小坪港は鎌倉と逗子の間に位置する静かな港。近隣には『逗子マリーナ』や『小坪マリーナ』、更にリゾートマンション群も多いお洒落なイメージのエリアだ。今回乗船した「第一太郎丸」は、掃除の行き届いたとても綺麗で清潔な船。大型高速船で揺れも少ない。高橋良至船長を始め、スタッフはとても親切で、初めてでも安心して乗船出来る。“アコウダイ五目”は午前5時30分集合。深海の釣りだからと言って道具がなくても大丈夫。必要なタックルは全てレンタル出来るし仕掛けも購入出来る。防寒、防水をしっかりして、水、食料、クーラーボックスさえ持って乗船すればＯＫだ。

私は駐車場に5時頃着いたが、既に数人の先着者がいた。受け付けを済ませ、照明が点けられた船に乗り込むと、釣り座にはバケツと氷、マグネットが用意され、餌のサバの切り身が配られた。さあ、あとは道具をセットして出船を待つばかりだ。予約時にレンタルタックルを希望しておけば、竿やリールはセットしておいてくれるし、出船前に船長自らリールの操作や仕掛けの投入方法、底ダチ、タナの取り方などを丁寧に説明してくれるので初心者でも全く問題ない。それにこの釣りはベテランより初心者が沢山釣ることがよくある。船長の教え通り釣れば、誰にでもチャンスがあるのだ。6時15分、深海の一級釣り場“沖の瀬”に向けて出船。
1時間程で到着すると、北東の風が強く海は悪かった。また、潮の流れが速いらしく、350号のオモリが配られチェンジするよう指示があった。生憎のコンディションとなってしまった。

船長の指示でミヨシ（船首）の釣り人から仕掛けを投入。続いて2人目、3人目と順番に船長指示で投入、大ドモ（船尾）が最後となる。水深は300ｍ前後だ。「海底にオモリが着くと道糸がフケて竿先が伸びます。リールを巻いてオモリが底を切ったら、さらに5m巻いてアタリを待ってください。アタリがあっても指示があるまでそのまま待っていてください」と船長。深海の釣りでもアタリはハッキリ分かる。コツコツ、ガタガタと竿先が震え、時たまギューンッと大きく曲がる。10分程経った頃巻き上げ開始。オマツリ防止のため、この時はまず右舷側が巻き上げ、遅れて左舷側が巻き上げた。左舷胴の間で「キンメは初めてなので楽しみです」と言っていた女性がまずキンメダイを上げた。少し遅れて右舷胴の間のレンタルの人もゲット。やはり船長のレクチャー通りにすると釣れる。さらに左舷トモでも嬉しいキンメダイ。右舷大ドモではキンメダイのダブル。投入から取り込みまでは1回40～50分。この釣りでは、船長の合図で投入出来ないとその流しは“休憩”になってしまうので、移動中に次の準備をキッチリしておこう。

次の流しでは、まず右舷胴の間のベテランが大きなメダイをゲット。続いて右舷胴の間のレンタルの2人がそれぞれクロムツのダブルとクロムツ＆大サバ。左舷トモではクロムツのダブルに大アジのおまけ付き。流し替えるたびにキンメダイやクロムツ、メダイ、大・中サバなどが釣れる“五目”になった。後半、大きく釣り場を城ヶ島沖に移動すると、ここでは通称スミヤキ（クロシビカマス）を多くの人が釣り上げた。スミヤキは、脂乗りの良い知る人ぞ知る美味しい深海魚だ。その後、深海の水族館に展示されているような珍しいフサアンコウの仲間？などが釣れたり、キンメダイを追加する人もいた。午後2時頃沖上がりになり、3時頃帰港した。

この日の釣果はキンメダイ28～40cmが0～3匹、クロムツ30～43cmを0～3匹、メダイ、スミヤキ、サバなども釣れて美味しい“五目釣り”となった。船から陸に上がると、女将さんが温かいお茶を用意して待っていてくれた。冬場は温かいのが何よりおいしい。船長も自らお茶菓子を持って勧めてくれる。こうした気さくでアットホームなおもてなしがとても嬉しい。スミヤキの食べ方に悩んでいた釣り人には、おろし方から料理法まで説明してくれる。帰りに『太郎丸』のステッカーとお土産の釜揚げシラスを頂いて帰路に着いた。この冬、深海の釣りに入門するなら『太郎丸』は間違いなくお勧めだ。