2019年01月15日公開
伊豆・新島沖と言えば、何と言ってもキンメダイ釣りだ。起伏の激しい海底地形に速い潮がぶつかり複雑な潮流が生まれる。ここで釣れるキンメダイは超美味い!この“激うまキンメダイ”をルアーで狙う予約乗合遠征船が、静岡県・南伊豆手石港『南伊豆忠兵衛丸』から出るという。生まれて初めての“深海ジギング”に挑戦した。
リーズナブルに素泊まり可能、翌朝は4時宿集合
静岡県・下田方面から青野川に架かる県道16号(下田石廊松崎線)の弓ヶ浜大橋を渡ると、「右折→釣船 忠兵衛丸」の三角形の看板、これが目印だ。この奥に『南伊豆忠兵衛丸』がある。素泊まり2500円とリーズナブルで温泉入り放題!今夜はここでゆっくり休んで、明日は船宿1階に4時集合。乗船名簿を記入し、浅沼清人船長と挨拶、釣り座をジャンケンで決め、氷を貰って車で3分の港へと移動した。
実は、船長に事前に何度か電話で問い合わせをしてこの日を迎えた。船長は「竿やリール、ライン、ルアーはどんな物を?」という私の超初心者な矢継ぎ早の質問に嫌がらずに答えてくれた。何せ私は今回“初めて尽くし”。狙いは新島沖のキンメダイ。餌釣りのキンメダイやアコウはかなり好きな釣り物だが新島沖は初めてだ。しかも、ただでさえジギングは初心者なのに、水深300~500mの深海ゾーンを狙う“スロージギング(スローピッチジギング)”なんて全くやったことがなく…、ワクワクだ。狙うキンメダイは2、3kg級かそれ以上という未体験の超大型!不安と戸惑いが渦を巻いていたというのはウソで、むしろ“初めて尽くし”の期待感とドキドキ感が半端なかった。
ジグ・ウェイトは「男は黙って1000g」!
夜明け前の港に着くと、まばゆい明かりが点った2隻の「忠兵衛丸」が停泊していた。この日は、餌釣りとルアーの2隻のキンメダイ船が出船する。乗船する「ルアー“激うま”キンメダイ」船は沖側の「第二十三忠兵衛丸」だ。私を含め8人が乗り込み、全員が右舷に並んだ。私の他はロッドとリールを2セット以上持ち込んでいる人が多い。大雑把に言うと、ルアー・ウェイトや潮流の状況で硬めと軟らかめのロッドを使い分けるのだと言う。リールはPE2号を1,200m巻けるドラグ性能に優れた頑丈なベイトリールを使用。私以外は全員手巻きリールにPEより伸びの少ない素材のラインを巻いていた。
1週間前、私が船長にジグのウェイトを電話で尋ねた時、船長は「男は黙って1,000g!」と豪快に笑った。まさか1kgのジグとは!想定を上回っていた。慌てて付近の釣具店に電話を掛けまくり、3軒目でやっと1本だけ在庫を見つけた。「竿やリール、ラインは底が取れりゃいいよ」とのこと。いろいろ迷った末、私は“シャクる”という共通点からイカ釣り用の竿と電動リールにPE2号を1,000m巻いて代用することにした。アシストフックは、丁度いい既製品がないようなので自作。痛い出費だったが新島沖のブランド・キンメのディープ・ジギングへの興味が上回った。
快適なベッドルームで休みながら釣り場へ向かう
5時に出船。釣り場までは1時間以上かかるらしい。船長から船内に入るようアナウンスがあり、全員ベッドルームでゆっくり仮眠を取った。船の中央に大きなキャビンがあり、洗面台や水洗トイレ完備、濡れて困る荷物を置いておける。2室あるベッドルームにはエアコンが設置され、快適に身体を休めることができる。この1週間、スロージギングについて調べて来た。まず最初のハードルはジグの着底が分かるかどうかだ。これはロッドとラインとリールのスプールを注意深く観察し、ラインの出とスプールの回転が止まり、テンションがなくなってロッドがまっすぐに伸びる一瞬を見逃さなければ大丈夫だ。ジグが着底したら1度10~20m空巻きして糸フケを取り、再度底を取り直して、3回くらいリールを巻き完全に底を切る。ここから釣り開始。ゆったりと1ジャーク(ひとシャクリ)、ロッドを下げてジグをフォールさせ、リールをひと巻き。これをくり返して20m前後タナを探り、アタリがなければ再度着底させひたすらタナを探り直す。頭の中ではもう何匹も釣れていた。
新島沖に到着、この深海域にでかいキンメダイがいる!
エンジン音がスローダウン、船長のアナウンスで目を覚ました。キャビンから出ると空はまだ暗い。周囲には釣り船と思われる船の明かりが多数見える。ここが新島沖だ。リーダーとジグを結び、竿先から少し垂らしておく。「投入していきます」という船長のアナウンスで、全員ロッドを小脇に挟み海面上にジグをぶら下げて投入の合図を待つ。「前(船首)から順番に投入してください」というアナウンス。ミヨシ(船首)、2番目、3番目…、と一定の間隔を開けてリールをフリーにして投入。着底には数分かかる。「水深300mからの落とし込みです」と船長。朝イチはチャンスタイムだ。皆気合いが入っている。が、どうも潮が流れていないらしくアタリがない。たまらず移動をくり返す展開となった。船長は、「崖の際で大型を狙います。根掛かりに注意してください」、「ここは溝です。マニアックな場所です」、「トンガリをやります。出れば型がいいですよ」と、様々なポイントを流してくれる。が、だんだん潮がぶっ飛んで来てしかも二枚潮というかなり釣り辛い条件になってしまった。根掛かりを回避するために、船長は“落とし込み(だんだん深くなるポイント)”を流してくれているのだが、それでも根掛かりでジグをロストする人も。それだけ着底がわかりにくいのだ。
“激シブ”の中の貴重な1匹!船内は活気づいた
中盤から私も“初めてのディープ・ジギング”に挑戦してみた。着底は何とか分かった。ゆっくりめにジャークしてジグを持ち上げ、ロッドをふわりと下げてフォールさせる。ジグは横にスライドしたりヒラヒラと不規則に動きながら落ちていく。このフォール中にアタることが多いらしい。底から20m程探り上げた後リールをフリーにして底を取り直す。「あれ?沈まない?」ということは、もしかして、「食った!?」。合わせを入れると重いし、竿が曲がったまま伸びない!食ったかも?「アタッてる。巻け、巻け」と船長。ウネリに対応しながら電動で慎重に巻き上げ、あと100m辺りで魚?が暴れた。海面まで巻くと何もいない。ジグのお尻のフックがリーダーに絡まる“エビ”という状態になっていた。そのせいで重かったのか…。「アシストが1本切れてるよ。クロムツかな」。そう船長に言われて見てみると、確かにアシスト・フックのラインがスパッと切られていた。「く、悔しい」。
この流しは、俄かに魚のやる気が出たようだ。胴の間(中央)の鈴木憲志さん(静岡県菊川市)も重そうにリールを巻いていた。ひと巻きひと巻き、ゆっくり確実に巻き上げ、この渋い状況では大変貴重な1kg前後のキンメダイを見事釣り上げた。この釣り7、8年のキャリアの持ち主というベテランの鈴木さんも、「これで美味しいキンメが食べられます」と、とても嬉しそうだった。血抜きと神経締めをして、大事にクーラーに納めていた。この1匹のおかげで他の釣り人にも活気が戻った。
新島沖のルアー・キンメダイはこれからが本番!!
しかし、この日は後が続かなかった。「この流しで最後になります」。正午過ぎまで頑張って釣り場を離れた。合計10投くらいしただろうか。船長も「大型のキンメを釣らせてあげたかったけど、今日はちょっと悪い日に当たってしまったね」と残念そう。帰路もカッパを脱ぎベッドルームで横になる。目を閉じるとすぐに眠りに落ちた。帰港後、船宿に戻り精算を済ませて帰路に着いた。それにしても、あのアシストフックのラインを切って逃げていった魚を釣り上げたかった。この釣行後“ルアー・キンメダイ”は好転し、2kg前後が釣れたり、3~5匹と数的に伸びた日も。シーズンはこれからが本番。数型ともにもっと良くなる。次回こそはきっと大型の“新島キンメダイ”とコンタクトしたい。
今回利用した釣り船
出船データ
料金:16,000円(氷付き)
出船:4時に船宿集合、準備が出来次第出船、12時頃沖上がり
素泊まり:2,500円(船宿忠兵衛温泉24h入り放題)
※詳細はお問い合わせください。
この記事を書いたライター
0mの海面から水深1,000mの超深海までのレンジで、数cmのハゼやキスから、イカ・タコの軟体動物、数十kgのキハダやベニアコウまでの様々な魚を狙うフィッシング・ライター。