2018年07月15日公開
俳句では“夏”の季語である「キス(鱚)」。産卵期の夏に接岸することから“キスゴ(岸子)”と呼ばれ、かつて東京湾に生息していた青みの強い“アオギス”と区別するために“シロギス”という呼び名が一般化した。いよいよ本格シーズンを迎えるシロギス。「連日好調、イチ押し」との情報で横浜・本牧港『長崎屋』に出掛けた。
8時過ぎから14時迄の“ショート シロギス”
『長崎屋』の待合所は大通りから1本奥まった閑静な住宅街にある。乗船名簿の記入と乗船料の支払いを済ませ、駐車証と氷を受け取って車で5分弱の本牧港へ向かった。集合は午前6時から8時までとなっているが、釣り座が先着順のうえに、船着場への道順も初めての人には分かりにくいので、早めの“チェックイン”をお薦めしたい。取材日は朝の時点で気温30度。最高気温をマークする14時を沖上がりとするショート乗合いは気の利いた丁度良さを感じる。「1日船に劣らない釣果を目指している」と言う船長の意気込みも頼もしい。受け付けした全員の乗船を確認して「第十長崎丸」は定刻より早めに出船した。
釣り開始、即アタリの魚影の濃さ!
ベタナギの東京湾を走ること25分。富津沖、水深10mの釣り場に到着。竿入れの1投目からシロギスを取り込んだのは、経堂で天ぷら店を営む林嘉幸さん(世田谷区)。「仕込みみたいなもので」と旬のシロギス釣りに精を出す林さん。「今の時期は浜値で1kg3,000円くらい」とのことで、高い時には1kg6,000円を付けることもあると言う東京湾のシロギス。その真価にうといのは意外と釣り人の方かも知れない。その後もあちこちの釣り座で魚が上がり、サイズは18cmから23cmと概ね型が良く“ピンギス”と呼ばれる小振りの個体はあまり見当たらない。アタリの集中するエリアでは船長も小刻みに流し直し、釣果は着実に伸びていった。
ノウハウと意気込みの詰まった船宿仕掛け
『長崎屋』では、船宿オリジナル仕掛けに胴突き仕掛けを導入している。「天秤仕掛けで釣って貰っても問題ありません」と言う船長だが、やはり胴突き仕掛けは絡みにくく、アタリが大きく出る。また、投げる釣りが有利な時は圧倒的に投げ易いメリットがある。通常7~8号のハリを用いるシロギス釣りだが、船宿仕掛けに結ばれているハリは9号。これでも問題なくシロギスは釣れるし、飲み込まれるリスクが減るので手返しの良さに加え、餌付けの容易さにも貢献している。また、仕掛けの道糸側がチチワになっているので、道糸と直結すると枝ス付近まで竿先に巻き込む事が出来、ハリスを長めにとっても非常に投げ易くなる。さらに幹糸とエダスの結束はビーズになっているので、ハリの交換にもすこぶる具合が良い。スペアに糸付きバリを持参すればハリスの縮れや飲み込まれた際の交換にも手早く対処できるだろう。こうした船宿仕掛けの細やかな工夫に、船宿の持つノウハウと釣らせる意気込みが感じられ、ただただ感心しきりだ。
竿頭は106匹で“束釣り”達成!
富津沖の水深10mからスタートしたこの日の釣り。朝のうちは潮の動きが無かったが次第に流れ始め、水深8m、やがては6mへと徐々に浅場のポイントへと攻略を続けた。浅場ではシロギスからの魚信が明確どころか、驚きで声が出るほど強烈に出て、ハリ掛かり後もあの華奢な魚体からは想像できないような鋭角的で力強い、トルクフルなファイトが楽しめた。 浅場での数釣りを満喫した後、船長は“沖の瀬”の釣り場へと舳先を向けた。これまでの浅場でも型揃いだが、さらに大型の個体が上がる水深17mの大場所。こちらでもポツリポツリと誰かしらの竿が曲がり、良い人は連釣するなど、そのポテンシャルを推し量るには充分な手応えが感じられた。 かくして取材日の釣果は、阿久津俊雄さん(横浜市)の106尾を竿頭に平均40~50尾と短時間ながら上々の成績。逆にこのくらいなら、帰宅後の調理も苦にならないという釣師も多いのではないだろうか。大型の個体が多いので、定番の天ぷらの他にフライやしゃぶしゃぶ、塩水で洗ってお刺身や昆布締め、カルパッチョにしても美味しく楽しめた。是非色々な味覚をお試し頂きたい。
今シーズンはシロギスがイチオシ!
「数は例年並みで良く釣れてます」と今シーズンを語る長崎功船長。「基本はまず餌付けですね。真っ直ぐ付けないとダメです。餌の大きさは(イソメ1匹の長さの)半分くらい。船宿仕掛けのハリは大きいので、そのくらいがバランス良いです」とは船長談。具体的なエサの付け方や釣り方は、頼めば出船前に説明を受けられるので、知ってるつもりでも教えを請えば新たな発見があるかも知れない。釣り易くて奥が深い、まさにビギナーからベテランまでも魅了する東京湾のシロギス釣り。お子さんの船釣りデビューにも、疲れず飽きず、万が一の船酔いでも帰港の早いショート船は最適だ。腕に覚えのある太公望は武者修行に、また貸し道具も充実しているので夏休みの食育と思い出作りの候補としても強くお薦めしたい。 なお、暑い盛りの釣りなので、日焼け止めや帽子の準備と、飲み物は1人1.5Lは持ち込んで、まめな水分補給をお忘れなく!
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:7,500円(エサ・氷付き)※女性・小中学生&高校生は5,000円
集合:受け付けへ8時まで 出船:8時30分頃(乗客が揃い次第)
駐車場:500円
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他