2018年06月01日公開
東京湾で釣れるフグの略称「湾フグ」。ここ3年程はトラフグフィーバーに沸き、新たな脚光を浴びる形となったが、やはり多くのアングラーにとってはショウサイフグがメーンターゲット。特に白子を持ったこの時期の「白子祭り」は人気絶大だ。今年も人気ターゲットが開幕した。「湾フグ」の代名詞的船宿、金沢八景『野毛屋釣船店』に向かった。
「健流」湾フグ釣法の生みの親
『野毛屋釣船店』は、東京湾で最も「湾フグ」に精通した船宿の一つ。「週末にフグ釣りに行く」と釣り仲間に話すと「野毛屋さん?」と聞き返されるほどにその知名度は高い。それもそのはずで、非常に研究熱心な黒川健太郎船長が考案した湾フグ釣法は「健流」として知られ、船長監修のカットウ仕掛けを始め、竿まで出しているほどの熱の入りよう。「湾フグ」未経験の私も1度体験してみたいと思っていたので今回の釣行が非常に楽しみだった。
「湾フグ」フリークの熱気が凄い
『野毛屋釣船店』は、シーサイドライン・金沢八景駅を真っすぐ300m程進んだ場所にある小川沿いの道を右折して100m程。出船は午前7時15分だが、人気船宿だけに5時半の開店前から行列が出来る程だ。釣り座を確保して、来た道を100m程戻った平潟湾岸壁の桟橋へ向かう。既に20人近い釣り人が準備に余念がない。船長が熱ければお客も熱い。これは凄いぞ…。
港前は大シケ、荒れ模様のスタート
この日のフグ船は2隻出し。私が乗った「第一忠丸」は午前7時丁度に計25人を乗せて出船。狙うポイントは航程30分程の大貫沖。と思いきや…普段ベタナギの『八景島シーパラダイス』前が“北の漁場”のような状況。前日から吹いた北風の影響で波っ気たっぷり。波の合間を縫って普段の倍の時間をかけて大貫沖に到着した。船長の目論見通りに風裏のポイントは波も幾分穏やか。アンカーを下ろして水深8mでスタートとなった。
船長の釣り方教室は必聴です!
ここでまず健太郎船長の熱さを垣間見る。船長自ら、初心者への釣り方教室。当然私も生徒になるわけだが、これが非常にためになる。餌付けから基本の釣り方まで一連の流れを教えてくれる。詳細は2017年6月15日号に掲載されているが、非常に分かりやすい。そしてその細かな指示内容に初心者でも絶対に釣らせようという思いを感じる。
健流釣法の奥の深さ恐るべし…
ここで2点ほど疑問点が。船長曰く「竿先を右舷は目線より少し上。左舷は目線の高さ。それより下げないで」と。理由は「アタリを出すのにはゼロテンション(オモリが海底から浮いているでも、底についているでもないギリギリの状態)が必須。オモリが流されたり、アタリがぼやけたりしないように左右で高さを変えている。そしてもう1点は「3秒から5秒に1回は20cm程上に誘って!」と。これはエビが跳ねているのをイメージして誘いを入れる効果と、餌をつついているフグをカットウで引っ掛ける2点の狙い。止まっている餌にはフグが関心を示さないそう。なるほど奥が深い。
午前中は「厳しい」の一言
さて、実釣の報告をしたいのだが、この日は状況があまりによろしくなかった。繊細なアタリを取る釣りに強風で条件が悪いと言うのも勿論ある。しかし、この日は常連さんも多く、百選練磨の強者揃い。それぐらいの悪条件は問題無し。しかし、それでも一向にアタリが来ない。たまにアタリがあっても、そこは水深8m程のポイント。集中して船中を見渡していても気づいてカメラを持って駆け付けた時には既に取り込み後。釣るのも難しければ、映像を撮るのも難しい取材者泣かせの一日。前日までの釣果を見ると“ツ抜け”(10匹)達成もそう難しくないだろうと言う甘い考えは大外れで、正午時点で船中合わせても“ツ抜け”が達成できていない状況。いやー厳しい…。
ラスト1時間の上げ潮がチャンス?
このまま終わってしまうのか?船長も「今日は今年で一番悪いよ。釣れないなーと思っても船中で40~50匹は釣れるからね。なんだ今日は?」と嘆き節。ほとんど映像が撮れていない私もつられて嘆き節。残りも1時間となった午後2時。唯一の望みは船長の「これから潮が上げに変わるから、朝ダメだったポイントを最後にやってみよう。チャンスはあると思うよ」の言葉のみ。疑心暗鬼の中で最後のアンカーが落とされた。
怒涛のラッシュが最後に待っていた!!
「来ましたよ!」。まさかの連続ヒット。小気味良い湾フグの引き。産卵を控えた良型が今までの沈黙が嘘だったかのように掛かる。圧巻は左舷トモ(船尾)の松田正樹さん。怒涛の6連荘で、それまで船中で“ツ抜け”がやっとと言う状況下でまさかのトップ10匹を達成。船中でもこの流しで20匹近くが上がった。それでも今シーズン最低と言う不名誉な記録を達成した取材となってしまったが、終わり良ければ全て良し!確かな手ごたえを感じることが出来たし、最後までだれ一人諦めることなく釣りを続けた事へのご褒美なのかもしれない。
「白子祭り」のうちに是非1回
初の「湾フグ」を楽しみにしていたが、自分では竿を出すことが出来なかった。しかし、近くで見ていて、「湾フグ」の奥深いテクニカルな釣法は十分に分かった。嵌る人が多いのも頷ける。何より健太郎船長自らがその虜になっているのも分かった。次回こそは実際にやってみたい。絶品の白子を楽しめるうちに是非とも再訪だ。
今回利用した釣り船
出船データ
ショウサイフグ:9,300円
※女性1,000円引き、中学生以下半額、前回の乗車券の半券で500円割引
有料駐車場:500円
氷:210円