2017年06月01日公開
早くも各地で夏日が記録され出した。ビヤガーデンが人気を集める季節となったが、釣り人の心をムズムズさせるのは、浅場で釣れて引きも強く、シンプルだが奥の深い釣趣が魅力のマゴチだろう。最高気温25℃、快晴ベタナギの“コチ日和”に、門構えも涼しげな東京・深川『深川 吉野屋』から船に乗った。
アクセス抜群、近くにコンビニも
今年は3月1日からマゴチの乗合船をスタートした『深川 吉野屋』。乗船場の前には午前6時前から“開店”待ちの列が出来ていた。首都高速道路の木場・枝川出口からおよそ5分、東京メトロ・木場駅から徒歩10分というアクセスの良さもさることながら、近くにコンビニもあるという釣り人にとっては実に嬉しい立地である。タクシーで来る釣り人もいて、そういう足もあるのかと気付かされる。ルアーマン3人と10人の餌釣り師を乗せて、「第七吉野丸」は定刻よりちょっと早めに離岸した。
晴天、ベタナギ、微風の“コチ日和”
『深川 吉野屋』から出る楽しみは、釣り場へ着くまでの航路にもある。この日は築地市場で餌のサイマキ(小型クルマエビ)を仕入れたり、羽田空港、ベイブリッジ、風の塔といった東京湾の観光名所を海から楽しんだ。
釣り場の大貫沖に到着したのは8時過ぎ。活きエビが5匹ずつ配られ、水深8mのポイントからスタートした。最初に竿が曲がったのは、ミヨシ(船首)でルアーを投げていた白井佳一さん(横浜市)。その後間もなく、今期マゴチ釣りは5回目という村上武男さん(豊島区)の餌にも“本命”がヒット。続いてマゴチ釣りは初めてという大橋勇佑さん(荒川区)も、激しいヘッドシェイクをいなし良型を釣り上げた。実はこれ、竿入れからわずか12分間の出来事。幸先の良い滑り出しに、船中に心地よい緊張感が走った。
餌付け、タナ取り、合わせのタイミング
マゴチ釣りのポイントは「餌付け」、「タナ取り」、「合わせのタイミング」の3点に集約される。「“サイマキ”のツノを折り、口からハリ先を入れてツノの根元に少し出す-という餌付けの基本を守っているのに餌がすぐ死んでしまう。だからマゴチは苦手」と言う人がいる。嘗て私もそうだったのだが、ハリはひねりの入った物を使っていないだろうか? 実はコレ、ひねり無しのハリでやると脳天の黒い部分にハリが刺さらず、実に具合良く収まる。“サイマキ”にコンプレックスをお持ちの皆さん「悪いのは自分じゃなかったんだ」と自信を取り戻して頂きたい。“タナ取り”は「オモリが底に着いたら1m上げる」のが基本だが、仕掛けの長さや潮の流れの速さによって、ベストなオモリの位置は刻一刻と変化する。これを効率的に探して、餌や魚からのシグナルを常に竿先と手元に感じ続ける工夫と努力が釣果に繋がるようだ。“合わせ”についてはマゴチも“十匹十色”なので、トライ&エラーで勘所を身につけるしかないように見受けられる。どちらにせよ、自信を持ってしっかり合わせることが大切で、ハリ掛かりしなければ苦笑いで隣席の釣り人と共感し合える筈だ。
この釣りも“ゲスト”が多かった
今回の取材で確信したのは、マゴチの好ポイントはイカ族の巣窟でもあるーということ。水深が10m以浅なので、ハリ掛かりしていなくてもエビを抱いたまま海面まで上がってくるのを何度も目撃した。マゴチ釣りのゲストとしてはお馴染みのスミイカやシリヤケイカといったコウイカ類は勿論、マルイカ(しかも“弁慶サイズ”に迫る良型)も見られ、そのほとんどは海面でバレてしまうのだが、船長がタモ入れすると高確率でキャッチ出来る。多い人は4杯のスミイカをクーラーボックスに収めていた。一晩寝かせるか一旦冷凍してから刺し身や天ぷらにすると美味。また取材日はヒラメとの相性も良く、餌、ルアー共に反応が見られた。
1匹目を釣り上げるコツは?
この日、3回目の乗船にして初めてマゴチを釣り上げた岩田正幸さん(板橋区)。初めての乗船でオデコを喰らうのは“マゴチあるある”のひとつだが「これまでは、アタリがあってから待ち過ぎていた。今回はタイミング良く合わせられた」とその後パターンを掴み、見事3匹を釣り上げた。
東京湾のマゴチ釣り、そのコツを佐久間誠船長に聞いた。「少しでもタナが狂うと魚にアピールしないので、マメに底ダチを取ってタナ取りをすることが大事」とタナの重要性を強調していた。決して簡単ではないからこそ、熱くなれるこの釣り。悔しい思いをするかも知れないが、そこから学んで掴む1匹の達成感が、この釣りの醍醐味と言えるだろう。この頃スランプだという方は「上手な人はアタリを出せる人」という船長の言葉をメモしておいて頂きたい。
間もなくハイシーズンに突入!この日、13人で船中37匹の“本命”を釣り上げた「第七吉野丸」。海苔棚の撤去で釣り場が拡大し、その豊かなポテンシャルを見せてくれた大貫沖のマゴチ釣り。いよいよシーズン本番!食味も旬を迎える。抜きにくい小骨があって捌くのが容易でない魚だが、頭から胸部までは煮付けに。骨の多い腹部は塩焼きやムニエルに。尾部を刺し身や洗い、昆布〆、揚げ物、カルパッチョなどにすると食べやすいだろう。釣って楽しく、食べて美味しい夏の高級魚・マゴチ。型も味覚もシーズン序盤の今がとにかくお薦めだ。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:男性・9,500円、女性&高校生・7,500円、中学生以下・5,000円
(餌5匹付き/追加1匹100円)
出船:7時/帰港:16時頃
※貸し道具あり(1セット500円)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他