2021年11月15日公開
食べて美味しく、釣っても楽しそうだが、どうにもタックルが高価で手を出せない釣り物というのがある。川ならアユ、海ではキンメダイがその代表格。そんな“高嶺の花”が道具も仕掛けも全てお任せの船宿があると聞き、静岡県・下田須崎港『番匠高宮丸』に出掛けた。
紅葉の伊豆半島をのんびりドライブ
下田須崎港は、新東名高速・長泉沼津ICから2時間弱。往復の紅葉に色付いた山道と景観の良い海岸通りのドライブも楽しみのひとつ。カーナビには「須崎ダイビングセンター(静岡県下田市須崎 西が丘1799-1)」を入力すると、道路から乗船場所へ降りるスロープが見つけやすい。その300m程手前、須崎港へ出る直前に『番匠高宮丸』の看板を掲げた“待合所”があるので、入って左手にある黒板で釣り座の確認をしてから船着場へ向かう。集合時間になると船宿の軽トラが到着し、明るい荷台で乗船名簿を記入、氷をクーラーに入れる。やがて船が岸壁に横付けされ、船長の指示に従って乗船となる。かくして準備は滞りなく整い、午前4時13分「第八番匠高宮丸」は夜明け前の海へと出船した。
竿入れからアタリ続々!
沿岸は穏やかだが、沖合には大きなウネリが渡る海を走ること1時間余り。曙光の立つ新島沖に到着。船長より「準備してください」のアナウンスがあり、釣り人たちは治具(ジグ)の仕掛けに鉄筋オモリと道糸のスナップを繋ぎ、投入の合図を待つ。空が明るくなる頃、「いいよ~、どうぞ~!」の合図でミヨシ(船首)から仕掛けを投入。30mの仕掛けが治具から放たれ、リールのクラッチを切るタイミングで、次にお隣の釣り人が投入、となる。深場の釣りに慣れない内はこの投入が緊張とプレッシャーの瞬間となるが、船宿HPに動画付きで分かり易い解説があるので、初めての際には要チェック。「着底したら糸フケ取って底ダナに合わせるようにやってください」等々、釣り場の地形や流し方によって船長から釣り方の指示があるので、聴き逃さないよう注意を。間もなくあちらこちらの釣り座で竿先にアタリが出始め、スプールを押さえながら糸を送って追い食いを待つ。やがて流しによって決まった糸の長さでクラッチを入れる(糸の出を停める)よう船長から指示があり、ミヨシから巻き上げの合図が出る。これも投入と同様、30mほど巻いたら隣の釣り人が巻き上げをスタートするよう声を掛け合って回収する。やがて海面を割ったのは“本命”のキンメダイ。水圧変化に強く取り込みの海面でも元気に暴れるため、お隣の釣り師がタモ入れのアシストをする。ズラズラ釣れる派手さこそ無いものの、複数の釣り人が早々に“本命”をキャッチする幸先の良いスタートを切った。
「ビギナーにも安心、お勧め」のエビデンス
動画をご覧頂くと、釣り人同士が声を掛け合ったり、手伝ったりしているのに気付かれると思う。オールレンタルといったビギナーもチャレンジし易いサービスを提供している点も目を引くが、乗り合いで同船したビギナーや初乗船の釣り師に対し、周囲の常連さんがサポートしたり、質問しやすい雰囲気がそこかしこに感じられた。この点は『番匠高宮丸』の風潮で、小澤船長も「チームワークで釣る」をモットーとしている。こうした不文律が、本格的な深場釣りの敷居の高さを緩和し、間口を広めているように感じられた。オマツリも不可避な深場釣りのうえに、獲物を横取りするイルカが現れたり、電動リールの不調などタックルのトラブルも少なくないこの釣りだけに、この気配りと寛容な心掛けは学びたいところだ。
船長に訊く、キンメダイ釣りのコツ
「1日10匹を目標にして釣って欲しい。それで20匹、30匹釣れる時もあるんだけど」と魚の数より1匹の価値に重きを置く小澤長夫船長に、キンメダイ釣りのコツを訊いた。「気楽に来てください、ってカンジかな。女の人も結構来てるし、ハードルは高くないから。ただ、魚が簡単に食うのが前提の昔の感覚と全然違うから、無駄なモノは取った方がイイ。ヨリトリリングは潮の変化とかに負けちゃうから付け無い方がイイ。食ってからのことより、食う前のことを考えて」と言う、そして「釣り方はポイント、ポイントで変わってくるし、潮のタイミングや風でも変わってくるからね」とのこと。投入後にどのような糸の出し方をするか、着底後はどう釣るかをアナウンスしてくれる。ビギナーへのアドバイスを尋ねると「ウチのお客さんはみんな教えてくれるから、大丈夫」と船長も太鼓判。初挑戦の際は、乗船時にその旨を近隣の釣り師に伝えて置いて、解らないことがあったら臆せず尋ねたり、釣り方を見倣うのが得策だ。
【動画】番匠高宮丸・静岡県南伊豆下田須崎・キンメダイ
憧れの本格キンメ釣りがぐっと身近に!
高いウネリと速い潮、おまけに獲物を横取りするイルカにも目を付けられて難しい展開となった取材日。それでも粘り強く、口を使うチャンスタイムに着実に魚を取り込んだミヨシの進藤さん、胴の間(中央)の小日向さんが5匹を獲って竿頭。残念ながら釣果0の釣り師も出てしまったが、そこは同船の方々が釣果を分けあってみなさん笑顔の帰港となった。難しい日並みとは言え食いの立つタイミングには多点掛けや複数の釣り師の竿が曲がり、魚影の濃さは推し量られた。釣れるサイズは押し並べて良いので、クーラー満タンの映え画像は、是非みなさんの釣行で実現して頂きたい。例年ほど釣りに出られなかった2021年。プチ遠征で温泉や紅葉を楽しみながら、収穫の秋を是非お楽しみ頂きたい!
今回利用した釣り船
出船データ
午前4時集合(※集まり次第出船、時間は予約時に確認)
乗船料金:2万1,000円~(氷付き)
オモリ:1本220円/仕掛け:1,100円~
(乗船料金はプランにより異なるので、詳しくは船宿HPを参照)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他