2018年09月01日公開
千葉県・内房、勝山沖『宝生丸』のカワハギ乗合船が8月1日からスタートした。寒い冬に比べれば断然餌付けが容易で、活性も高く比較的釣り易い夏のカワハギ釣りを楽しみに内房・勝山港へ出掛けた。
首都圏から意外と近い勝山港
勝山港へは、都心からでも1時間20分弱。東京湾アクアライン経由で富津館山道路・鋸南富山ICから僅か2kmとアクセスが良いため、南房総までもう一足という位置だが、走行距離の割に近く感じる筈だ。この日は未明から降り出した雨で、傘を差しての受け付けとなった。生憎の天気でも、船と駐車スペースが近いので助かる。乗船の頃には雨も上がり、朝焼けが立った。釣り人たちはそんな風景の中に居ることなど気付きもせず、一心不乱に餌となるアサリを洗って塩をまぶし、下拵えに余念が無い。やがて周囲はすっかり明るくなり、午前5時ちょっと過ぎに出船になった。
開始間もなく船中1匹目!
河岸払いから10分弱で水深20mの釣り場に到着。竿入れ第1投目から竿を曲げたのは鶴岡克典さん(君津市)。好調なスタートに、船中のヤル気は俄然高まった。しかし、その後が続かず、上がってくるのはトラギスやキタマクラばかり。やはりまだ海水温が高く、カワハギの群れが固まっていないのか、船下を釣る人も、投げて広範囲を探る人も、底を切っての宙釣りも、底周辺を釣る人も、釣法や釣り座に関わらず“ゲストフィッシュ”を10匹釣るとカワハギが1匹釣れるようなペースが暫く続いた。ただ特筆なのは釣れてくるカワハギのサイズで、“ワッペン”、“コッパ”と呼ばれる小物はほとんど上がらず、押し並べて型が良い。また魚自体の活性は高く、金属的に竿先を叩きながら横へ走る元気な個体が多く見受けられた。開幕当初や台風直後より、確実に状況は上向いているようだ。
活性高く入門に最適な“夏カワハギ”
望月誠さん(春日部市)は船釣り初挑戦。最初の1匹を釣るまでは苦戦したようだが、中盤から魚のアタリと合わせのタイミングを体得して釣果を重ね、最終的にカワハギ7匹を釣り上げる大金星。仕掛けの落ちた所に魚が居れば何かしら反応がある夏は、カワハギ釣りの入門には最適な季節だ。着膨れして手がかじかむ冬の釣りと比べると、ハリにアサリを付けるのも、小さな異変を捕らえて合わせるのも驚くほど容易だ。『宝生丸』には、女性や子供に対して乗船料の割引きがある上に、おろしたり調理したりが比較的簡単なカワハギは“食育”にも向いているので、子供達の船釣りデビューにも強く薦めたい。その際は「日焼け対策」と「熱中症予防」をどうぞお忘れ無く!
実は魅力的な“ゲストフィッシュ”の面々
カワハギの活性が高いこの時期、カワハギ以外に釣れる“ゲストフィッシュ”の活性もまた高い。兎に角良く釣れるトラギスは天ぷらにすると非常に美味しい魚なので、騙されたと思って食べてみて欲しい。また、ササノハベラやキュウセンなどのベラ類は、煮付けるとふっくらとして上品な味になる。これを冷ますと身が締まるので、煮汁の中で一晩寝かした後に焼いて食べる「はぶて焼き」もお薦めだ。ホウボウはおろすのはやや難しいが、刺し身にすると旨みが強い。カサゴは煮ても焼いても揚げ物にしても美味。エソはすり身にしてカマボコにするのが有名だが、手間を掛ければ刺し身や焼き物にしても美味しい…と、“本命”カワハギの10倍は釣れる“ゲストフィッシュ”たち。この味を覚えればカワハギ釣りが10倍面白くなる筈だ。但しショウサイフグやキタマクラ、ハコフグなどのフグ類は決して素人調理で食べないよう、ご注意頂きたい。
船長に訊く“カワハギ釣りのコツ”
カワハギやマルイカなど、内房のテクニカルな釣りに精通する髙橋賢一船長に、カワハギ釣りのコツを訊いた。「兎に角餌を小まめに“見る”ことですね。アタリが取れるようになるまで時間が掛かると思うんですよ。餌を盗られちゃってる状態で釣ってる人って結構居るんです」。ハリに餌の無い時間を短くすることに加え“誘い方”や“釣り方”のヒントも提供してくれる「餌のチェック」。これはビギナーのみならず、ステップアップの足がかりともなるキーワードかも知れない。「慣れてきたら“餌の盗られ具合”を見て、すぐ盗られるなら早く動かして、盗られ難くしてアタリを出したり、残っているならゆっくりゆっくり動かして食べやすくしようとか…」(船長)。こうして魚に口を使わせる技術を培うのがカワハギ釣りの醍醐味。取材日もそうだが『宝生丸』にはスゴ腕の釣り師がよく乗船しているので、ちょっと手を休めてその釣りを観察してみるのも、上達への近道になるだろう。
カワハギの魅力は“肝パン”だけじゃない!
「まだ群れが固まってる様子はないですね。どうしても“拾い釣り”になるような感じが多くて」と船長が語るこの夏のカワハギ釣り。時折パタパタッと連釣するのは産卵のためにペアリングをしている個体の“小さな群れ”なのだとか。これを捜しながら、誘い出しながら釣るのも面白いが、小生が楽しみにしていたのはその食味。「肝パン」と呼ばれ肝臓が大きくなる冬の個体と比べ、夏のカワハギは“身の味”がしっかりしていて、また肝臓も大きくはないが味が濃厚な印象を受ける。ちなみに、カワハギもゲストフィッシュたちも“血抜き”をすることで食味と白身の美しさが断然違ってくる。カワハギはエラ穴に刃物を入れて1、2分泳がせてから氷の効いたクーラーボックスに入れるのが得策。ファスナー付きビニール袋に入れるなら、トレードマークのツノをハサミで切ってから入れるのがお薦めだ。カワハギを満喫するなら、予約制で混み合わず、のんびり楽しめる『宝生丸』で。捜して掛けるハンティングのような釣りと、脂肪分で味がボケていない夏ならではの味覚をお楽しみ頂きたい。
今回利用した釣り船
出船データ
乗合船料金:8,500円(氷付き)
※HP割引き1,000円/女性・小中学生は2,000円割引
エサ:800円~1,000円(1パック)
集合:4:30
出船:5:00
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他