2021年04月15日公開
週末になると風が吹いて船が出ないこの季節。これから釣りを始めたい人は勿論、磯釣りや船釣りを楽しんで来たベテランでもハマるという「海上釣り堀」をご存じだろうか。ロケーションも、魚のクオリティも、アクセスも良い施設があると聞き、静岡県・沼津、足保港の『海上つり堀まるや』を訪ねた。
都心から2時間、意外と近い沼津足保港!
「海上つり堀まるや」は富士山の見おろす沼津足保港にある。新東名高速道路・長泉沼津ICからでも東名高速・沼津ICからでも、伊豆縦貫自動車道(無料区間)経由で50分程走れば到着する。県道17号線から足保港へ入る道は「内浦漁業協同組合 足保管理事務局」と書かれた棟を目印にすると分かり易いだろう。初めての際は『海上つり堀まるや』HPの「交通のご案内」やGoogleマップのストリートビューを事前に確認しておけば間違いない。午前7時前になるとスタッフが駐車場の案内を始め、窓口がオープンしたら、“乗船名簿”の記入や支払いを済ませる。この際に貸し竿や仕掛け、餌の購入をするのだが、初めての利用ならその旨を伝えておけば、スタッフがほぼマンツーマンで面倒を見てくれる。仕掛けや餌のセレクトはこの釣り独自のものなので、まずはスタッフにお任せするのが最初の1匹への近道だ。ちなみに魚を持ち帰るクーラーボックス(発泡スチロール箱)は帰港後、釣果に合わせて購入出来る。
いよいよ筏(いかだ)へ出船!
釣り場となるイケスは海上にあるので漁船で移動する。渡るイケス毎の案内となるので、名前を呼ばれたら道具を持って乗船する。この際、船が岸壁に横付けされるので、乗降は楽チン。初めての際は、先を譲って乗り方を見習うのがお薦め。航行5分程で海上に浮かぶ筏へ到着。船頭から合図があるまで不用意に立ち上がったり筏へ乗り移ったりは禁物だ。釣り座は船頭の指示に従い、置かれたスカリ(釣った魚を入れて水中で活かしておく網袋)の番号で確認しよう。ここのイケスは工夫を凝らした特製の筏で、船からの乗降がし易く、海中の囲いが金網製で潮流によって変形せず、どの釣り座に入っても釣り易い。準備が出来たらおよそ5時間が釣り放題。ルールを守って存分に大物釣りを楽しもう。
「海上釣り堀」とは?
ここで、関東ではまだあまり馴染みのない「海上釣り堀」について説明しよう。海上釣り堀は海に浮かぶ10m四方の筏に乗って、筏の内側に張られた網の中に放された様々な魚を釣って楽しむレジャー施設。内湾のため沖合に出る釣り船より揺れず、外側には柵のある足場は幅1.5m。広々とした個室トイレもあり、子どもや女性アングラーも安心。海岸が近くに見えるのも、小さなお子さんにとっては心強いはずだ。『海上つり堀まるや』では、通常13時25分に来る迎えの船を、電話連絡で12時に来て貰う“早上がり”のサービスも用意されている。乗り合いの場合、1筏8名が上限とされているのでソーシャルディスタンスは万全。10万5,000円で1筏を貸し切る事も出来るので、会社勤めの釣り師あるある「今度、釣り連れてってくださいよ~」と頼まれて幹事になった場合にも持って来いだ。
釣れる魚は全部“高級魚”、しかもデカい!
今回取材したのは富士山側にある1号筏。この釣り堀では常連の東條ご夫妻と小峯ご夫妻の4人の釣りを見せて貰った。開始早々、竿を曲げたのは東條さんご亭主。取り込まれたのは「北の鯛」とも呼ばれ、煮物にすると美味しいクロソイ。この後も立て続けにソイが上がり、写真を撮らせて貰うと皆さんちょっと苦笑い(その理由はやがて明らかになる)。この後、小峯さん奥様の竿が引き絞られ、海面を割ったのは3kgに迫る良型のマダイ。この魚を先頭にみなさんの仕掛けに2.5~3.5kgの良型マダイがアタり始めた。イケスに放された魚を釣るこの釣りだが、船や磯釣りと同様に“時合い”があり、日照や潮によって釣れる魚種が移り変わり、餌や仕掛け、餌を打ち込む場所を切り替えることによって釣果は変わってくる。「イケスに放した魚を釣るなんて、絶対ハマらないと思ってた」と語る東條さん夫妻は、永らく乗合船での釣りをしてきたが、海上釣り堀の楽しさに触れてすっかり虜となったとのこと。確かにミステリーを読み解くようなこの釣りは面白く、どっぷりハマる釣り師が居るのも頷ける。
釣って楽しく、食べて美味しい獲物たち
この後、ハリに掛かったマダイを追って乱舞するワラサが目視されるようになり、活き餌や冷凍イワシを餌にすることで5kgアップの丸々としたワラサが釣り上げられた。道糸を引き出し、縦横に走り回る“青物(ワラサ/カンパチ/シマアジなど)”を掛けたら直ぐにそれを宣告して、ファイトしていない釣り人たちは一旦仕掛けを上げてオマツリを防止するのが、ここのお約束。タモ入れを手伝ったり、活性の上がった魚たちへの次の投入に備えよう。“青物”と一口に言ってもワラサとシマアジでは餌もアタリの出方も異なるので、常連さんたちはウキや竿のタイプも交換する。釣れる魚の釣り味の良さ、食味の良さに加え、このパズルのような釣趣が、釣り堀ファンを惹きつける要因のひとつと言えるだろう。ちなみに、小峯夫妻が持ち込んだ餌は、身餌、練り餌、活き餌、虫餌を合わせて20種類以上。「持ってこないと後悔するから……」とのことだったが、この研究と努力が釣果にコミットすることは見逃せない。
「手ぶらでOK!財布は持って来てね」
海上釣り堀を快適に楽しむポイントを菊地賢弥専務に訊いた。「見ててこれどうかなと思うのは服装だね。晴れの予報なら運動靴でもイイんだけど、雨降った時用に長靴はあった方がイイね。海の上は風があるから思ったより寒いんだよね。風を通さないものがあると便利」とのこと。いつもの生活より1枚多めに着て丁度良い、と言ったところか。「あとこれからのシーズンは水分」とのことで、これも多めに持って来る分に超したことはない。夏場は1人2Lが目安。「釣りについては、特に……(笑)。初めての人には、最初あぁやってスタッフが付くから。レンタルの道具は全部の魚が釣れるようになってるし、活餌の仕掛けも付いてるから心配無く」と心強い。特注の貸し竿とオリジナル仕掛けは、全国の海上釣り堀を見学して回ったノウハウの賜物。当然ながらこの筏に合わせたタックルなので、まずはここから始めるのが無難かと思われる。常連さん達は船釣りのヒラメ竿やワラサ竿にスピニングリールを付けたり、LT用の道具立てを流用している。オフショアルアーのシイラやヒラマサ用キャスティングタックル(8ft前後)も適合するだろう。ヒラマサ用の磯竿等も流用出来そうだが、振り出し竿は折れ易く、竿もハリスも長過ぎると釣りにならないので要注意だ。
ビギナーにもマニアにも、海上釣り堀の新提案!
食いの落ち着く時間帯もあったものの、好調に釣れ続けた取材日。この日の竿頭は撮影に協力くださった小峯夫妻。釣果は2人でマダイが12匹、最大3.5kg。ワラサは5.5㎏を頭に12匹。2kgクラスのシマアジ1匹とクロソイ4匹。総重量100kg超えという驚きの大爆釣。特筆はスペシャルな飼料と富士山麓の磨かれた水で育った魚たちの美味しいこと!考えてみれば高級店で提供される松阪牛もウナギもみんな養殖。釣り物の美味を知っている方々にこそ、現代の最新技術が育んだバランスの良い安全な魚を吟味して欲しい。道具の後片付けも魚の理想的な下処理もお任せの海上釣り堀という選択。これから釣りを始めたい方やファミリーのレジャーフィッシングには勿論、沖釣りや磯釣りをやり込んだベテラン層、引退を考えているシルバー層にもお薦めしたい新提案だ。
今回利用した釣り船
出船データ
<利用料>※完全予約制
“乗合”料金:1万2,700円(餌・氷別)
(こども:6,000円/渡船のみ:3,000円)
貸し竿:2,000円
集合時間:午前7:00
出船時間:午前8:00(帰港13:30頃)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他