2017年04月15日公開
開幕から不漁だった今年の“イカナゴ漁”。家庭でも「高くて釘煮が作れない!」と話題になり、関西では大きく報道された。そして資源保護の為にイカナゴ漁は早期打ち切りとなった訳だが、この時期イカナゴを荒食いして産卵後の体力を回復するメバル。果たしてメバルはイカナゴに有り付けていたのだろうか?そんな疑問を抱きつつ兵庫県・須磨浦『仙正丸』へ向かった。
“尺メバル”を求めて!
メバルは、当て字で『春告魚』と書かれるだけあって低水温にも強い。冬~春にかけて海水温が低くなる大阪湾から播磨灘では、釣りのターゲットが少なくなるが、メバルはこの時期産卵後の荒食いをするため、このエリアではポピュラーな釣り物となっている。しかも30cmを超える“尺メバル”も狙える。
出船5分で釣り開始!オモリは30号で統一!
乗船前に若女将が番号札を袋に入れ、それを各自引いていく。そして船へと乗り込み、各番号の釣り座へ。辻久信船長が出船準備をしている間に上乗りの山田壮一さんが手際よくエサを配って段取りしている。そして若女将に見送られ、「仙正丸」は静かに出船。船は5分ほどでスローダウンした。
まだ薄暗い中、船長は潮の流れを分析、アプローチをする角度を決めてスタート位置を探している。ポイントも近ければ仕掛けも繊細なだけに、焦らず確実に仕掛けをセットしたいところだ。オモリは30号で統一。そして「仕掛けは全長3.5~4m、ハリは4、5本が理想的。竿は仕掛けが扱いやすい4m前後の船用のメバル竿もしくは磯竿の1.5号クラスがよい。「磯竿の長さはポピュラーな5mクラスでOKです」と上乗りの山田さんが説明してくれた。また基本は”餌釣り”だが、サビキで狙ってもよい。色はグリーン系がよいそうだ。これはメバルが海苔も捕食する為だと言う。
1カ所目は空振り。すぐさま移動してアタリ!
初めのポイントでは、魚探に反応はあるものの誰の竿も曲がらなかった。水深は21m。船長は二流しで見切って移動のアナウンスがあり、沖へ走った。暫くしてスローダウン。ポイントへの進入角度が決まって投入の合図。水深は51m。そして狙い撃ちする根(磯)の高さは7mあり、魚探には根のテッペンから数m上にかけて群れているメバルの反応。根のテッペンに仕掛けが来た時にタナをいかにアジャストさせているかがカギとなる為、船長は事細かく状況を伝えていた。すると私の横、右舷胴の間(中央)で竿を出していた黒岩美智男さんに待望のアタリ!そして暫くはストップ&デッドスローで巻きながらの”追い食い”狙い。メバルの魚信を感じ取りながら回収にかかった。船中初ヒットとなったメバルのトリプルだった。
餌はシラサエビ
今回の餌は、シラサエビだったが、私はてっきりシロウオだとばかり思っていたので少し驚いた。3月の頭にエンジンを載せ替えた「仙正丸」。エンジン載せ替え後、すぐに餌をシラサエビからシロウオにシフトしていたからだ。しかし、生憎のイカナゴ不漁。船長は「イカナゴに似せたシロウオ餌だったが、今年はイカナゴが絶不調。ならばシラサエビの方がいいだろう」という。
因みにシラサエビは尾羽を切ってチョン掛け。尾の切り口からハリを通し、餌が丸くならないようにしながらの通し刺しがいい。ただチョン掛けにせよ通し刺しにせよ、海中で餌が回転しないようエビの中心へハリを通すことが重要だ。黒岩さんは同じチョン掛けでも背中側から腹にかけてハリを刺していた。
ラッシュからの全員安打!
最初のアタリから程なく、今度は左舷トモ(船尾)の大藤勝義さんにヒット!
御歳81歳とおっしゃる大藤さんはサビキ仕掛け。そして次々とアタリが出始め、ダブル、トリプルと釣果が伸びていくなか、1時間30分程で“全員安打”!となった。型もよい!
また、アタリが出だしたら無暗に誘いなどは入れないこと。誘いはあくまでも餌が演出。釣り人は徐々に近づいてくる根、そして群れの高さにタナを合わせることに集中しよう。上の方まで反応がある場合は竿を上げながら、それ以上なら少し巻きながらゆっくりとタナを探る感じだ。サビキの方もさして変わらないようだが、大藤さんは時折軽く穂先を躍らせていたもののハリが幹糸に絡まないようにさせているようなレベルだった。
追い食いと探る範囲
スタートこそつまずいたが、1時間30分で全員が型を見た。しかし、私はまだ仕掛けを投入していない。アタリが遠のき小移動したタイミングで私も竿を出した。タナ取りに戸惑う私にもようやくアタリ。追い食いを狙ってみたものの、まずは“全員安打”と早めに回収にかかる。そして30cm近いメバルもコンスタントに釣れているなか、私が掛けた魚は「小さいな」と感じながらも上がってきたのは25cm弱のメバルだった。とはいえ普段の私にとって25cmクラスのメバルは“小さなガッツポーズ”ものだ。
そんななか、隣の黒岩美智男さんはコンスタントに釣っている。そして私に「底から4ヒロでよくアタるよ!」と有難いアドバイス。このポイントに高い磯はなく、底を少し切るくらいという指示だったが、反応が薄くなる群れの上にいるメバルの方が食い気があり、逆に群れの下の方にいる濃い反応ではあまり口を使わず追い食いも期待できない雰囲気。ならば魚影は薄いが食い気の立っている範囲を集中して探ればよいという訳だ。勿論、追い食いも可能であれば根掛かりや根に潜られる心配も少ない。この釣りに慣れない人は上バリに食ってくる時にこのような釣り方を試せば根掛かりを気にすることなく追い食いを狙えるだろう。
さらに黒岩美智男さん、私の仕掛けを見るや「仕掛けの痛みやハリスのヨレも限界だろう」と自作の仕掛けをくださった。申し訳ない気持ちもあったが「これも勉強」のうち、と有り難く使わせて頂いた。
イカナゴ不漁で思ったこと
その後、私は餌をかじられたりしたくらいでマグレの1匹から脱せられずにいたのだが、周りもアタリが遠のいていた。船長は30m、40mのポイントに、小さい磯が疎なポイント、高い磯がそびえ立つポイント、そして淡路島寄りのポイントなど、色々攻めていた。私はそんななか、仕掛けが痛み、交換せねばというタイミングが来たのだが、納竿まであと少しだったので再び竿をカメラに持ち替えた。
ここで大藤勝義さんが、「今年のイカナゴは少ないが、メバルのお腹にも入っていない」と言う。イカナゴが希少なのはメバルも全く同じ状況だった。そして私が釣ったメバルのお腹にもイカナゴは入っていなかった。とはいえメバルが居ない訳ではない。またこの日は31cmを頭に殆どが25cm以上。そしてポイントも潮周りを考慮出来るくらい無数にある。海水温も徐々に上がってくるこの季節、イカナゴが少なく体力回復が思うに任せなかったメバルにアプローチすれば、ダブル、トリプルは勿論、尺メバルの”ギュンッ!”という強い引きを味わえることもありそうだ。
今回利用した釣り船
出船データ
交通:阪神高速道路・若宮IC出て3つ目の信号の交差点で側道を左折(側道を左折するので左車線に寄っておく)。海岸に入るゲートから西(右折)へ600mのところに看板があり、駐車スペースがある。ゲートは5時30分(季節により異なる)に船長が開門、通行・駐車証を受け取り、若女将と中乗りが待つ駐車スペースへ