2023年04月09日公開
3月下旬、東京ではサクラが満開とのニュースが流れていたが、北海道の冬は永く厳しい。つい先日も十勝地方で40cm近い降雪があった。しかし、気温が10℃に達する日も出てきて、少しずつではあるが確実に春は近づいている。ようやく魚の気配が感じられるようになり、期待を込めて十勝川水系に釣行した。
生命の気配がない。どうする?
今回入渓したのは、十勝川水系の河川。さほど規模は大きくはないが、アクセスもしやすく、平日でもちらほらとアングラーがいる川だ。この日は割と暖かく、午前10時前後で気温7℃、水温3.9℃だった。久しぶりの釣行に胸が高鳴る。しかし、暫く川を歩いたものの、小魚、虫など全く生命らしきものが見当たらない。それもそのはず、この河川にはまだ雪もあり、夜には気温が-10℃前後まで下がっているらしい。「さすがにまだ早かったか…」と、早々に打ちのめされながら氷を踏み砕きながら歩いていると、氷の裏に大量の虫が潜んでいた。きっと厳しい冬を皆で身を寄せ、じっと耐えていたのだろう。少々気持ちが悪い数だったが、「これを捕食する魚もいるはず」と、期待が高まった。
本流筋ではなく、分流が肝!
午前10時前後から釣っていたのだが全く釣れない。しかし、釣り歩いている中でクマよけ鈴の音に反応する魚影が何度かあった。それらは全て本流筋から分かれた分流で、水量は少なくゆったりと流れている。「本流筋にはいないのか?」と思い、分流を重点的に攻めてみる事に。10分位経った頃だろうか、竿先に“コツン”と反応!久しぶりの感覚に鳥肌が立ち、興奮を覚える。そのポイントにキャストすること3度、ようやく釣れた。小さいニジマスだったが、若干の濁りの中から綺麗な魚体を見せてくれた。
気温が上がり、30UPのニジマス登場!
その後も釣り歩き、14時を過ぎた頃になると、防寒のためのマフラーを暑く感じるようになり、少し軽装に。先程と同じように分流を中心に探り、アップストリームでキャストすると、ルアー着水直後に明らかに強い引きが。緩めていたドラグを少し鳴らしながら大型ニジマスをキャッチ!32cmあった。思い返してみると、丁度気温が高くなる時間帯で、魚の活性も上がっていたのだろう。しかし、こんな小さい分流に30upが潜んでいるとは、全く想定外だった。
雪解けのこの時期、夏と大きく違ったのは分流に魚が多かった事だ。夏なら流心やその脇がよいポイントで、分流は軽視しがちだが、今回はそこが釣れるきっかけになった。恐らく魚が冬を越すために移動したのだろう。本流よりも水量が少ない場所なら消費エネルギーが少なく、体への負担を最小限にして生活できる。餌の少なくなる冬を分流でしのぐ事が、魚にとって都合がよいのだと思う。この時期に出掛けて来たからこそ学べた事だ。
アプローチにも少し工夫、集中力も大事
立ち回りについては、アップもしくはダウンストリームが向いていると感じた。分流となると川幅が狭く、魚にルアーを見せる時間が少ない。少しでもルアーの存在をアピールしたい場合は、縦方向のアプローチが重要になるとも感じた。しかし、地形の関係上、どうしてもクロスストリームにならざるを得ないポイントもある。そこでは“立ち上がり”に全神経を集中することが大事だ。幅の狭いポイントでクロスに投げてルアーを回収するまでの時間は、場所にもよるが2秒前後。油断したり立ち上がりの弱いルアーを使うと、全くアクションができずに終えてしまう。ルアーのチョイスにはいつも以上に気を遣いたい。
雪が残るこの時期は何よりも安全第一!
今回は雪が残る時期の釣行となったが、何度かヒヤッとする場面があった。低水温にも要注意だが、やはり気になるのは“雪氷”。普通に歩いていると突然ズボッと見えない石の隙間にハマることがあるし、高い位置から岸に近づくと、雪庇を踏み外してしまうこともしばしば。
この時期は地形を把握している釣り慣れた川をチョイスしたり、見えない危険を想像する必要があると思った。雪に埋まりながら歩くこともあり、ハイシーズンより気力も体力も消耗した。とは言いつつも、久しぶりに魚と出会い、やはり釣りはよいものだと感じた。これから北海道もようやく春を迎えるので、冬から春へ移り変わる季節を感じつつ楽しみたい。