2019年11月15日公開
マダイをメインターゲットに餌を用いないルアーフィッシング「タイラバ」。この釣りをメインに四季折々の美味しい魚を満喫できる乗合船があると小耳に挟み、静岡県・御前崎港のタイラバ船『波丸』を訪ねた。
行き帰りのドライブも楽しい秋の御前崎港
御前崎港は東名高速道路・相良牧之原ICから走りやすいバイパスで20分程。都心からおよそ3時間のドライブだ。船着場となる集合場所は、カツオのモニュメントがトレードマークの『御前崎魚市場』と、海上保安庁の巡視船との中間辺り(『波丸』HPのアクセスに正確な座標の記載がある)。集合時間の午前6時前に、ヒゲの杉山船長が軽トラックで到着。続いて伊村船長が操船する「波丸」が着岸する。今回乗船した「波丸」は2人の船長が操業する乗合船で、乗下船の手伝いや船上でのアシストも常に2人掛かり。0から始めるビギナーは勿論、ベテラン世代のルアーアングラーにも安心のバックアップ態勢だ。乗船名簿に必要事項を記入、クーラーボックスに氷を詰めたらタックルを積み込み、準備は完了。6時15分には河岸払いとなった。
水深90m、ヘッドは150gからスタート
穏やかな遠州灘を走ること40分弱で釣り場に到着。地形は水深80mの平坦なエリアから10mほど落ち込む溝状帯とのこと。竿入れの7時まで時間があるので、タイラバのセレクトやセッティングは沖に着いてからでも充分間に合う。乗船の一同が風上となる右舷に並んでのドテラ流し(横流し)。潮止まりからの釣りとなったこの日、エソやレンコダイ(キダイ)のアタックはあるのだが、絵になる魚からの魚信は遠い。7時55分、操舵席から胴の間(中央)へ出て、180gのスロージグを落とした伊村船長。ロングフォールを織り交ぜたコンビネーションジャークに待望のヒット!ドラグが歌う猛烈なファイトの末に取り込まれたのは4kgクラスのワラサ(ブリの若魚)。また、流れない潮に業を煮やした杉山船長はトレースライン(ルアーの軌道)を変えるために、反対舷の大ドモ(船尾)から潮下へ60gのタイラバをロングキャスト。有効なレンジ(泳層)を斜めに長く引くアプローチが功を奏して、1kgアップのマダイを取り込んだ。このように、両船長はアングラーとしてもエキスパートなので、釣れない時には糸口となるヒントを捜してくれる。船上で手詰まりになったら、遠慮無く手引きを請うのが得策だろう。
潮が動き出し、魚の活性も上向きに!
「少しは潮の流れがある」と杉山船長が船を立てたのは水深84mのエリア。船中の誰もが、リールを巻く手に伝わる手応えとルアーの泳ぎに、魚の気配を感じ始めていた。これを機にキャスティングからタイラバへルアーを結び変えた櫻井さん(御前崎市)に狙い通りヒット。危なげないファイトの末に取り込まれたのは1kgサイズのマダイ。「いよいよ魚が動き始めたな」と感じたその刹那、トモの松山さん&鈴木さんコンビにダブルヒット!しかも型の良さを伺わせる力強い走りに船上は湧き立った。道糸を巻いては引き出されるファイトの末、先に魚をリフトしていた紅一点・鈴木さんの獲物が目視できた。「いい型のカンパチだ」とまで確認出来たが、その直後の鋭い突っ込みでまさかのラインブレイク。残り30mまで魚を浮かせていた鈴木さんに期待の眼差しは注がれた。ようやく海面を割ったのは80cm・4kg級のコンディションの良いカンパチ。この後、忍耐強くタイラバを巻き続けていた常連の清水さん(春日井市)にも良型のマダイと思しきヒットがあったが、食いが浅かったのか無念のフックアウト。時合いのムードに後ろ髪を引かれながら、沖上がりの13時を迎えた。
船長お薦めの道具立ては?
「波丸」ではタイラバだけでなく、ジギングも同船で楽しめる。この時期にお薦めのタックルを両船長に訊いた。「道糸はPE1.5号以上。細くても1.2号まで。リーダーは5号より上。オレら使ってるのはPE2号にリーダー6号です」とのこと。また、釣れない人やスランプの釣り人へのアドバイスを尋ねると「思ったより早く巻くことかな。食いの悪い魚に合わせるより、ヤル気のある魚を獲った方がイイ」とは伊村船長。魚が大らかな上に、良型のハタや“青物”も食って来るので、真冬の水深100m以深を攻略する時以外は神経質な細糸を使わず、ストロングパターンを貫いて良いフィールドなのだ。かと言って常連や船長らの使っている竿は極々一般的なパワーの物なので、恐らくこの記事をご覧になっている皆さんが普段使っているもので大丈夫。使い慣れた道具に糸だけは太めに巻き替えて、重めのヘッドを1~2個追加しておけば何不自由なく御前崎の釣りを楽しめる筈だ。また初めての方にお薦めの「タイラバ付き貸し竿」も用意されているので、希望の際は予約時に確認を。
釣味と食味で2度美味しい、秋のタイラバ五目!
実釣時間と潮のタイミングが儘ならず釣果としては谷間の日並みに当たってしまった取材日。それでも「大きめのクーラーを持ってきて良かった」という結果に修まったことは特筆だろう。コンパクトな船体に見えて、独立した洋式の水洗トイレや横になって休めるキャビンがあるので、女性や万が一の船酔いにも安心。釣れた魚は船長が真っ先に血抜きや神経締めまでしてくれるので美味しく持ち帰ることが出来る。小生は初めての乗船だったのだが、不思議と友だちのボートに乗せて貰っているような親近感を覚える御前崎港「波丸」。ビギナーからベテランまで、安心してお薦めできるタイラバ船だ。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他