2017年09月15日公開
静岡県・南伊豆手石港『敬昇丸』は、モロコ(標準和名・クエ=モロコは関東地区・伊豆諸島での呼び名)釣りで知られた船宿。この時期は乗っ込み(産卵期)シーズンで比較的浅い場所で釣れる。「今シーズンは60%位の確率で顔を見ている」と船長。大物釣りではかなりの高確率だ。巨大モロコ釣りに初挑戦して来た。
さあ、初体験のモロコ釣り!出船だ!
午前5時集合、5時30分出船。少し余裕を持って4時半頃に到着。既にこの日の乗船者全員が集合していた。皆さん、気合いが入っている!モロコ釣り初体験の私としては、少々気後れしながらの乗船となった。
右舷側は、ミヨシ(船首)に赤城和博さん、胴の間(中央)に平田宗男さん、大ドモ(船尾)に鈴木大輔さん。横浜市から来たと言うこの3人は釣り仲間。左舷側は、ミヨシに静岡県焼津市の成瀬慎吾さん。焼津市内の釣り具店にお勤めの大物ハンターだ。私は、貸し竿で左舷の大ドモに入った。
なんと1投目!投入後3分で巨大モロコが食いついた!
5時20分頃、定刻より少し早めに出船。船着き場がある青野川を下って海に出た。東の空に朝日が昇り、東寄りの風が少々吹いている。肥田能研(ひだ・たかあき)船長は、風裏となる石廊崎西側の沖合いに船を進めた。普通なら朝一番には餌となるサバを釣るのだが、このところ周辺海域にはサバの姿が見られない。こんな時は、餌は原則釣り人持参となる。通常はサバを1匹掛けにすることが多いが、ソウダガツオもいい餌だという。横浜市からやって来た3人組は、“特餌”としてスルメイカを持参、これがすぐに効果を現すことになる。
航程約30分で釣り場に到着、「ちょっと待ってね」と船長。魚探で海底地形を確認、潮流の向きや速さを確かめてから、「はい、やってみましょう!」、6時8分、投入合図と共に「水深は65、66m。流していくと根がキツい所があるので、タナどりを小まめにやって下さいね」とアドバイスが飛んだ。
6時11分、平田さんの竿が大きく曲がった!なんと1投目、投入3分後だ。
海面を割って巨大モロコ登場!
平田さんは電動リールのパワー全開で巻き上げる。まるで“ウインチ”だ。竿の曲がりは物凄い。しかし、今の電動リールは巨大魚の暴れをものともせず、65mを順調に巻き上げる。なんだかあっけない。凄いな、電動リール!リールの巻き上げ音が止まった。残りの道糸は手で巻き取る。トローリング用のスナップの手前で止め、リーダーを手繰り始めた。みんな次に起こる光景を予想して固唾を呑んだ。一瞬、船上は静寂に包まれる。次の瞬間、まるで潜水艦でも浮上して来たかのように、海面を割って巨大な魚体がバッシャーンッと浮き上がった。「おーっ、凄い!」、「デカい!デカい!!デカい!!」。色々な歓声が上がる。船長がギャフを手に駆けつけた。
2人掛かりで船上に引き上げる
「デカいぞ、これ!」、「40kgくらいあるんじゃないの!?」。船長が大きく開いた口の中にギャフを差し入れ、下アゴをしっかり引っ掛けた。船長一人ではなかなか持ち上がらない。平田さんも加わって2人でギャフを握りしめた。「足に気をつけてよ」と船長。取り込み時に尖ったヒレや鋭い歯などが当たると大怪我に繋がるそうだ。2人掛かりで持ち上げ、モロコはドスンッとその巨体をデッキに横たえた。「よし!一発目!」。船長が拳を振り上げてガッツポーズ。「ありがとうございます」。平田さんと船長が固い握手を交わした。
初めてのモロコとの遭遇!
平田さんは、今回がモロコ釣り3回目で釣り上げたのは初めてだと言う。釣り上げた巨大魚をまじまじと眺め、平田さんは暫し固まる。「今頃震えが来たわ」。
興奮冷めやらぬ船内、平田さんの声は震えていた。
「船長、何kgくらいありますかね?」と平田さん。「長さ的には、25、26kgだと思います。30kg級はもう少し長さがありますから。ただ、今日の魚は胴回りが太いので計ってみるまでなんとも言えません」。計量は帰港後だ。果たして30kgあるのか!?
前日にも29kg!
「実は、昨日(取材日前日)も29kgが釣れたんですよ。やはり朝一でした。今日も朝一番でしたね。連チャンで釣れてよかった。このところ調子がいいです。私の得意な潮の流れが来ています。兎に角、根が荒いのでタナ取りをまめに繰り返して下さい。タナ取りは誘いにもなります。オモリを底に落としてタナまで巻き上げると、餌が下から上へと浮き上がって漂う。これをモロコが見て食い付いてきます」と船長。
8時頃、平田さんに再びアタリ。しかし、モロコのような引き込みはない。食い込みがまだ浅いのか?それとも魚が違うのか?暫しの間、モロコなら直に来るであろう猛烈な突っ込みを想定して竿先を見守ったが、釣れて来たのは、型のいいカンコ(ウッカリカサゴ)だった。2kg前後ありそうだ
モロコの超パワー!もう一発来たぞ!
魚探を見ながら船長がマイクでみんなに呼びかける。「根に上がって来ていますよ。タナをとり直して下さい。いい所に入って来ています」。潮の流れもまだいい状態が続いている。「あーっ!巻けない!」。左舷大ドモから叫び声が聞こえた。貸し竿が大きく曲がり、竿先が海面に突っ込んだ。竿を少しでも起こしてリールを巻こうとするが魚の力が強すぎて巻けない。「リールを巻け!」と、船長が何度も叫ぶ。が、どうしても巻けない。モロコの超パワー、恐るべし。一瞬竿がさらに大きく曲がりゆっくりと伸びた。「あーっ、やられた、ハリが外れちゃったね」。船長が肩を落としながら呟いた。
「何が何でも5m巻け!」
「貸し竿は手巻きリールですから、竿が突っ込んだら力任せに最初の5mを巻いて下さい。このガチンコ勝負が手巻きの釣りの醍醐味でもあります。いくら魚の引きが強くても、どんなに重くても糸を出したら一気に根に持って行かれてしまいます。だからリールは道糸が出ないようにロックできるものが必要です。竿先が突っ込んだら渾身の力で何が何でも5mリールを巻き切って下さい。それさえ出来れば、電動でも手巻きでも何とか浮いてきます。んー、残念でしたね」。2匹目のモロコは、文字通り「“力”及ばず」釣り上げることは出来なかった。
帰港後計量で30kg!!
13時に沖あがり。下船後、魚を検量場に運ぶ。デジタル秤に乗せると、表示は、30.00kg!「おー!30kgだ!」。居合わせた観光客からも歓声が上がった。
船長は、「水温は27度、潮の流れもいい感じです。暫く好調が持続しそうですよ」と、自信を見せていた。
今回利用した釣り船
出船データ
料金=1万5,000円(餌は原則持参、氷無料)
貸し道具:手巻きセット5,000円(仕掛け1組付)
※4~9月は、5時集合、5時30分出船、13時沖あがり
この記事を書いたライター
0mの海面から水深1,000mの超深海までのレンジで、数cmのハゼやキスから、イカ・タコの軟体動物、数十kgのキハダやベニアコウまでの様々な魚を狙うフィッシング・ライター。