2017年12月15日公開
「記憶に残る魚は?」と聞かれたら、あなたはいくつの思い出があるだろうか。釣り人は経験を重ねると「魚を持ち帰りたい」、「いっぱい釣りたい」という欲求が薄れ、「イメージした釣り」や「手が震えるような魚との出逢い」を求めるようになる。そんな熱い釣り師が集う船宿があると聞き、活きイワシの泳がせ釣り解禁(10月1日)から注目していた千葉県・大原港『勇盛丸』を訪ねた。
気温-2℃にテンションが上がる!
出掛けたのは12月9日(土)。寒気が流れ込み、この冬最も冷え込んだ大原港の気温は車の温度計で-2℃。北の風11mで速度規制の掛かっていた東京湾アクアラインの橋梁部、アクアブリッジの路面が白く見えたのは凍結防止剤が撒かれたのだろうか。夜明け前の走行が多い釣り人には、雪が無くても冬タイヤへの履き替えをお薦めしたい。寒さのせいか、ヒラメの解禁フィーバーが落ち着いたのか、大原港の駐車場は週末にも関わらず意外と空いていて快適。そんな中、集合時間の随分前から、煌々と明かりを灯した「勇盛丸」のデッキには、既に準備を終えた釣り人たちが談笑していた。“釣果0”を覚悟のマハタに挑むだけあって、意識の高い釣り師が出揃ったようだ。期待が高まる。
1投目からアタリが!
風のためやや波っ気のある海を走ること1時間弱。大原沖、水深60mのポイントに到着した。活きイワシが配られ、期待の第1投。オモリが着底してタナ取りを完了するや否や、左舷胴の間(中央)で立て続けにダブルヒット!残念ながらファーストヒットの強い引き込みを見せた魚は逃してしまったが、船中第1号の獲物となるヒラメを取り込んだのは浅野隆光さん(大田区)。道糸PE1.5号、オモリ40号のライトタックル(LT)を持ち込んだ浅野さん。『勇盛丸』ではLTとノーマルタックルのどちらでも楽しめるが、オマツリ防止のためLTの釣り座は船長が指定している。LTを希望する場合は、その旨を予め申告したい。
やがて海上に陽が昇る頃、左舷トモ(船尾)の増田靖さん(横浜市)に強烈なアタリ。ヒラメ竿を根元から曲げるファイトの末に上がったのは“本命”のマハタ。波のせいかバラシも見られ決して容易ではないが、幸先の良いスタートに船中のボルテージは一気に高まった。
船長の指示ダナをマークせよ!
『勇盛丸』の永谷亘船長は、「底を取ったら4mゆっくり上げて…」等々、頻繁に細かいタナや攻め方をアナウンスしてくれる。実はコレ、魚群探知機に出ている「小魚の群れ」の反応や、マメに底ダチを取っていないと見逃してしまう「根の上がり際」、「頂点」、「下がり際」といったアタリの出る狙い目を注意喚起しているので、聞き逃さずに逐一トレースすることが望ましい。「マハタは小魚の群れに着いているから、底をやり過ぎないように」と船長。“根魚”と呼ばれるため、ついつい根掛かり覚悟の低いタナで頑張ってしまいがちだが「マハタは底ばかりではない」という事を覚えておきたい。仕掛けやタックルについては「お好みで」とのことで、この日はヒラメ釣りの道具や仕掛けを一回り強くしたようなタックルを使う人が多かったが、ハリに関しては「軸の太いモノ」が船長のお薦めだ。
岩船沖へ移動、そして…!
いくつものポイントを回っての拾い釣りとなったこの日。アタリはあるものの、巧くハリ掛かりしなかったり、巻き上げ途中にバラしたりが続いていた右舷ミヨシ(船首)の小泉順一さん(八千代市)。遂にヒットさせたマハタは1.5kg級の良型。「掛けた後、根に入られないよう高めのタナを意識して釣りました。早合わせは良くないですね」と経験者ならではの談。確かにタナを高めに設定すると、文字で表すなら「ドーン!!」と竿先を引き込むド派手なアタリが出るので、手持ちで誘っていると反射的にビックリ合わせをしてしまうのが人の常だ。これをぐっと堪えて、ゆったり確実に合わせてハリ掛かりさせることを心掛けたい。
ここで船長は、船を岩船沖へ大きく移動させた。「ここは大物が出た場所です」というアナウンスとともに始まった流しの根に、その魚は居た。「後悔したくないので」と12号の太ハリスに鰯ヒラメバリ18号、孫バリにはトレブルフックの4番という大物仕掛けで挑んでいた北中伸幸さん(横浜市)。100号オモリの横流し用と思われる7:3のヒラメ竿が、胴まで豪快に引き込まれた。魚を遊ばせない強気のファイトの果てに、ゆらりと浮かび上がったのはこの日最大となる2kgに迫る良型マハタ。狙って取った大物に、ガッツポーズと快心の笑みがこぼれた。
白熱のイワシ泳がせ釣りのマハタ、最盛期はこれから!
胸のすくような大物の後、竿を出した小生が幸運な1匹を追加して、マハタは船中4匹で沖上がりとなった。船長も「今日は(潮の)流れ不足」とボヤいた難しい釣りではあったが、船を降りる釣り人たちに悲壮感がないのは、各々がベストを尽くした証しだろうか。「やっと海水温が下がってきたから、マハタはまだまだこれから」と楽しみな見通しを語ってくれた船長。ここだけの話、正直、強面だし仕事中は寡黙で近づきがたく見えるのだが、実はユーモアたっぷりで、魚の生態についても機知に富んだ気さくな船長だ。船宿記録は8.2kg、昨年は6kgの魚が上がったという『勇盛丸』のマハタ乗合船。竿を出せば大物の気配はひしひしと伝わってくるので、記憶に残る魚との出逢いを胸に、この冬、チャレンジしてみてはいかがだろう。
今回利用した釣り船
出船データ
料金:1万2,000円(活きイワシ・氷・軽食付き)
出船:午前5時集合 準備が整い次第出船
※釣り座は先着順/タックルにより船長から指示あり
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他