2022年11月26日公開
磯釣り大会が中止になり、久し振りの釣行となった。ワクワク感を抑えながらの日常は、様々な釣りの妄想が膨らむ。その間に季節は進み、錦に染まった木々の葉は枝に僅かに残るのみで、大半は地面に重なり風で宙に舞う。本州北端・青森県には既に冬の足音が間近に聞こえて来た。青森県・津軽半島北部の今別町、地磯にマダイ、クロダイの期待を胸に釣友と2人で出掛けた。
ポイント変更…!!
通常は平日の休みが多い私達2人にとって、週末、特に日曜日の釣行は久し振りだ。現地到着が午前5時過ぎ、まだ冬の星座が綺麗に見える漆黒の空。釣友K君は既に来ていた。駐車スペースには4台の車が…。
「日曜日は、やっぱ皆早いなぁ~」などと話しながら釣りの準備を済ませた頃に、東の空が白み始めた。フカセスタイルでの釣行に付き物なのが重いバッカン(コマセ)。今日の釣り場は地磯なのでこれらを背負い、ロッドケースを手にポイントまで約7分間のトレーニング。
重さが肩に食い込み、早朝から軽く汗がにじみ、運動不足の体に息が切れる。
磯全体を見渡せる堤防の階段上に立ってみて唖然。各ポイントには先行者の灯りがあちらこちらにチカチカと見える。このポイントが予報の南東風を背にできると思ったのは、皆同じだったようだ。
「あらっ、いるね~」、「どうする?」、「ここはもう入れない無理でしょう!」。この地磯は諦めてそのまま先に進み、取り敢えず堤防先端で道具を下ろすと一気に全身が軽くなる。ここは1年程前にも紹介した実績のある大泊漁港突端。大きく場所移動することも考えたが、あの荷物の重さが脳裏をかすめ、このポイントでの竿出しを決定して準備を始めた。
クロダイ、マダイを狙っての第1投!
私は堤防先端から細仕掛けでクロダイを、K君は先端横から太仕掛けでマダイを狙って2人同時の第1投となった。
季節柄まだ“餌盗り”も多いと思いながらも、付け餌はオキアミでスタート。彼も同じだ。数投してもオキアミが残ることにお互いビックリ。程なくして子供の声で「おはようございま~す」。エコーが掛かった声が聞こえてくる。朝の町内放送だ。このポイントではいつも聞こえる。何とものどかで私が好きな瞬間だ。
ウキは「00」をチョイス。水深は5m程。後で使うつもりの練り餌でウキを沈めて底を狙うのに使いやすい。まぁ、この分で行けば“餌盗り”もいないし、練り餌の出番はないかも?しかし、そうは簡単にいかず、ここから苦行が始まった。
5投目で根掛かりしたので仕掛けを組み直す。その後の6投目にはハリがない。あれっ?フグの仕業だ。ハリを結び直して再開したが、以後もハリは残らず。コマセが効いて来たのだろうが、一瞬で状況が一遍した。練り餌にしても状況は変わらず。ついさっきまでオキアミがもっていたのに…。
そんな時、K君の声。「餌残る~?」、「って言うかハリもないよ」の私からの回答に、彼も同じ状況らしく、あっさりと「“本命”の気配ないね!」と絶望的な一言。確かにそうは思っていたが、改めて言葉で聞くとなかなかショックである。
ラインが僅かに動き、遂に来た!!
途中アイナメやサヨリなどが掛かったが、オキアミでは全くもたないため、練り餌中心に釣りを組み立てる時間が続く。
そうこうしている内に、時刻は11時。予想以上に苦戦し、未だ突破口が見つからない。この辺りから天気予報通り風が強くなって来た。追い風とはいえ斜め左後ろから吹かれてラインがはらみ、釣りにくい。
間もなくして潮が変わり、僅かではあるが沖から当て気味に差し込んで来た。コマセを20m程沖目に打ち込んで、仕掛けはそれよりも更に20m程沖目に遠投する。底に溜まったコマセの上に練り餌を通過するようにして、魚に口を使わせようと思った。ウキは「000」に変更。練り餌が付いている間は完全に水中に没している。したがって穂先とラインでアタリを取るわけだが、風の影響で常に穂先がしなり分かり難い。そんな中、風にはらんで膨らんでいたラインが、ス―ッと少しだけ張った気がした。確認しようと穂先で聞くと、僅かにカツカツした感覚が…。それが穂先を絞り込むようなアタリに発展した。即合わせ!!重みがロッドに乗った瞬間にラインが一気に引き出される。「来たっ!」。手応え充分、戦闘開始!と思った瞬間、呆気なく1号ハリスがチモトから飛んだ。細ハリス仕様のドラグ設定にしていたが、相手のパワーが勝った。
しばし愕然、苦笑しかない。「まだ時間はある、もうワンチャンスある」。そう自分に言い聞かせて、ハリスを1.2号に上げて再チャレンジ開始。その後、フグの活性が上がり、中々同様のアタリがない。“逃がした魚は大きかった”感に苛まれながら30分。すると、練り餌が残りだした。穂先やラインに集中していると、またもやラインがスーッと張り出した。続けて穂先を絞るアタリが来た。確実に喰い込んだのを確認して合わせた。先程同様一気にラインが出される。「今度は取るぞ!」。0.6号のチヌ竿が魚のパワーで満月のしなり。マダイかクロダイか?暫く走られたが程なくして走りが鈍ってきた。ゴンゴンと首振りが伝わる。「クロダイか…」だとしたら良型間違いなし!ジリジリと距離を詰めたが、今度は港内に向かって走り出す。逃げ場を知っているのか、それにしても重い。最後まで充分楽しませてくれる。やっとウキが見えて来た。「もう少し!」。後ちょっとで魚体が確認出来るはず。ただ一向に光るはずの銀鱗が見えない。間もなくしてバシャっと海面を割って浮かんだのは何とカンダイだった。
「明日も元気で会いましょう~」。町内放送で納竿
魚を一段低くなった所まで誘導して無事ネットイン!重さにタモの柄がしなった。手元に引き上げて早速実測すると、「50cm!」。まぁまぁの良型だ。“本命”のクロダイではなかったがやり取りを堪能することが出来た。再会はあまり希望しないが優しくリリース、「また会いましょう」。
その後も2人で“本命”を追いかけたが、遂にそれらしいアタリはなく、夕方の「明日も元気で会いましょう~」の町内放送で納竿した。
朝からアイナメ、フグ、サヨリ、小アジそしてカンダイと色々な魚と戯れた。山陰に沈む夕日が帰路につく私達を柔らかく照らしてくれた。