2022年07月13日公開
千葉県・片貝沖のヒラメ釣りには、7、8月の海域を限定した「限定解禁」と9月の「全面解禁」で合計3回の“解禁”がある。今シーズンの外房ヒラメの模様を占うべく、解禁日の7月1日に片貝港『勇幸丸』を訪ねた。
夜霧の片貝港に集合
片貝港は九十九里浜のほぼ中央。東金ICから30分程。東金九十九里道路・片貝ICからは2分程とアクセス良好。港の入口は常夜灯の点いた電話ボックスがあり目印になる。「勇幸丸」は岸壁に横付けされているので、その付近に車を停め、船縁に竿を立てて釣り座を確保する。午前3時過ぎには、船長や上乗りさんが来て船に明かりが灯るので、それまで近くのコンビニへ買い物に行く釣り人も多い。車から船までが近いので積み降ろしは楽々。乗船名簿を記入してクーラーに氷を入れ、集合時間の4時には予約者全員が乗船済みの手際の良さ。餌の活きイワシも搬入され、出船準備は滞りなく完了。空の白み始める午前4時5分、深い霧の中「第二勇幸丸」は出船した。
竿入れ間もなくアタリが!!
船長から沖出し中の注意や案内がアナウンスがあり、穏やかな海を走ること40分程で片貝北沖の釣り場に到着。上乗りさんと船長によって餌の活きイワシが各釣り座に配られ、竿入れ時間の5時を待つ。「時間になりましたんで始めてみましょう」のアナウンスを合図にスタート。船を流す方向や地形に関する丁寧な説明が船長からあり、漁礁周りの釣り場ゆえ、アタリと根掛かりを間違えて送り込まないようアドバイスがあった。オモリが着底し、底を切ると間もなく竿先に魚信を捉えたのは右舷ミヨシ(船首)の岡部さん。落ち着いた合わせとやり取りで、危なげなく玉網に収まったのは1kg強のヒラメ。それと同時に反対舷でもヒット。こちらは1.5kg級のナイスキーパーサイズ。解禁日らしい好調な滑り出しに、船中の期待は高まった!
食い渋るも手が合う釣り人は着実に釣果を重ね…
竿入れ直後のバイトラッシュで3匹が取り込まれたが、その後が続かない。原因は道糸に付着する“ヌタ”(プランクトンの死骸)。これが道糸に付くとたちまち感度が落ちてしまうのみならず、昨今のマイクロガイドの竿などはガイドが詰まってリールが巻けなくなってしまう。船長はこうした浮遊物のない釣り場を捜してトライするのだが魚の活性は低く、解禁日とは言えヒラメを手にするのは容易くなかった。ところが、用心して竿先を見ているとアタリは小さいものの口を使ってくる魚は決して少なくなく、餌の在処をアピールしたり、竿先を聴き上げながらアタリを出す工夫をすると確実に釣果に繋がった。しかも釣れて来る魚は押し並べて身の厚い、コンディションの良い個体ばかり。こうして手の合う釣り人は着実に釣果を伸ばしていった。
美味しい“ゲスト・フィッシュ”図鑑
夏のヒラメ釣りは、釣れて来るヒラメ以外の魚種も楽しみの一つ。取材日に釣れた美味しい“ゲスト・フィッシュ”をご紹介しよう。
マハタは外房のヒラメ釣りでは定番の嬉しい“ゲスト”。ヒラメ同様細かいウロコは金属タワシを使うと頑固なヌルと一緒に落としやすい。エラと内臓を取り除いた状態でチルドルームに入れて何日か熟成させるのが美味しく食べるコツ。
ウッカリカサゴ(カンコ)もこの日、根周りで良く釣れた。煮付けて美味しい魚だが、血合骨のない部位は湯引きにしたり炙り刺しにすると非常に美味。この魚も釣ってから一晩以上寝かせるのがお勧めだ。
また、この日はマサバも上がったのだが、活イワシに口を使う個体だけに大きく丸々としている。きっちり氷漬けにして鮮度を保った持ち帰りを心掛けたい。
今期はこの他にもワラサやイシナギも釣れている。食味と釣味共に楽しみだ。
また、一部で「夏のヒラメは猫またぎ」などと仰る“通人”がいらっしゃるようだが、この時期のヒラメには“寒ビラメ”にない引き締まった味わいがある。特にこの海域は身の厚い個体が多く縁側もしっかりしているので、是非、“夏ビラメ”の味覚をご自身の舌で確かめて頂きたい。
船長に訊く、ヒラメ釣りあれこれ
市東吉雄船長に、これからヒラメ釣りを始めたい方々へのアドバイスを訊いた。「アドバイスですか。そんなに難しいもんでもないので気楽に来て頂ければと思います。釣り易い季節ではあるので、始めるなら今が面白いと思います」とのこと。上乗りさんも親切でフレンドリーなので、分からないことがあればまずは気兼ねなく尋ねるのが得策だろう。また、出船前から帰路につくまで、船長の声掛けが非常に親切で事細かなのが印象的。今は何待ちのタイミングなのか、海底はどうなっているのか、出船前、係留時の声掛けも一つひとつが適切かつ聴き取り易いので、乗合船に不慣れなビギナーにも安心してお薦めしたい。特に漁礁に差し掛かった際などの“流し方の解説”は感心しきり。腕に覚えのあるアングラーは「釣った」に繋がる一歩踏み込んだ攻略が可能になる筈だ。
【動画】勇幸丸・千葉県片貝港・ヒラメ
取材後日に4.5kgの“大判”、大物はまだ居る!
かくして、この日の竿頭は6匹を獲った常連の岡部さん。食い渋りの中、3mのグラスロッドを用いたノーマルタックルで大健闘。「ハリスを短くしてアタリを取り易くした。グッてなるだけのアタリは多かった。魚は多いんじゃないかな」と岡部さん。取材後日の7月3日には4.5kgの“大判”も上げた「勇幸丸」。まだまだ大物は居る筈なので、感染予防対策とマメな水分補給を万全に、片貝沖の夏ヒラメを是非お楽しみ頂きたい。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他