2017年08月01日公開
「今年は、イカが調子良い」。行く先々でそんな話を耳にしてきたが、実はイカ釣りは得意ではない。誰が言ったかは知らないが、「イカは釣れてる時に釣れてる船宿で釣らないと上達しない」という言葉を思い出し、千葉県・南房総は鴨川の江見港『長七丸』に出掛けた。
まずは船宿の白板で釣り座の確保から
江見港の南側、無料駐車場に車を停め、国道128号線を鴨川方面へ30m程歩くと、山側に『長七丸』の看板がある。石段を登ると船宿が有り、玄関の前に立てられたホワイトボードに名前を書いて釣り座を確保する。集合時間になると船長が軽トラックで駐車場まで迎えに来てくれるので、クーラーやタックルを積み込み、釣り人は竿だけを持って船まで歩く。何かと大きな荷物の多いイカ釣りにこの気遣いはありがたい。各々釣り座の準備をして定刻の午前4時。女将さんの「いってらっしゃい!」の声に送られて「第三 長七丸」は出船した。
竿入れからクライマックスだ!
ベタナギの海を走ること約30分。「やってみて下さい。140mから下。下まで160m」のアナウンスで、この日の釣りはスタートした。水深160mの釣り場で、140mから底までの20mにスルメイカの魚探反応があるこの流し。船中一番手は左舷ミヨシ(船首)の大高明人さん(横浜市)。二枚潮との前情報から、18cmのイカヅノに比べアピール力は劣るものの潮流の影響を受けにくい14cmのツノを使用して手堅く3点掛け。その後もブランコ仕掛け、直結仕掛け共にかなり快調にイカが乗るのだが、イカが掛かっている時ほど巻上げ時にオマツリすると言う歯痒い場面が相次いだ。
驚異の14点掛け!多点掛けで高切れも!?
イカの機嫌はすこぶる良いが、「サバだ」、「サメだ」、「オマツリだ」と釣り人が苦戦する中、潮先で好調に釣っていた大高さんが肩を落としている。追いノリに成功して意気揚々と巻上げ途中、イカの重量で道糸が切れたと言う。「道糸にキズがないかチェックは忘れずに」。経験者の声は重い。
一方、右舷ミヨシで二枚潮に因るオマツリに苦闘していた本田秀一さん(足立区)は、大ミヨシに上がっての投入に挑戦。竿を引き絞る重量感と電動リールの咆哮の末に上がったのは、なんと驚異の14点掛け!足場が高いため取り込みの際に惜しくも3杯を落としてしまったが、15本ヅノに14杯が付いたのだから、このエリアの魚影の濃さは想像頂けるだろう。
ブランコと直結、それぞれに利点が
この日、直結仕掛けとブランコ仕掛けの比率は5:5。手返しが良く、サバに邪魔されない直結仕掛けは、オマツリすると悉くイカが振り落とされてしまうが、ブランコ仕掛けはオマツリ解きに数分かかっても、イカが付いたまま仕掛けを回収できたりもする。ところがその反面、手前マツリも起こりやすく、余程慣れていないと仕掛けの上げ下げに投入器を使うことになる。こうした一長一短を持つ2種類の仕掛けについて、繁田浩行船長は「やっぱし無難と言えば、ブランコ仕掛けが無難だよね。ただ、良いナギならさ、直結仕掛けに慣れる練習には丁度良いよね」と、両方の釣りの必要性を聞かせてくれた。やはり甲乙付けがたい「直結×ブランコ」の仕掛け選択。得手不得手はあっても、両方の準備をしておけば憂いなし、というところだろうか。
船長に訊く「スルメイカのコツ」
スルメイカをより快適に釣るコツを船長に訊いた。「仕掛けを降ろして行きながら、触ってるのが分かるかどうかだね。結構タナが広いから、指示ダナの上から少しずつ落として行って、触ればそこでシャクって誘ってみると良い」と。また、「オマツリが多い時や、周りが釣れてるのに自分だけ釣れないような時は、仕掛けをいったん全部上げて、オモリの投入からやり直した方が良い」との事。これは二枚潮のような難しい時ほど有効なので、船上で手詰まりになったら是非思い出して頂きたい。
イカ修行はイカに精通した船宿で
この日の竿頭は、何度も多点掛けを見せてくれた常連の本田さん。「やっとイカが大きくなって、釣果もだんだん良くなって来た。アタリは多かったから、オマツリとサメさえなければ…」。前日、前々日と束釣り(100杯超え)が続いていたため悔しそうだったが、厳しい二枚潮に悩まされながら66杯と大健闘。船長と言い、常連さんと言い、イカに精通した人々が集う『長七丸』。もう1ランク上の釣りを習得したい釣り人にお薦めしたい、南房の“イカ道場”だ。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:1万円(氷付き)
集合:3:30 出船:4:00(季節によって変動あり)
貸し道具あり/宿泊施設無料
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他