2022年09月29日公開
我が国で最も有名な魚種は、何と言っても「鯛」だろう。「そんな“鯛”でも、釣ったことある人は日本中でもほんの一握り」と語る船長が、「必ずその一人になれる」と豪語するこの時期の「一つテンヤマダイ」。千葉県・外房、大原港『新幸丸』から、ゲーム性が高く食べて美味しい“豊穣の秋”をレポート。
出船は夜明け前、休憩所に午前4時集合
「新幸丸」が停泊する大原港は、首都圏中央連絡自動車道・市原鶴舞ICを降りて40分程。カーナビには集合場所となる休憩所「千葉県いすみ市大原10398-21」を入力する。休憩所脇の駐車場に車を停め、カウンターで乗船名簿の記入と乗船料の支払い。店前に停められた軽トラにクーラーなど荷物を積み込むと、大船長と若船長が船着場まで運んでくれる。乗船場所の突堤までは釣り竿を片手に徒歩1分。船着場では船長が待っていて、乗船の際には若船長があれこれ手伝ってくれる。魚桶やバケツがセットされた釣り座に餌と氷が配布され、タックルの支度が済む午前4時30分過ぎ、女将さんの「行ってらっしゃい」に送られて出船した。
竿入れからアタリ活発!
夜半からの北東風の影響か、ややウネリの高い海を進むこと30分程で太東沖に到着。この釣りではお馴染みのパラシュートアンカーが投入され、暫し船の流れを見守る。「いいですよぉ~、13m!」のアナウンスでスタート。1投目からアタリがあり、右舷ミヨシ(船首)の匿名希望さんに船中第1号がヒット。取り込まれたのは“鯛飯”や塩焼きに丁度良いサイズのマダイ。写真を撮らせて貰っている内に反対舷でも同サイズのマダイが取り込まれた。程なくしてミヨシでもややサイズアップした個体が取り込まれ、アタリはコンスタントにあり、手が合えば釣果に繋がる好調なスタート。魚桶は見る見る充たされて行った。
美味しい“ゲストフィッシュ”たち!
マダイの他に釣れてくる“ゲストフィッシュ”も、一つテンヤマダイの楽しみの一つ。大原沖では定番のマハタは、ヌルやウロコを金ダワシなどで丁寧に取り除き、エラと内臓を抜いてチルドルームで3日ほど寝かせる(熟成させる)ことによって高級魚本来の旨味に到達する。“根魚”のカサゴは良型が釣れるので、定番の煮付けや唐揚げの他に、刺し身も是非お試し頂きたい。ガンゾウビラメは目の付き方こそ“ヒラメ”だが、食べ方はカレイに寄せた方が美味しく、煮付けや揚げ物がお薦めだ。エラ蓋の赤い模様が血液が着いた様に見えることから“チダイ”とも呼ばれるハナダイ。昆布〆や酢〆にするほか、マダイとの風味の違いをお楽しみ頂きたい。これから旬を迎えるヒラメもよく交じる嬉しいゲストだ。また、この日は上がらなかったがイシダイやイシガキダイなどの“石物”、イナダやショゴなどの“青物”、トラフグやイサキも釣れているとのこと。大原の秋の豊穣は、釣り味も味覚も充たす趣がある。
船長に訊く“今シーズンのマダイ”
通年、マダイ専門に出船している『新幸丸』は1970年創業、若船長で4代目。山口新一船長に今シーズンの模様を訊いた。「今日は深かったけど20m位。3mから15m位でも釣れてます。誰でも(着底やアタリが)分かるので初心者向け。魚は小さくてもタイの引きってのは味わえるから、楽しめると思います」。沖で竿を出していた大地若船長も「アタリが一番多いのが底だし、カブラは底から離さないですね」と話す。底を切ってタナをキープするなど小難しいテクニックが要らない底中心の釣りなので、秋は入門に最適な時期と言えるだろう。「日本の人口1億3千万人居るけど、“鯛”を釣ったことある人はほんの一握り。今の時期なら必ずその一人になれます」と船長も太鼓判。まずは乗船して、分からないことは船上で船長や若船長に尋ねて、実地でトライ&エラーを楽しむのが上達の近道になるだろう。
【動画】新幸丸・千葉県大原港・ひとつテンヤ
浅場で“好釣”、入門に最適!
太東沖、水深13~20mを攻略したこの日。竿頭は19匹を釣った千葉さん。次点は13匹と“ツ抜け(10匹以上)”が決して夢では無い、秋の大原一つテンヤマダイ。「秋の数釣り」と謳われるシーズンだが、4kg、5kgという良型が浅場で上がっている今季。リーダーやカブラの結束も注意を怠らずに臨みたい。腕に覚えのあるベテランは勿論、いつか自分で釣ったマダイを食べてみたいビギナーにも、親子3代、マダイ一筋の『新幸丸』で、大原の海の“秋の豊穣”をお楽しみ頂きたい。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他