2019年02月15日公開
寒ビラメ、寒サバ、寒イサキ…「寒○○」と呼ばれる魚は味に定評のあるものばかりだが、中でも「寒ブリ」、「寒サワラ」の旨さは説明不要だろう。しかもこれらの魚が、ゲーム性の高いルアーフィッシングで楽しめる乗り合い船が始まったとの情報をキャッチ。勇んで千葉県・長浦港『こなや丸』へ乗り込んだ!
東京湾アクアラインを降りて15分!
釣船「こなや丸」の“チェックイン”は「こなや釣具店」で行う。東京湾アクアライン・木更津金田ICから約15分。アクア連絡道・袖ケ浦インターからも15分弱で到着する。その名の通り釣り具を扱っているので、「スプリットリングを切らしてた」、「アシストフック持ってくるの忘れた」などの“ルアー釣りあるある”への対処は勿論、初めてのチャレンジで何を揃えれば良いのか分からない場合も、釣り物に合わせたものが揃っているので安心だ。店に着いたら、入り口の脇にある「乗船順位プレート」から番号札を取って、店内の受付カウンターへ。乗船カードの記入や駐車場代、乗船料を支払い、乗船時に必要となる番号札と、港に車を停める際にダッシュボードへ掲げる駐車証を受け取る。港の駐車場が分からない場合は、その旨を伝えれば案内図で説明をしてくれるのでご心配なく。入口脇の冷凍庫から氷を持って、港へ向かう。船の前に車を停め、荷物を降ろす。船長から船のマイクで案内があってから番号順に乗船となる。この日は2月11日、雪の「建国記念日」。午前6時、19人のアングラーを乗せた「第17こなや丸」は滞りなく出船した。
早々に“サワラ”の魚影を捕捉!
暖かいキャビンで釣り人同士の会話をしたり、ウトウトして過ごすこと1時間ちょっと。「こなや丸」は観音崎沖に到着。釣り座に出ると雪は小降りになっていた。暫く魚群探知機で魚の反応を捜していた船長から「では始めましょう、どうぞ~!」の合図で釣り開始。船中1匹目の魚を取り込んだのは多田秀則さん(君津市)。魚はサワラの若魚“サゴシ”。この後もあちこちの釣り座で竿が曲がり、船縁でバラす場面も散見したが、ポツリポツリと魚が取り込まれた。諸説あるが60cm以上をサワラと呼ぶなら、サワラ級の個体も少なからず上がる。ルアーが沈んで行く糸の様子をつぶさに見つめ、竿に感じるルアーの重さの変化に神経を研ぎ澄ませていると、いつしか寒さを忘れてしまう。魚を手にした時の悦びが特別大きく感じるのは、こうした努力の結晶だからだろうか。
“ジギング”とは…?
『こなや丸』のルアー五目で行われている“ジギング”について、馴染みの薄い方々へ向けてざっくりご説明しよう。
ルアーと一口に言っても実は様々な種類と楽しみ方があって、中でも金属製の「メタルジグ」(以下“ジグ”)と呼ばれるルアーを使って、主に船の真下方向へ沈めたり、リールを巻きながら竿を煽って(シャクリ上げて)魚に口を使わせる釣りを「ジギング」と言う。ジグには重さのバランスや用途によって様々なパターン、形状の違いに加え、色やそれ自体の重さ、素材の比重と選択肢が数多ある。初心者を困らせる障壁の1つがココなのだが「こなや釣具店」は乗合船からのリアルタイムな実地情報や、用途が明確なので、必要なルアーや小物が絞り込み易い。初めてチャレンジする場合はレンタルタックルと受け付けのレジ脇などに置かれている定番商品からお薦めを聴いて、そこから始めてみるのが賢明だろう。
ルアーの動かし方はとりあえず“ワンピッチ・ワンジャーク(リール1巻き、竿1回シャクリ)”が出来れば当分大丈夫なので、「釣りビジョン」のオフショアルアー番組を観たり、船の上で釣れている釣り人のマネをしたりして予習・体得するのがお薦めだ。
“タチウオ船団”に合流!
釣れるタイミングでターゲットが変わるのが「ルアー五目」の醍醐味。この日は10時過ぎに狙いをタチウオに変更。タチウオ釣りの船団に入ると間もなく“本命”タチウオが竿を曲げた。しかも上がるのは概ね“指5本サイズ”の良型。体長1mを超えると格段に食味が良くなるこの時期のタチウオ。釣り味は勿論、食べても美味しいこのサイズが揃うのは嬉しい。この日、好調に魚を上げていた熊谷浩さん(八千代市)は115cmの“ドラゴン級”をキャッチ。1mオーバーが数多く上がる中でも、このサイズとなると魚の顔つきも違う。アタリが落ち着くまでアッという間に感じたが、白熱した集中とファイトの1時間だった。
船長に訊いた「ルアー五目」のコツ
“東京湾ジギングのカリスマ”、進藤通孝船長にこの釣りのコツを訊いた。「タチウオで使うロッドよりももうちょっと腰のしっかりした竿の方が、ハリがガッチリ入ってバレが少ないと思います。あとは周りの人の釣りをよく見る事ですね」とのこと。サワラは尻尾付近や後頭部にスレ掛かりして上がってくることが多い。これは引っ掛け釣りをしているのではなく、捕食行動として尻尾でジグを叩いているためだと思われる。その証拠に同じ群れの中で釣っていても、何も起こらない時間帯もあれば、何人もの竿が曲がる時合いがあるように、魚の活性(食い気)に左右されていることからも明確。このバレやすい掛かり所の魚を手にするには、しっかりしたフッキングと、ともすればタモ網を待たずに抜き上げられるロッドパワーが必要なのだ。
また、釣れている人のヒットパターンやルアーの選択は大きなヒントとなるので参考にしたい。“フォール(ルアーの沈下)中のアタリを取る”ことが重要だったこの日、そのコツを訊くと「下から巻き上げて来て何mの所でクラッチを切るか、そこで釣果は変わってくる気がするんです。デカいのはやっぱり反応の一番てっぺん近辺に居ることが多いと思うんで…」と船長。事ある毎に“海底までの水深”と“魚探反応の上下の水深”をアナウンスしてくれるので、船上で手詰まりになった時、船長のこの言葉を思い出して頂きたい。
「キャッチ&イート」冬のジギング三昧!
15時の沖上がりまで、ジギングの“考える釣り”をたっぷり満喫したこの日。竿頭はサワラ級を含むサゴシ12匹を釣った岩上栄司さん(袖ケ浦市)。タチウオの竿頭は1mオーバー5匹を揃えた松本光浩さん(松戸市)。両アングラーともフォール中のアタリを獲ることと、食い気の立つタイミングにテンポ良く釣るスタイルで釣果を伸ばしていた。「キャッチ&リリース」と言って、釣った魚を海へ帰すスタイルが一般化しているように見えるルアーフィッシングだが、様々な冬の味覚満載の「ルアー五目」では、釣ったらすぐ血抜きをしてクーラーボックスへ。大切に持ち帰って美味しく食べるのも大事な楽しみの1つ。この日は上がらなかったがワラサやブリも射程距離内に居るので、是非手にして頂きたい。釣る楽しみと食べる楽しみ、アングラー同士の温かいコミュニケーションも楽しい『こなや丸』のルアー五目を体験すれば、冬の釣りがもっと好きになること請け合いだ。
今回利用した釣り船
出船データ
集合時間:午前5時30分までに「こなや釣具店」へ
出船時間:午前6時
乗船料金:午前船9,500円(氷付き)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他