2022年06月28日公開
釣り味は勿論、食味にも定評のある千葉県・千倉沖のマダイ。例年より遅れ気味だった乗っ込みも落ち着き、梅雨の風物詩・イサキをはじめ様々な魚種の“五目”釣りが楽しめるとの知らせを受け、千倉白間津港『松大丸』に出掛けた。
午前4時30分、駐車場に集合
「松大丸」が発着する白間津港は『南房千倉大橋公園』に隣接する静かな漁港。集合場所となる釣客専用駐車場は、はす向かいにある『東安房漁協七浦出張所』 (千葉県南房総市千倉町白間津838-1)をナビに入力すると分かり易い。集合時間になると、船長が軽トラで乗り付け、クーラーやバッカンなどの荷物を船着場まで運んでくれる。釣り人たちは釣り竿だけを持って、港を半周する形で乗船場所まで徒歩3分。到着すると船の釣り座には氷やコマセ、魚桶が既にセットされているので、乗船予約の際に指定した席に道具を運び込む。手指の消毒や検温、乗船名簿の記入をして出船準備は滞りなく完了。定刻よりちょっと早めの午前4時55分、「第十一松大丸」は出船した。
船中一番手は○○アジ!?
天気予報に反して未明まで吹き荒れた南風の影響で、大きなウネリの残る海をゆっくり走ること10分程で最初の釣り場に到着。シマアジが期待される大場所ゆえ、皆さんハリス6号6m前後と太めの短い仕掛けで挑んだ。水深20mで底から10mを探るシャクリ釣り。最初に竿を曲げたのは3本バリに仕掛けを変えた右舷ミヨシ(船首)の中村さん。取り込まれたのは型の良い外洋性のマアジ(クロアジ、ノドグロアジ等とも呼ばれる)。狙いのシマアジには一文字足りなかったが、ひとまず魚の顔を見て一安心。
マダイ釣り場で“五目”釣りを満喫
この後、早々にシマアジを見切った船長はマダイの釣り場へサイドチェンジ。ここではコロコロとした抱卵イサキから釣れ始め、アッという間に船中オデコ(0匹)無しの全員釣果。3本バリのイサキ専用仕掛けを使えばバリバリ釣れそうな雰囲気だが、ここは“マダイ五目”。指示ダナを一本バリでじっくり攻めると間もなく、左舷ミヨシの渡部さんの竿先が海中に突き刺さった。胴調子の長竿を大いに曲げて取り込まれたのは40cm、1kg級のマダイ。この後もイサキを中心に良型アジやゴマサバ、時折竿を絞り込むメジナなど様々な旬の魚たちで船上は賑わい、文字通りの“五目”釣りを楽しんだ。
“マダイ五目”の美味しい魚図鑑
マダイの仕掛けで様々な魚種を狙って楽しむ“マダイ五目”。メインターゲットのマダイは勿論、初夏から梅雨時に旬を迎える“美味しい対象魚”をご紹介。
筆頭は梅雨に産卵期を迎えるイサキ。刺し身でも煮ても焼いても美味しい魚だが『松大丸』女将のお勧めは“なめろう”と“フライ”。アジとはひと味違う美味しさは特筆だ。また、この海域ではこの時期に産卵期を迎えるゴマサバとアジ。白子や真子を持っていても身には程よい脂質があり大変美味。この釣りでは押し並べて良型が上がるので釣り味も素晴らしい。
磯釣りでは上物の花形として人気のメジナは、沖釣り師に敬遠されがちだが、沖で釣れる個体は磯臭くなく、特にこの時期の白子や真子は珍味。ネットの情報を鵜呑みにせず、まずはウロコやヌルを丁寧に除去して、清潔なまな板で調理することをお薦めしたい。刺し身を青唐辛子醤油に漬けた“べっ甲漬け”にすると爽快な風味で食が進み、暑い盛りのスタミナ補給にぴったり。是非お試し頂きたい。
船長に訊く、“マダイ五目”のコツ
山口一夫船長に“マダイ五目”のコツを訊いた。「まぁ、タイはタナを守って貰えれば、巧くすれば喰うし、こればかりは運もありますし」と船長。仕掛けについては「お客さんに任せている」とのことで、餌についても「餌盗りの多い時はイカを持って来る人も居ますし、お任せしています」とのこと。船長がアナウンスする指示ダナにビシの水深さえ合わせていれば、ハリ数やハリスの長さは釣り師の技量と発想に委ねられているので、仕掛図はこの日船中1匹目のマダイを釣った渡部さんの仕掛けを掲載しておく。ハリスの中程にスイベルを介して太さの違う糸を用いる“テーパー仕掛け”は、そのタイミングに見込まれる対象魚に合わせてアレンジし易く、痛みやすい先端部分(ハリ付近)のみを交換できるメリットがあるので、各自工夫を試みて頂きたい。
【動画】松大丸・千葉県千倉白間津港・マダイ五目
釣って楽しく食べて美味しい、ビギナーにもお勧め!
かくして、この日の竿頭は1kgのマダイを頭に2匹を獲り、様々な魚種を取り込んだ渡部さん。「潮に濁りがあるからね、これからも喰ってくると思います」と船長も太鼓判の“マダイ五目”。この日は前夜の南風によるウネリと海水温低下で喰い渋ったが、港と釣り場も近く、指示ダナで釣ることと扱える範囲内のハリス長で臨めばビギナーにも決して難しくない。貸し竿や電動リールのバッテリーのレンタルもあり、常連さん達も気さくで親しみ易い。感染予防対策とまめな水分補給を忘れずに、多彩な魚種のファイトと味覚に出逢う釣行をお楽しみ頂きたい。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他