芦ノ湖の解禁日は3月2日。その1日前に、ルアー・フライ限定で開放されるのが「特別解禁釣大会」。今年は例年より1時間遅い午前5時から受け付け開始。エントリーカードの記入がなくなって混雑も行列も無く、スムーズな手続きが印象的だった。元箱根『山木商店』でボートを借りたところ、気になる風は「昨日よりはマシかな」と店主の山木一人さん。暖かい南風だが、これだけ吹くと水温低下に繋がる可能性もあるとのこと。湖の水が攪拌され、これが吉と出るか凶と出るかが釣果の分かれ道になるとヒントをくれた。

6時30分、大会開始のホーンが鳴って釣り開始。有名ポイントへ向かうボートを横目に、桟橋近くの入り江でエレキを踏みながら流す。昨年、多くの魚をストックしていた関所跡港での1投目、5gのスプーンに幸先良く30cm級のニジマスがヒット。しかし、強風でボートポジションを維持できず、先行の釣り人も多いので早々に離脱。『山木商店』の桟橋付近でもアタリが有り、箱根町港・海賊船の桟橋までをざっと流したが手応えもない。何より三角波もあり操船も難儀なので、桟橋に戻ってボートを係留。向かい風となる入り江の入口へ向けて8gのスプーンを投げる釣りにシフトチェンジした。すると間もなく、40cm級のブラウントラウトがヒット！「これはもう悪あがきせず、ここでのんびり今日の釣りを楽しもう」と魚探の電源を切った。

これは全くの偶然なのだがこの釣りが功を奏し、同じリトリーブコースでフライパンサイズのニジマスやブラウントラウトから、45cmを超えるニジマスまでが1投1匹のペースで釣れ続けた。無心で釣りに釣って気付いた時には7時30分。ボートのライブウェルには20匹のマスたち。やがて、釣り雑誌などのメディアでもお馴染みの有名釣船宿の船長ご一行が近くで陸っぱりを始め、皆さん“好釣”で賑やかに楽しんでいた。中でも湖畔を沸かせたのは大原の女良さんが大振りなスプーンで釣ったナイスサイズのオオクチバス。まだまだ寒い早春にあって、“温帯魚”であるバスに口を使わせるスプーンの威力を目の当たりにした。

山木一人さんに、解禁間もない芦ノ湖の「早春の釣り」のコツを訊いた。「“夢を持たないこと”──と言うのは、芦ノ湖に来て何となくロケーション的に、岩場に行ってミノー投げて、デカいの釣れるんじゃないかって皆思うけど、まだ水温が低いんで岩場には魚が上がってないんですね。各ワンドとかの方が釣果的には確実。大きい魚もそっちには入ってるんで。だからワカサギが産卵の終盤になるまでは、そういう意味で“夢を見ない”。7から14gぐらいの大きめのスプーンでちゃんと底を取ってやってれば──はい！」とのことなので、これから芦ノ湖に行く皆さんはご参考まで。ワカサギが接岸する4月中旬からゴールデンウィークになれば、芦ノ湖名物“グリグリメソッド”などジャークミノーの釣りが楽しめる筈だ。
かくして2023年大会の優勝は、レインボートラウト（ニジマス）が75cm（5.93kg）、ブラウントラウトは73.4cm（3.87kg）、ヤマメ（サクラマス）は40.1cm（0.68kg）。イワナは46cm（1.14kg）、オオクチバスは48.2cm（2.25kg）。今年も大物のチャンスはまだまだ期待出来る。記憶に残る大物との出逢いを求めて、早春の芦ノ湖をお楽しみ頂きたい。