2022年06月03日公開
早くも夏日が記録される今日この頃。ヒラマサのキャッチ率が高い好機“春マサ”シーズンもいよいよラストスパート。今季も千葉県・外房の伝統釣法「カモシ釣り」でコンスタントに釣れているとの噂を聴き付け、御宿岩和田港『太平丸』へ出掛けた。
集合時間には出船準備完了の手際良さ
童謡「月の沙漠」発祥の地、千葉県・外房の御宿海岸に隣接する岩和田港に「太平丸」は停泊している。カーナビには「専修大学 御宿セミナーハウス(千葉県夷隅郡御宿町岩和田706-1)」と入力すると、右手に漁港の入口が見つけやすい。集合は午前5時とのことだったが、4時過ぎには駐車スペースの突堤に太公望の車が集い、釣り談義に花を咲かせていた。釣り座は先着順だが、片舷5人の計10人で満船のカモシ乗合船。釣り人同士の談合で穏やかに振り分けて荷物を積み込んでいた。4時半に船長と女将が軽トラックで到着。釣り座に回ってくる乗船名簿に記入している間にコマセバケツや付け餌、氷が配布され、手際良く出船準備は整った。午前5時15分、女将さんの「行ってらっしゃい」に送られて「太平丸」は朝陽を背に出船した。
「カモシ釣り」とは…
外房の勝浦~御宿エリアの伝統釣法である「カモシ釣り」。マダイとヒラマサがメインターゲットとなるが、中でも大型の個体を狙う釣法である。ご存じ無い方へ向けざっくりご紹介しよう。
マキ餌を撒くことを指す「かもす」を語源に持つカモシ釣りは独特のタックルを使用する。まず道糸がナイロンラインであること。これに5尋(約7.5m/1尋=1.5m)毎の目印を付けた専用糸が用いられる。伸びのあるナイロンラインは急激な引き込みでラインブレイクし難いだけでなく、魚を無駄に暴れさせないというメリットも。また、遊動式のテンビンに靴下のような木綿のカモシ袋(コマセ袋)とオモリ。強力なクッションゴムに、対象魚ごと長さや太さの異なるハリスを介して釣バリを結ぶ。
専用のポンプを用いてカモシ袋に充填
コマセは海水で緩いカレー様に伸ばしたサンマミンチで、専用のポンプを用いてカモシ袋に充填する。付け餌はぶつ切りのサンマが配布され、これの中骨を取り除いて短冊形に開いたものを使用。ヒラマサには特餌としてヒイカやイカゲソを持参する釣り師も多い。最近ではPEラインと電動リールの道具立てを紹介するメディアもあるが、伝統釣法で釣ろうという乗合船にわざわざ周囲の釣り師と違うタックルで臨む利点は感じられず、オマツリの原因となることも否めない。専用の道具が無いのなら、テンビンやカモシ袋まで付いた貸し竿(無料)を使うのが何より得策だ。
釣れ出すと立て続けに竿が曲がる!
穏やかな海を走ること30分程で勝浦沖の水深50m前後の釣り場に到着。船長から支度をするようアナウンスがあり、冷凍サンマミンチに海水を注ぎコマセを調合する。「ハイ良いですよ、15でやって。メーター22.5!」の合図でスタート。「15」とは15尋(=22.5m)のことで、この指示ダナよりハリス+クッション分(ヒラマサの場合は5尋程度)多く沈め、仕掛けが馴染むのを待ってコマセを振りながら指示ダナに合わせる。靴下のようなカモシ袋からコマセを振り出すには、まず竿先を海面から頭上へ大きく振り上げてから、再び竿先を海面へ振り下ろす事によってカモシ袋を反転させ、その中身を撒く(醸す)仕組みとなっている。詳しくは動画をご覧頂きたい。
初夏の陽射しを浴びて輝く魚体
いつの間にか船団が出来、最初の魚が取り込まれたのは45分後。右舷胴の間(中央)の島崎さんが「何かヘンだな」くらいの感覚で巻き上げて大人しく上がってきたのは2kg弱のヒラマサ。難なくキャッチした“本命”に本人も戸惑い気味。それから間もなく左舷トモ(船尾)の橋本さんに痛烈なヒット。竿を引き絞るファイトの末に玉網に収まったのはこの日のアベレージサイズとなる65cm級(2.3kg)のヒラマサ。同時に何人かの竿も曲がったが、オマツリやファイト中のフックオフで獲り逃したものの、時合いに於いてのアタリの多さは特筆。この後も船中の誰かにアタリがあると、途端にあちらこちらの釣り座で竿先が引き込まれる場面が幾度もあり、この海域の魚影の濃さには驚かされた。
【動画】太平丸・千葉県御宿岩和田港・カモシ釣り
船長に訊く、カモシ釣りのアドバイス
大野利広船長にカモシ釣りのコツを訊いた。「タナと、コマセの入れ替えくらいだと思う。あとはコマセの出具合かな、袋で」と船長。指示ダナは魚群探知機の反応によって意外と変動するので、船長のアナウンスを聴き逃さないよう注意を。道糸の目印の読み方やコマセの振り方など、分からないことは一人で頑張り過ぎずに船長に尋ねるのが得策だ。ビギナーへのアドバイスを尋ねると「取りあえずはホラ、貸し竿はテンビンまで無料で貸してるから、あとはハリスとゴム(クッション)だけ用意してくれれば」とのこと。ハリスは対象魚の大きさによって、この時期のヒラマサは6号から8号を4尋から5尋。マダイが多い時は6号6尋と変えていく。また、乗っ込み期はマダイを狙って細いハリスを用いた結果、大きなヒラマサを獲り逃す釣り師も多いとのこと。大物に狙いを絞った伝統釣法だけに、強気のチョイスを心掛けたい。
今シーズンは数多く期待大!
かくして、この日の釣果はヒラマサが2.9kgを頭に0~2匹。惜しくもヒラマサを獲り逃した釣り師も仕掛けを付け変えて手堅くマダイやイサキを釣り、笑顔の沖上がりとなった。「型は小振りなんだけどね、数は出てるから」と船長も太鼓判のカモシ釣りで楽しむヒラマサ。夏から秋の大物シーズンを前に、入門に最適なこのタイミングをお見逃しなく!
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他