2022年12月08日公開
深場で釣れる魚たちは高級魚ばかり。ところが道具や仕掛けの扱いに馴れないと満足な釣りが出来ない“敷居の高さ”はどうしても否めない。そこで、水深100m前後の“浅場”で、ビシアジ等で使い慣れたタックルでも釣りが成り立ち、しかも食べて美味しい魚が釣れると言う“魅惑のリレー釣り”があると聞き、千葉県・南房総は江見太夫崎港『渡辺丸』へ出掛けた。
道の駅「鴨川オーシャンパーク」が目印!
「渡辺丸」が発着する江見太夫崎港は、館山自動車道・君津ICから1時間程。首都圏中央連絡自動車道・木更津東ICからも1時間程で到着する。カーナビには『道の駅・鴨川オーシャンパーク(千葉県鴨川市江見太夫崎22)』と入力するのがお薦め。1度行けば迷いようもない道程だが、初めての際は船宿HPに詳しい道案内があるので、事前に港の入口を確認しておくのが得策だ。取材日の集合時間は午前2時30分。乗船場所は車が乗り入れやすく荷物の積み降ろしも楽々。積み荷を降ろしたら船着場から徒歩1分程にある『オーシャンパーク』裏手の釣り人専用駐車スペースへ車を移動する。集合の2時半には予約の釣り人全員が乗船済みの手際の良さで滞り無く出船準備は整い「第十 渡辺丸」は定刻よりちょっと早めに出船した。
竿入れからクライマックス!
真っ暗な海を走ること30分程でクロムツの釣り場となる鴨川沖の海溝に到着した。「ではやってみましょう、107mです」の合図で投入開始。魚群探知機の反応は海底から10mまでの範囲に出ていることがアナウンスされ、そのレンジを探るようアドバイスがあった。間もなく漆黒の海上に電動リールのモーター音が鳴り渡り、気持ちよく竿を引き絞りながら船中一番手の魚が海面を割った。良型クロムツを取り込んだのは左舷トモ(船尾)の佐藤さん。程なくして反対舷の遠藤さんも同サイズをゲット。こうしてアタリの出るタナ(水深)が見極められると、1投につき一荷(2匹)、3点掛けと着実に釣果を重ね、魚桶は見る見る充たされていった。
オニカサゴはスロースタート
6時30分、陽が昇りオニカサゴに釣り物交代。この時、オニカサゴの餌になるサバを釣っていたのは船中で僅か1人。普段は仕掛けの沈降を止められるほどサバの魚影が濃いこの海域でまさかの番狂わせ。持参のサバタンや“特餌”を持っている釣り人はこれで繋いだが、これのない釣り師はクーラーに仕舞った釣果で身餌を造るなどして急場を凌いだ。
オニカサゴのポイントとなる江見沖の根周りで、開始早々ノンキーパー(規定サイズ以下)のオニカサゴが取り込まれた後は、ゆっくりとした展開。アタリが集中するタイミングは時折訪れるものの、ウッカリカサゴ(カンコ)に阻まれるシーンが散見した。潮の変化かカンコの食いが俄かに立ち始めた9時過ぎ、この膠着状態をこじ開けたのは右舷トモ(船尾)の遠藤さん。これまでと違うファイトで船中の注目を集めた魚は“本命”のオニカサゴ。付け餌はクロムツ釣りで釣ったクロシビカマスと、諦めずに与えられた条件で釣りと向き合うことの大切さを目の当たりにする一幕となった。
“ゲストフィッシュ”も多彩!
1回の釣行でクロムツとオニカサゴの2大高級魚が狙えるこのリレー。“本命”以外の“ゲストフィッシュ”も美味しい魚ばかりだ。クロムツ釣りの定番ゲスト“スミヤキ”ことクロシビカマスは、皮付近に独特な骨があり調理も食べるのも苦労するが、その味は絶品。スプーンで身を掻いて“なめろう”にしたり、煮付けて気長に骨を避けながら食べるのがお薦め。この日、良型が多数取り込まれた“カンコ”ことウッカリカサゴは煮付けや唐揚げが美味しい魚だが、鍋ダネとしても優秀なのでお試し頂きたい。ホウボウは薄造りの刺し身でも潮汁でも滋味深く、パン粉を付けてフライにすると奥行きある味覚に驚くこと請け合い。根周りで釣れるカンパチの若魚・ショゴは嬉しいゲスト。刺し身や塩焼きにすると「このサイズが一番美味しいのでは?」と感じるほどなので、血抜きなど丁寧に処置して大事に持ち帰りたい。また、この日は、オニカサゴのゲストとして大型のカイワリも取り込まれて船上を湧かせた。マイナーだが小気味よい引きで釣り味も素晴らしい上に刺し身すると大変美味しい魚。餌はイカタンだったとのことで、“特餌”の持ち込みは釣果の幅も拡げることを実感した。取材日には奮わなかったがクロムツ釣りでは大アジ&大サバも良く上がるとの事。「次は何が釣れるかな?」そんなワクワクも中深場釣りの醍醐味のひとつだ。
【動画】渡辺丸・千葉県江見太夫崎港・クロムツ&オニカサゴリレー
船長に訊くクロムツ&オニカサゴのコツ
クロムツもオニカサゴも、100m以浅の比較的浅場での釣りを展開した取材日。この釣りのコツを渡辺英雄船長に訊いた。「クロムツって基本的に暗い内は90m位まで餌獲りに上がってくるんですよ。で、明るくなると段々深場へ落ちていく。暗い内はまずタナを探るんですよ。極端な事言うと、海底から20m位まで浮くこともある。そんな時に底を釣っててもタナが違う。だからデッドスローで誘いを入れながら巻き上げて、アタったら『この辺の水深だな』って、誘いを止めてゆっくりハンドルで巻き上げる。誘うと魚の歯でハリスや幹糸を切っちゃう。掛かった魚の動きでフラッシャーは動いてるんで、ゆっくりゆっくり巻くだけで追い食いする確率が上がります」との事。
一方、オニカサゴについては「まずは餌でしょうね。餌の造り方。巧い人ほど泳ぐように(薄く)綺麗に造ります。もうひとつは出来れば本当は(竿を)手持ちで誘って貰った方が喰うよね。自分の誘いに反応して喰わせた方が面白いんじゃないかな」。この他にも船長は知識豊富な上に説明が非常に分かり易いので、分からない事や船上で手詰まりになったらアドバイスを求めるのが得策だ。
かくして、この日の竿頭は見事オニカサゴを仕留めた遠藤さん。クロムツ17匹と大きなカンコやアジでクーラーは賑やか。この釣果でも渋めの日並みとの事で益々楽しみだ。比較的“浅場”で楽しめ、使い慣れたタックルで挑めるお手頃な中深場釣り。獲物は味に定評のある魚たちばかりなので、是非とも寒さ対策と新型コロナ感染予防対策を万全のうえチャレンジ頂きたい。
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他