二分するマトウダイ。これはトラギスなどがハリ掛かりした時に竿先を上げて底を切り、様子を見ていると食ってくることがある。同様にハタが釣れることもある。酢締めや“鯛飯”にピッタリのレンコダイ(キダイ)や唐揚げにすると骨まで食べられるガンゾウビラメ、トゲには注意だが食べれば美味しいオニカサゴもアマダイ釣りでは定番の“ゲスト”だ。また、この日は上がらなかったが、釣り味も食味も素晴らしいカイワリやシロアマダイが交じることもある。ただし、ガンゾウビラメやオキトラギスが釣れるのは、アマダイより低いタナに餌がある時なのでご参考まで。
竿頭7匹の快挙、大物はまだいる!
今シーズンは10月からと、例年よりかなり早くからアマダイを追いかけてきた『庄治郎丸』の世古勇次郎船長。この釣りのコツを尋ねると「マメにタナを取ることと、アタリがあったら面倒くさがらずに餌のチェックをすること」。この日も徐々に水深が浅くなる“カケ上がり”の流しや、徐々に深くなる“カケ下り”の流しなど、様々な地形を多彩な流しで攻める船長のアプローチを活かすには、20~30秒に1回はオモリで底を確認することが、タナボケ防止とアマダイへのアピールにつながるようだ。また、餌のオキアミの頭を取られると“本命”の釣れる確率が下がるので、電動リールの機動性を活用して、マメに仕掛けの入れ替えをすること。これが魚への誘いや道糸の出し過ぎ、オマツリを防ぐ好循環へと繋がるようだ。
この日の竿頭は、船中1匹目を釣り上げた近藤さん。40cmオーバーの良型を頭に“本命”7匹と大健闘。取材日後にも、53cmというトロフィーサイズの大物が上がっている『庄治郎丸』のLTアマダイ。寒さが厳しさを増すこれからの季節、常にあれこれ考えながら身体を動かすこの釣りに、冬の釣りを敬遠する釣り人もきっと寒さを忘れることだろう。
抜群な食味!!
繊細なアタリを取るゲーム性に加え、この釣りの魅力は何と言ってもその“食味”にある。京料理では「グジ」と呼ばれる最高級魚。酒蒸しや昆布締め、小振りな個体はウロコを引かずに姿揚げにしてもオツだ。カワハギやマルイカなどテクニカルな釣りのファンは勿論、虫餌が苦手な女性アングラーにもとっつきやすいアマダイ釣り。この釣り味と食味を覚えてしまったら、冬の釣りがもっと楽しくなること請け合いだ。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:9,500円(餌付き/※HPに各種割引あり)
集合:船宿へ6:25 出船:7:15