2018年04月15日公開
春に楽しみな釣り物と言えば、マダイ、メバルは勿論、アオリイカやシーバスも見逃せない。これに加え、近年注目度急上昇なのが千葉県・外房のヒラマサだ。連日大型が上っているとの噂を聞き付け、勝浦川津港『宏昌丸』を訪ねた。
ルアーの釣りを難しがるのはやめよう
『宏昌丸』はジギングとキャスティングのルアー船。これを聴いて腰の退けた貴方、ちょっと話を聴いて欲しい。横文字が多いのはルアー釣りの常なのでご容赦頂くとして、ジギングというのは「メタルジグ」と呼ばれる金属製のルアーを海底まで沈めて、シャクリながら魚を誘って口を使わせる釣り方。つまり、動作や誘いのイメージはウィリーを用いたコマセ釣りや、プラヅノを使ったイカ釣りと同じ。しかも比較的大きなジグを使うヒラマサ釣りでも、その重さは100~200g。オモリの号数に換算すると約25号から約55号とLT(ライトタックル)アジ並みの軽さだ。スルメイカの直結仕掛けをシャクるより何倍も楽に感じられる筈だ。残る問題は釣り具。船宿常備のレンタルタックル(2,000円)は必要充分のスペック。そして最大の難関となるリーダー(先糸)と道糸の結束は上乗りさんに頼めばやってくれる。ここまで来るともうハードルはない。100g、125g、150g、175g、200gのジグ5本を購入して予約をするだけだ。勝浦川津港は圏央道・市原鶴舞ICから約45分。黄色い看板のある船宿前の坂道を下って港に出た左手、『新勝浦市漁協川津支所魚市場』の前が乗船場所だ。
ジグを投げ、着底後にシャクリ開始
出船から40分程で最初の釣り場に到着。船長の「支度が出来た人からやってみましょう」のアナウンスでスタートした。船の片舷に風を受けて船を横向きに流しながら釣りをする“ドテラ流し(横流し)”のため、ジギングであっても船の進行方向へ向けてアンダースローでルアーを投げるのが『宏昌丸』のスタイル。餌釣りでもシロギス釣りなどでお馴染みのこの投入方法。不慣れな人は乗船時に船長や上乗りさんに頼めば、手取り足取り親切に教えてくれる。余分な糸フケを出さないようフェザリング(両軸リールで言うところの“サミング”)をしながら糸の出を見て、ジグが着底したところで竿を煽ってルアーを跳ね上げ、根掛かりを回避する。続いてリールを巻きながら竿先を動かしてルアーに動きを与えるのだが、しっかりジグが動くよう、また惰性で水平方向へ泳ぐイメージのシャクリ方は、フィールドで身体で覚えて頂きたい。使うジグの重さやタイプ、アシストフックのサイズ等は、釣り場の水深や潮の流れなど、その場に即した選択が求められる。自分で判断出来なければ船長や上乗りさんに質問するのが近道だ。
膠着状態からの脱出!
この日は、前日に北の風が強く吹いた影響からか、魚群探知機に魚の反応は出ているのだが、全く沈黙して口をつかわない状況に陥っていた。小生も沖上がり前に10投程してみた。ルアーの沈降中に海底付近で魚信があったものの巧くハリ掛かりさせられず、所謂「居るのに食わない」状況なのがよく分かった。とは言うものの、魚が動き始めた気配も感じられ、引き続き午後船にもチャレンジすることにした。
午後から乗船するアングラーを乗せ、「宏昌丸」は正午に出船。30分程走って再開となった。水深40mから60mへ落ちるエリアから流し始め、徐々に水深の浅い方から流し直していた午後1時31分、待望のファーストヒット!!落ち着いたやり取りで4kg弱のヒラマサを取り込んだのは続木幹丈さん(品川区)。比重の軽い素材のジグによるフォールを意識した緩やかな釣りが功を奏した。これを皮切りに、ミヨシ(船首)とトモ(船尾)でヒラメとサンパク(ブリの若魚)が立て続けに取り込まれるなど“時合”を感じさせる一幕も。ジギング初挑戦で3kg級のサンパクをキャッチしたのは中田裕之さん(大田区)。これまでシーバスやアジング、エギングといった岸からのライトゲームを楽しんで来たとのことだが、エキサイティングな“青物”のファイトを満喫し、大満足のデビュー戦となった。
とことん釣りに集中できる、上乗りさんのサポート体制
今回の釣行で印象的だったのは“上乗りさんによるサポート”の徹底ぶりだ。タモ入れや根掛かり外し、オマツリ解きといったアシストは勿論、キャストのレクチャー、ジグのシャクリ方のアドバイス、ドラグの調整、リーダーの結束など、初心者が心配になる項目を高レベルな技術でバックアップしてくれる。また中~上級者にありがちな「一緒に連れてって下さい」的な“初心者同行の釣り”の場合、教え上手な上乗りさんが居てくれると、自分の釣りに集中できるのが嬉しい。ただ、上乗りさんも毎回乗船しているエキスパートなので、任せた初心者が貴方より先に魚を手にする可能性が高いことも書き加えておこう。さらに『宏昌丸』では、釣った魚を海へ帰すも持ち帰るも釣り人の自由なのだが、持ち帰って食べる場合、上乗りさんが活け締めにしてくれるだけでなく、かなり丁寧に血抜きや神経締めまでしてクーラーに収めてくれる。釣り人の多い週末には2名体制で乗船しているので、入門者のみならず、たっぷり釣りを楽しみたいアングラーにとっても頼もしいこと請け合いだ。
そして待望の“夕マヅメ”
水深40~60mを中心としたジギングに加え、イワシの群れに絡む水深20mのエリアでの100g以下のジグによる斜め引き、更に浅場でのキャスティングゲームと様々なアプローチで釣りを楽しんだこの日、待望の“夕マズメ”に船長が選んだのは「大型が出る」と言う御宿沖の水深12mから徐々に深くなるエリア。左舷をジギング、右舷をキャスティングに限定して挑んだ大場所。魚の気配に満ちた静寂を破ったのは左舷ミヨシからジグを投げていた北條淳一さん(大田区)。反対側ではキャスティングゲームをしているので、ジグを上層までシャクってアピールした。結果、中層で口を使ってきたと言うヒラマサはこの日最大の5kg級。こうしてこの日の釣りは、心地よい疲れと夕陽に包まれて沖上がりを迎えた。
入門に最適な「春マサ」シーズンはこれから!
この日は難しい展開となったが、3月12日には30kg級が、その後も10~15kg級を数多く上げてきた『宏昌丸』。今期の模様を吉清良輔船長に訊いた。「難しい日もありますが、魚は例年より多いですよ。これから4月、5月、6月はヒラマサが割とイージーに釣れる、数が釣れるシーズンになるので、初めてヒラマサを釣ってみたいという方も是非チャレンジしてみて下さい」と嬉しい話。細いラインとシンプルな道具立てで、考える釣りと大物とのファイトを余すところ無く楽しめる外房のジギング&キャスティングゲーム。腕に覚えのあるアングラーは武者修行に。また、未体験者は是非、入門に最適なこれからの季節、ビギナーの受け入れ体制万全な『宏昌丸』でお楽しみ頂きたい。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:午前船1万1,000円/午後船10,000円(氷付き)
集合:船着場に5:30まで/出船:6:00(変動あり、予約時に要確認)
定休日:第1・3土曜日
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他