2018年01月15日公開
東京湾の冬の風物詩「湾奥のマコガレイ」が開幕した。船のエンジンを止め、アンカーを降ろした「かかり釣り」。湖のように静かな海面で、普段の忙しさやストレスから解放されて静寂を楽しむ。“静の釣り”の代表のようなこの釣りを待ちわびている釣り人も多い。毎シーズン、乗合船を出している千葉県・行徳、江戸川放水路の『伊藤遊船』に出掛けた。
沖釣りなのに川に向かう
『伊藤遊船』は、東京湾の最奥部に流入する江戸川放水路の河川敷にある。地下鉄東西線の鉄橋に程近く、定期的に電車が通過する音がする。交通の便も抜群で、東西線・妙典駅から徒歩数分。出船は午前7時なので、沖釣りと言うより川に釣りに行く感覚で気軽に行けるのがいい。この日は合計8人が集まった。
良い日には“ツ抜け”もある好スタート
釣行日は開幕10日後。まだ様子見の段階で、釣果にムラがあるものの既にトップが“ツ抜け(10匹越え)”を達成した日が2日もあり、好スタートを切っていた。この時期は、マコガレイの産卵期でもあり、条件さえよければ爆釣もあり得る。特にオスは精力的に餌を漁り食い、白子をたっぷり持つので味の面でも非常に人気が高い。
最初は白子の美味しいオスのポイントへ
午前7時前には、全員が集まり出発。丁度干潮の時間に出船なので、“本船”は川の中央付近に停泊。まずは小船で“本船”に移動。そこから吉田正己船長操船でこの日のポイントへ向かった。船長からは「ポイントまでは15分程かかります。最初はオスのポイントから行きますねー」とアナウンス。「ん?ちょっと待てよ…オスのポイント?」。すかさず船長に聞く。「オスのポイントってオスとメスで場所が違うんですか?」。その場所では白子を持ったオスばかり釣れるらしいのでどうもオスとメスでいる場所が違うようだ。なんとも興味深い話だ。
“静の釣り”の代表、楽しみ方は人それぞれ
冒頭で紹介したようにこの釣りは、船のエンジンを止めてアンカーを降ろして釣りをする。いわゆる「かかり釣り」。静かな海で一人3、4本の竿を並べて、投入の合図で仕掛けを投入。あとはマコガレイが掛かるのをただ待つのみ。基本的には誘い等の動作はしない。まさに“静の釣り”の代表と言えるだろう。仕掛けを投入した後は思い思いに待ちを楽しむのもこの釣りの特徴。静かな海でうたた寝するもよし。釣り仲間との談笑もよし。また読書で個の世界を堪能するもよし。船長の「はい上げてー!」の合図か、魚からのゴンゴン!という魚信まではとにかく静かな時を楽しむ。
“二刀流”は当たり前、4本の竿を構える人も
最初のオスのポイントは水深10m。“二刀流”は当たり前で、一人3本、4本と竿を並べて仕掛けを投入する姿に宮本武蔵を連想していると、そう言えば宮本武蔵を有名にした巌流島の戦いでの有名な「佐々木小次郎を待たせて遅れてくるエピソード」はまさにこのカレイ釣りそのものだと変な所に思いを馳せる。誰が最初の宮本武蔵になれるのか?静かな時を過ごすこと1時間30分。その時は訪れた。右舷トモ(船尾)で竿を構える小西誠さんが釣り上げたのは26cmの“本命”マコガレイだった。腹の部分には白濁の液が零れる。白子を持った狙い通りのオスだ。
「午前船」、「午後船」、「通し船」!
マコガレイは静かな待ちの釣りだが、時合が訪れるとその静けさが一変。バタバタッと船中でアタリが連発することも多々ある。この日も最初の1匹からの連発を期待したが、残念ながらこの日は潮周りが悪くてこの1枚で後が続かず、再び静の時間となった。『伊藤遊船』では、午前7時出船の「午前船」、12時半出船の「午後船」を出している。午前船の上がりは11時半で、刻々とその時間が近付く。しかし、釣り人からは一切の焦りが見られない。静の釣りの代表らしく釣り人も心得たるものなのかと思いきや、それ以外にも理由があった。この日の乗船者のほとんどが午前、午後の通しでの釣りだったのだ。朝の内は潮流れが悪く、午後の好転を期待して午前船は終了となった。
自分の竿にこの日最大34cm!
一旦船宿に戻り、昼食を食べてからいざ再戦。ポイントは午前と同じ。再び静の時間が訪れる。5分、10分と時が過ぎ、期待の夕マヅメが近付いた。しかし、潮の流れに好転の気配なし。ポカポカ陽気だった日中より、少し風の冷たさを感じるようになって来た午後3時丁度。再び小西さんにガツガツッというアタリ。午前よりもサイズアップした32cmのマコガレイだ。続いて、右舷に座った私の竿先がコツコツと叩かれた。正確には船首でカメラを構えていたためにコツコツと叩いているのを見て、船長にリールを巻いて貰った。この状況下でたまたま私の竿にアタリがあり、しかも本人はそこにいないという空気の読めなさ。上げて頂いたのがこの日最大の34cmというとどめまで刺され。失礼致しました。
さすがは夕マヅメ。その後もアタリが続いた。しかし、残念ながらこの日は終始マコガレイは渋く、竿を叩くのは30~40cm級のシーバス(フッコ)。まだまだ開幕直後で釣果が安定しないのは覚悟の上だったが、開幕後一番釣果が悪い日に当たってしまったようだ。今後、海水温が下がるにつれて、釣果も上向き安定していくだろう。
今回利用した釣り船
出船データ
料金:午前船及び午後船は5,940円(税込)(餌・氷付き)、通し船は9,180円(税込)(餌・氷付き)
出船:午前船7時、午後船12時30分