2017年11月15日公開
「深場の魚は美味しい」とは言え、道具が高価なので容易に手を出せないのが、この釣りの難点。ところが、道具一式がレンタルできる船宿で連日好調な釣果が出ていると聞き付け、逗子マリーナのお隣、小坪港『太郎丸』に出掛けた。
来てみて納得のお手軽感
11月1日からスタートした『太郎丸』の“アコウダイ五目船”の集合時間は午前6時。アクセスや駐車場の利用方法は船宿HPに詳しく案内されているので初めてでも迷わない。5時半に受け付けがオープンし、乗船名簿への記入と乗船料の支払い、仕掛けを購入して乗船となる。特筆なのは250号のオモリもレンタルでき、初心者には船長が釣り座や貸し道具のセッティングまでしてくれるなど至れり尽くせり。深場用電動リールに馴染みのない人でも、船長から一連の取り扱い方の説明があるので安心だ。初めてで心配な人は説明が必要な旨を予約時と乗船時に気兼ねなく申告しておこう。
投入や巻き上げも本格的
穏やかな海を走ること1時間。「第一太郎丸」は東京湾口“沖の瀬”に到着。水深370mの釣り場からスタートした。仕掛けの投入は船長の「ハイどうぞ!」の合図でミヨシ(船首)から1人ずつ順番にオモリを投げ入れる。オモリが着底したら5m底を切ってアタリを待つこの釣り。投入時の糸フケや海底の地形変化、カケ上がりや落ち込みの水深移行もあるのでマメに底立ちを取ってタナを取り直すことが肝要だ。アタリがあっても巻き上げずに船長からの合図を待って、右舷から巻き上げを開始することによって取り込み時のオマツリを防ぐ。こうした投入→取り込みの手順や仕掛けの捌きは、水深500m超えの本格的な深場釣りと同じなので、この釣りの入門者にとっては練習の場としても最適と言えるだろう。
水深370mからの魚信は…!?
1流し目、見事キンメダイを取り込んだのは胴の間(中央)の村田雅也さん(横浜市)。2流し目にはミヨシ(船首)寄りの上原文夫さん(横浜市)に船中2匹目。ポツリポツリの釣果に苦笑いの一同だったが、釣り開始から2時間後、「クロムツのポイントです」と船長がアナウンスされた流しから状況は一変する。竿先を叩くアタリがトモ(船尾)から顕れ、期待の取り込みでは深海の丸々とした大サバに交じって、メダイや良型のクロムツがあちらこちらの釣り座で上がり、船中は俄に活気づいた。
そして、“時合”到来!
クロムツの“好釣”に沸いた1時間後、待ちに待った“その時”は来た。水深300mの釣り場で竿先に出ては暫くすると大人しくなるアタリが幾度か続き、巻き上げの合図が出て一同の竿に乗る重みに期待は高まる。この流しの白石隆司さん(練馬区)のキンメダイ3点掛け(巻頭写真)に始まって、その後は船中の誰かしらの仕掛けにキンメダイか見事な大サバが着く流しが続いた。常連の信田一明さん(横浜市)が魅せた5点掛け(巻頭写真)や、極めつけは貸し竿で初挑戦の倉川貴行さん(江戸川区)の6本バリに6尾が掛かるパーフェクトと、右肩上がりにアタリと釣果は増え続け、期待と白熱の時間が暫し続いた。
常連さんから訊いた“釣りの引き出し”
この釣りでは投入に遅れた釣り人は、その流しが“お休み”になってしまう。数を釣るには全ての流しで投入する段取りの良さが問われるのだが、常連の皆さんがやっているのは、仕掛けを2セット用意しておいて、ひと流し毎に交互に付け替えるというテクニック。仕掛けは魚が着いていようがいまいが、傷んだり手前マツリをしたりするので、まずは仕掛けを交換して、寸暇を見つけて取り込んだ仕掛けから魚を外したりオマツリを解いて次々回の投入に備えて置けば、投入の合図に間に合わないということは充分予防できる。また手前マツリの際は、全てのハリスを親子サルカンの所で切って、道糸を真っ直ぐに直してからハリスを結び直すと、意外なほど早く問題解決に繋がるのでメモして置きたい。初心者は6本バリから始めて、スキルアップにつれてハリ数を増やすことを船長も薦めている。
今シーズンの“アコウダイ五目”、今後の展望は?
竿頭は常連の信田さん。キンメダイ14尾と豊満な大サバでクーラーは賑やかだ。「今日は小さい。いつもはもっと大きいよ、45cm級とか」と良い日を知る常連さんたちは悔しそうだったが、小生には充分満喫の取材日。
今後の展望を高橋良至船長に訊いた。「まだ下の水が冷たいからこれからですね。産卵とか水に慣れてくると、アコウダイ(メヌケ)が浅いところに入って来ます」とますます楽しみだ。座席には温水パイプがあり、エアコン完備のキャビンには電気ポットや電子レンジがあるのも、これからの寒い時期にはありがたい。貸し竿の釣り人には釣り座のセッティングはもとより、魚が掛かった後も巻き上げ速度やドラグ調整にまで船長が跳んで来て見てくれる『太郎丸』の“アコウダイ五目”。乗船者18人限定の予約乗り合いなので、まずはお電話を。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:1万1,500円(餌、氷付き)
集合:6:00(揃い次第出船)
貸道具:2,000円(深場用竿・リール・オモリ一式)
仕掛け:船常備 1,000円
定休日:月曜日
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他