2017年06月01日公開
「キントキ」またの名を「カゲキヨ」、所によっては「カネヒラ」。そしてその実体は「チカメキントキ」という。歌舞伎役者を思わせる派手ないで立ちの魚である。一目見たら忘れない個性的な魚だ。今年もその釣りが開幕したと聞き、千葉・大原港の老舗船宿『勝見屋・初栄丸』を訪ねた。
アッ、船がキレイになっている!
『初栄丸』の船着き場は、『夷隅東部漁業協同組合』のすぐ目の前。漁協の脇に車を停めて、船宿の仮眠所の玄関先にある船形で釣り座を確認し、乗船名簿に記入する。港では船長が船に灯火を点してから乗船となるのだが、気付けば船がキレイになっている。以前からキャビンやトイレの清潔感が印象的な船だったのだが、内外装のペンキを塗り替えたそうだ。空が白み始める午前4時、キントキの魅力を知る8人の釣り人を乗せて「初栄丸」は出船した。
釣り場の水深は30~50mで楽チン
太東沖の釣り場まで走ること凡そ45分。仕掛けの準備とキントキの反応を探して午前5時にこの日の釣りはスタートした。船長の選曲で「川の流れのように」がBGMに流れる中、アタリはあるがハリ掛かりしない時間が暫し流れ、船中一番手の“本命”を上げたのは常連の中木泰之さん(千葉市)。それからあるタイミングでパタパタっと釣れては沈黙、を繰り返すこと幾たび。バリバリ食う状況でもないと、1匹、1匹確実に釣り上げたくもなるが、それをグッと堪えた常連の川附敏治さん(船橋市)が見事にトリプルヒット。食いの渋い時ほど追い食いを待つことが、時合いを逃さない最善策なのだと痛感した。
シンプルで奥の深いキントキ攻略
『初栄丸』でのキントキ釣りは、仕掛けの投入後、オモリが着底したら1m底を切って、竿先を上げたり下げたりの誘いを入れるのが基本だが、船長から「○mで止めてみて」などのアナウンスが入ったらリールを巻いてタナを合わせる。その際、船長の指示ダナに3本バリのどのハリを合わせるのか、仕掛けの寸法をざっくりとでも頭に入れておくと迷わずに済む。また、船で買える船宿仕掛け。スナップの付いた方がオモリ側で、道糸側は“親子サルカン(三つ叉)”になっている。「先糸(幹糸)がないじゃん!」と言う人も居るだろうが、ここは騙されたと思ってスナップスイベルや小さめのヨリトリリングで道糸に連結して使ってみて欲しい。仕掛けの一番下に魚が掛かった時や、手返し良くオモリを船縁でキャッチしたいときに成る程便利なのだ。
“ゲスト”も多彩な“高級五目”
「キントキ“五目”」と謳うだけに、“外道”と呼ぶには申し訳ない“ゲストフィッシュ”も楽しみのひとつ。釣り人には沖メバルの呼び名でお馴染み、煮ても焼いても丸揚げにしても美味しいトゴットメバル。カサゴの中でもその美味しさが際立つアヤメカサゴ。身は勿論、あらも内蔵もさまざまな料理で楽しめるクロソイなど美味さに定評のある魚種がズラリ。また、この日には上がらなかったが、今や高級根魚の代名詞のマハタや、狙うポイントによってはヒラマサやワラサなどの“青物”も交じるとの事なので、めぐり会う幸運を祈りたい。
キントキ釣り、そのコツは?
取材日の竿頭はキントキ6匹を釣った松原晃さん(千葉市)。硬めの竿とフラッシャーサビキに塩イワシ餌という独特の道具立てで一日を釣り切った。
「これまでは高根の周りで釣れていたが、今年は少し違う」と今シーズンの動向を見る勝見雅一船長。この釣りのコツを尋ねると「まめに底ダチを取ってタナをキープする事と、数を釣るためにはアタリがあってハリ掛かりしたら、追い食いを待つこと」だそうだ。また、船長の合図があったらすぐ仕掛けを投入する事と、時合いを逃さないよう手返し良く釣ることも心掛けたい。
“キントキ五目”、最盛期はこれから!
竿先をガンガン叩くキントキの釣り味も楽しいが、釣った後の食味も特筆だ。刺し身で食べるなら帰ったらすぐサクにして一晩以上冷蔵庫で寝かせると旨みがぐっと増す。小さな個体は、ウロコを付けたままグリルで焼くと身が蒸し焼きになって美味。船長のお薦めはエノキ、ニンジンの千切り、旬の新タマネギと一緒にアルミホイルで包む「ホイル焼き」と、素材の旨みを引き出す「塩麹漬け」。大物ラッシュに沸いたヒラメが終わって、イサキより少しリードしてスタートした『勝見屋・初栄丸』の“キントキ五目”。その最盛期はまだまだこれからだ。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:9,500円(餌・氷付き)
集合3:30 出船4:00(変動あり/予約時に確認を)
貸道具あり(無料)/予約者は仮眠施設無料/女性・子供割引きあり
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他