2019年10月01日公開
マダコやキハダマグロ、タチウオの盛況が印象的な令和元年。秋風が吹くと、その動向が気になるのがカワハギ。「内房には良型も有望なワッペンも居る」との情報を聞き付け、シーズンに先駆けて千葉県・内房、勝山港『宝生丸』を訪れた。
勝山港はアクセス良好!
『宝生丸』のある勝山漁港は、東京湾アクアライン経由で都心から1時間半程。富津館山道路・鋸南富山ICから僅か2kmとアクセスが良いため、走行距離の割に近く感じられる。勝山漁港に入って突き当たりを左に進むと、港の一番奥が乗船場所だ。カーナビには、隣接する「鋸南町勝山漁協 活魚センター(千葉県安房郡鋸南町下佐久間3770)」と入力すると分かり易い。日の出前に到着しても、『宝生丸』の受け付けカウンターは「第二十一宝生丸」の灯火で明るい。先の台風15号の被害が甚大だった内房エリアだが、『宝生丸』をはじめ各船宿とも船舶に深手はなく、行き帰りの道路や信号、店舗もすっかり機能していてひと安心。到着が早過ぎた小生に大船長がコーヒーを煎れてくれた。餌の生アサリも、板氷も従来通り用意されているので、釣行の際にはどうぞご心配なく。出船準備は滞りなく整い、片舷4人ずつと余裕の釣り座で「第二十一宝生丸」は出船した。
浅場の釣りからスタート!
穏やかな海を進むこと10分程で港前の消波ブロック周辺エリアに到着。走行中に船長から最近の魚の傾向や対策が案内される。先取りして述べると、このアナウンスでこの日のパターンに合致する釣り方が事細かに説明されていた。ビギナーや久々にカワハギをやる方は特に聞き逃さないようご注意を。「ハイ、やってください。10mです」のアナウンスでスタート。アタリはあるものの、元気に上がってくるのはキタマクラや小型のカサゴ、ネンブツダイなど浅場の“餌盗り”たち。この膠着状態を破ったのは左舷トモ(船尾)の藤永さん(船橋市)。船長のアドバイス通り派手な誘いを避け、竿先と手元に感じるアタリに集中する“静”の釣りで見事カワハギを手にした。この1匹を皮切りに、あちらこちらの釣り座でポツリポツリとカワハギが上がり始めた。サイズは小型から良型まで様々なのだが、竿を置いて船全体を眺めていると、良型を取り込む釣り人とワッペンサイズを釣る人は明確に分かれていた。状況を見ていた船長は浅場を離れ、一段深いエリアへと舳先を向けた。
水深20m以深、グッドサイズはここにも!
より沖合に位置する水深20~25mのエリアにもカワハギは居た。アタリが出るのは底中心だった浅場と異なり、底を切って仕掛けをフワフワさせたり、ゆっくり誘い下げているとアタリが出るこのエリア。決してバリバリ食うワケではないが、釣れるカワハギは概ね良型のメスで、じっくり集中の釣りが楽しめた。ここでの傾向としては“バラシ”(ファイト中のハリ外れ)が多く、これについての対策は後ほど詳しく。
ここで船長は大きくサイドチェンジして保田沖の水深25m前後の釣り場へ移動。こちらでもオモリを数cm浮かせて仕掛けを揺する、もしくはオモリを底に置いて静止しているとアタリが出る静かな釣り。だが、一旦ハリ掛かりすれば”カンカンカン!”と竿先を叩くような金属的な引き込みで横方向へ走るアクティブな良型の釣趣が非常に楽しい。こうしてポツリポツリではあるが釣果は着実に伸びて、心地よい疲れと共に沖上がりの時間を迎えた。
船長に訊く「釣り分け」のヒント
「今年はまだ(群れが)固まってないから大きいのが出やすいは出やすい」と言う髙橋賢一船長。これから来る人へのアドバイスを訊いた。「アタリは早目に出るけど、吸い込みは早くないので、アタリが出たと思ってキュッと合わせちゃうと、掛かりが浅く結構途中で外れちゃう。掛かる時のアタリは“重くなる”んです。重さを感じながら、魚を暴れさせながら、ゆっくり食い込ませるとバレは格段に少なくなります」とのこと。更に突っ込んで、この日多かった餌盗りの“ゲストフィッシュ”や、食べるには申し訳ないサイズのカワハギを避けて釣る方法はあるのかを訊いた。「コチョコチョコチョコチョ動かしていると、小っちゃいのが釣れます。のんびり釣ってる人の方に大きいのが来るんです。弛ませ釣りなら、1秒弛ませて、3秒待って、1秒で張ると小さいのがアタるなら、大きいのを釣るためには2秒で弛ませて、1秒止めて、2秒で張る。食うスピードが全部(魚種)違うんで、アタリが多いからってそのスピードでやってると、全部その魚になっちゃう。もう一つは“宙の釣り”で、魚の居ない所から誘いを掛けて、(底に居る)魚を引っ張ってくる。そうすると大きい魚の方が強くなるので、大きいヤツから釣れて来る。だいたいその2つですね」とは船長。興味を持った貴方は、船上で釣りをしながら船長に尋ねてみることをお薦めする。魚への意識と釣りが一新される機会になるかも知れない。
ベストシーズンはこれから、今期は期待大!
決して簡単な釣りではなかったこの日、竿頭は辛抱と集中の釣りを貫いた藤永さん。海水温が高めで広範囲に散らばったカワハギを見据えて、1匹、1匹を確実に掛けて行く地道な釣りが功を奏した。黒潮の影響で高めだった海水温が、徐々に下がり始めの兆しを見せる勝山沖。ワッペンサイズも“沸き”出して、今シーズンは良い釣りが期待できそうだ。「海水温が下がると魚が固まって、アタリも活発になって釣り易くなると思う」と船長の見通しも明るい。またこの時期にしてはキモも大きく、脂の乗る冬に比べ旨みが濃く引き締まった味覚も絶品。是非、丁寧に血抜きをしてご賞味頂きたい。
発生から間もなく1ヶ月を迎える台風15号による被害。港も道路も清掃や整備がなされ、地元の方々や近隣ボランティアの努力がひしひしと肌で感じられる。釣りに行く、お店で食事をしたり、お土産を買って帰ることも復興支援に繋がるので、被災地へ遊びに行くことをどうか憚らずに、この秋こそ房総半島へ足を運んで、豊かな実りの季節をお楽しみ頂きたい。
今回利用した釣り船
出船データ
集合時間:午前5時30分(変動あり、予約時に要確認)
出船時間:午前6時
乗合船料金:8,500円(氷付き/エサ別)
※HP割引き1,000円/女性・小中学生割引あり
餌:1,000円(1パック)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他