2018年05月15日公開
相模湾のマルイカ(ケンサキイカ)は、例年2月頃、水深100m前後の深場からスタートして6、7月には水深30~40mの浅場で最盛期を迎える。本格シーズンを前に、いつ盛り上がりを見せるのか?期待を胸に達人達が集う神奈川県・葉山あぶずり港『たいぞう丸』に出掛けた。
2隻で出船!人気のマルイカ
この日は、2隻で出船。マルイカ人気が伺える。この日の予報は南風、午後から風が強まるとのことで、私が乗った「第二十三たいぞう丸」は、定刻7時より少し早めの6時35分、片舷9人ずつ計18人で出船した。7時過ぎにポイント到着。水深78m。「はい、いいよ」と山本船長から投入の合図。「乗ったよ」。1投目から掛けたのは、右舷ミヨシ(船首)の吉田慎一郎さん(横浜市)、最初に上がって来たのはヤリイカ。しかし、その後は沈黙が続き、状況は厳しい様子。
名人に聞いたゼロテンション
マルイカ人気を支えているのは、何と言っても、ゼロテンション(ゼロテン)と言われる釣り方だ。最近は、各メーカーからもゼロテン専用ロッドがリリースされ、人気は高まるばかり。私も数年前からこの釣りにどっぷり嵌っている。今回は、『たいぞう丸』の常連で何度も驚異的な釣果を叩き出しているゼロテン釣法の考案者である柏崎健一さん(横浜市)も同船、貴重な話を伺う事が出来た。
―ゼロテンションについて
「ゼロテンションは、テンション(張力)がゼロって事じゃないよ。オモリを背負った釣りだと、オモリの重さ分ラインにテンションが掛かるから、イカは、違和感でスッテを直ぐに離しちゃう。だからゼロテンは、テンションを抜くことでイカの抱く時間を長くするのが目的。でも、緩め過ぎたらアタリが分からなくなるから、それが分かるギリギリのテンションを保つのが基本。誘って(叩いて)、止めてアタリを見る動作は、人間側が集中するタイミングを作る意味も大きい。微妙なアタリをずっと見続けるのは集中力が続かないからね。初心者は、アタリを見過ぎないで3、4秒位で空合わせをする方が良いと思う」。
船の揺れをかわしながら張らず緩めずをキープ出来るようにすることが肝心のようだ。柏崎さんは、リールを両手で包むように構え、糸フケを最小限に抑え、着底と同時にクラッチをON。ショートピッチで素早く7、8回スッテを揺らし、オモリを海底に寝かせた状態でゼロテンションをキープ。3、4秒でリセットといった感じだ。オマツリの原因になるので、オモリを底に置くのは短めにして、底の取り直しを小まめにしたい。
―巻き落としについて
「巻き落としはあまりしないね。基本ゼロテンオンリーだよ。活性が高い群れなら別だけど、渋い時、巻き落としは、意味ないと思っている」。柏崎さんの考えでは、巻き落としは、浮いている活性が高い群れからイカを追わせて底で掛けるイメージで、群れの活性が低い時は、追ってくるイカがいないので意味がないとの事。
―スッテ選びについて
「スッテ選びの決まりは無い。その時釣れているヤツを使う。全部1色だけとかもやるよ」。常連の仲間たちと情報交換して、その時、釣れているスッテを選ぶとの事だ。
―仕掛けについて
「道糸PE0.8号、ハリス4号、スッテの間隔は1m。浮いている時は、スッテを15本までつけることもある。その時はオモリ80号だね」。この日は、10本からスタートしていた。
穂先の動きの“違和感”を感じる
マルイカ釣りでは、両隣が釣れているのに自分だけ全く沈黙とか、アタリがあるのに全然掛けられない事がよくある。また、仕掛けを回収してみたら、墨が付いていたなんてこともしばしばだ。手に伝わらないため、気付けずに半分以上のアタリを見逃していると言う事だ。マルイカのアタリを取るには、よく“目感度”と言われるが、微妙な穂先の変化を見極める必要がある。船の揺れとは異なる穂先の動きの変化、いわゆる“違和感”を感じてアタリを取る。この微妙なアタリを取るために各自、自作の穂先などで工夫をしている。糸フケを素早く取ったり、ゼロテンションのキープの姿勢もこの“違和感”を最大限に感じられるようにするための動作だ。
道具のカスタマイズもお楽しみ
常連の皆さんは、自作の穂先を使っている人も多い。メーカー製にはないような領域まで極細に削り込んだ穂先で、マルイカの微細なアタリを取る。これで見えないアタリが見えるのかも。スッテも、糸巻や色付けなど様々に工夫している。中にはオリジナルの型を起こして樹脂成型までする強者もいる程だ。
風が強まり、早上がり
その後も厳しい状況が続いた。11時を過ぎると、予報通り風も強まって来た。繊細なアタリを取るマルイカ釣りには、一層厳しい状況になった。この日のイカは、10m近く浮き気味とのこと。活性が低く下まで追って来ないようだ。やはり巻き落としも効果なしの様子。「イカがいるのは確か。大きい反応をいくつも見つけたけど、今日は全然触らないんだよね」と船長。
結局、1時半頃、風が更に強まり、早上がりとなった。トップ20杯(柏崎さん)と厳しい状況だったが、群れの濃さは実感出来た。「いつスイッチが入ってもよい状況」と船長。マルイカの“Xデー”はいつか!?ひょっとすると、あなたが出掛ける日かも知れない。
今回利用した釣り船
出船データ
出船時間:午前7時 氷:300円 サービス券・女性、子供割引あり
駐車場:無料
この記事を書いたライター
マルイカ、ティップラン、ワカサギなどを中心に海水淡水を問わず釣りの帰りに温泉に立ち寄り、「釣り&温泉」をテーマに釣り歩く。