2020年11月04日公開
激動の2020年。上を向いて歩きにくい日々が続く中、下を向いても良いことがあった。その視線の先には”穂先”と”海”。大阪湾のタチウオが連日“束釣り”しているという情報を聞きつけ、泉佐野市・北中通漁港に拠点を置く『上丸』に出掛けた。
”テンヤ・タチウオ”の大会予選に同乗
この日は大阪湾で開催されている『大阪湾タチウオKINGバトル』予選会の日。天候も良く、良いナギとなったこの日の港は賑わっていた。港の開門は午前5時。5時過ぎに到着した私は粛々と行われる受け付けを見守る形で最後に乗船。5時50分、「上丸」は静かに出船した。
ルールはタチウオの総匹数!
1時間弱でポイントに到着。場所は洲本沖、『上丸』ではお馴染みの大阪湾南エリアだ。そこには既に大きな船団が出来ており、最近の好調ぶりが伺える。ちなみに大会ルールだが、勝敗はタチウオの総匹数。テンヤは船上に3本まで、残りのテンヤは道具入れにしまっておく事。餌の持ち込みは可能だが、『上丸』からもイワシを支給してくれる為、餌を締めたりする加工材の持ち込みも多く見られた。各自がスタンバイ状態の中、午前7時に佳世船長のアナウンスで競技開始。納竿(競技終了)時刻は13時だ。
開始早々、ラッシュタイム!!
水深は100m前後。反応は75mラインで出ている。開始早々船内あちらこちらで竿が曲がった。連日の好釣果は伊達ではなさそう。このラッシュはいつまで続くのか…私も撮影チャンスを逃すまいと船内ひっきりなしに動き回りたいところだが、佳世船長に聞くと「結構なガチ大会ですよ」と言う。ひとまず私は2階部分となる船上デッキから静かにカメラを回した。
アタリ止まらず!!
アタリは止まらず、船上ではタチウオが乱舞状態。デッキからの撮影で充分なところだが、それでは取材にならない。暫くタチウオを釣れば、釣り人の気持ちも落ち着くだろうと計算したがアタリは止まず、全員が“竿頭”となって予選を通過しようと意識している状態。予選通過者は1人のみ。私はタイミングを見計ってミヨシ(船首)に出てみた。そこに広がる光景は、まさに競技会。ミヨシで竿を出している釣り人は手巻きが中心だったが、電動リールを使用している釣り人と遜色ない手返しをしている。というより、敢えて手巻きをチョイスしているようだ。そこに居た船長も動き回らずじっとしている。無用な移動は競技の邪魔をしかねないと配慮しているようだ。私も無用なプレッシャーを与えぬよう、見守りスタイルの取材に決めた。いつも周りを楽しませてくれる村上利行船長も言葉数が少ない。また手返しも手際良く、タチウオを抜き上げ、テンヤに付いているイワシが無傷であれば先に仕掛けを投入し、テンヤを落とし込んでいる間に釣り上げたタチウオをクーラーボックスに入れるという一連の動作はそれなりにやり込まないと出来ないだろう。この動作を無闇に行えば、それはオマツリへと繋がり、結果的に釣果を落とす事になるだけではなく、周りにも迷惑をかけてしまうので気をつけたいところ。私も迷惑にならぬよう、トイレも兼ねてトモ(船尾)に移動した。トモでも順調に釣れていたが、予選突破というより、スキルアップするべく無言でテンヤを投入していた女性の釣り姿が印象的だった。
折り返しを過ぎ、釣果に差…しかし!!
どの釣り人のクーラーも開けると眩いばかりの鏡張り状態。トモでの撮影を済ませデッキに戻り、少し早めの休憩をとった。大阪湾を一望出来る環境でおにぎりを頬張る。なんとも言えない至福のひと時である。眼下となる左右胴の間(中央部)では、竿が曲がりっぱなしだったが、休憩を終える頃にアタリが遠のいてきた。この時まではどの誘いが良いのか全く分からなかったが、スタートからずっと”デジ巻き”のような誘い方で釣っている釣り人のヒット率は落ちていなかった。竿は海と並行のまま、リールだけを2回転ほど機械的に巻いてステイすれば…普通のアタリの他、食い上げアタリも混じっていた。両隣の釣り人が1匹釣る間に3匹釣るという感じの差。ただこれだけが正解ではないようで、繊細なアタリを取れる人も順調に数を伸ばしていた。それよりも注意しなければならなかったのはトラブルであり、オマツリの他、竿やリールのトラブルでロスタイムが発生すると、確実に差が開いていった。しかし、釣り人のモチベーションが落ちる事はなく、皆が黙々と釣りをしている。この日は大漁による早上がりも出来ない予選会。予選通過はならずとも、自己記録を更新出来る良い機会となっていた。
【動画】アツイ戦い!大阪湾タチウオKINGバトル(予選)
競技会に出るメリット
終わってみれば、最後の1投まで竿が曲がったこの日、“束釣り”達成者は4名。競技終了直後の船内は疲労困憊という言葉に尽きたが、村上船長曰く「ここまで来たら、修行やな」と笑みを浮かべた。予選通過ならずとも、自己記録を更新した釣り人もそれなりに居たはず。競技ばかりが全てではないだろうが、競技会で培った緊張感・集中力は、普段の釣りにおいても一瞬の時合いをモノにする事が出来るだろう。この日の「上丸」は120匹がボーダーライン。競技時間・6時間という中で、3分に1匹のペース。見事予選を勝ち上がった櫻井さん(巻頭写真)と次点の釣り人との差は僅か数匹。些細なトラブルが敗因となってしまうという見応えのある予選会だった。釣れている時にいろいろ試すのも良し、のんびり楽しむのも良し、今年の大阪湾タチウオはストレス発散にもってこいのターゲットだ。
今回利用した釣り船
出船データ
車は阪神高速4号湾岸線泉佐野北IC降りて、住吉町の信号を右折、すぐの信号を左折。右手に「おさかなはうす」を越してすぐに乗船場入口がある。 電車は南海本線「井原里駅」より泉佐野食品コンビナートに向かい、突きあたりを左折。右手に「おさかなはうす」を越してすぐに乗船場入口がある。
(出船データ)
完全予約制
乗合船タチウオ1日便1万円。餌・氷付き
女性・子供は2,000円引き
ポイントカード有り
レンタルタックル有り
無料駐車スペース有り
チャーター便も有り。要問い合わせ