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【チヌを追い求めて】名手・山本太郎が20年に渡り、伝えてきた極意とトレンドの変化

2023年07月18日公開

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2003年7月17日の初回放送以来、隔月で発信し続ける事、早20年!『チヌ道一直線』は、釣りビジョンで唯一のチヌ釣り専門レギュラーコンテンツとして”かかり釣り”や”ウキダンゴ釣り”、”落とし込み釣り”など、幅広いチヌ釣りを網羅する山本太郎の釣りに密着してきた。そんな中、2023年7月3日から放送されている第120弾で丁度20年が経過。第30弾からの約15年ではあるが、ディレクター兼カメラマンとして番組を担当してきた私なりに、今回は山本太郎が導いてきた現在の答えとチヌ釣り事情の移り変わりを振り返る。

【この記事を書いたライター】よしD

時合の察知と喰わせるまでのイメージ

”どうすれば簡単にチヌが釣れるのか”という、シンプルでありながら一番答えを出しにくいテーマに挑み、
山本「サイズは結果論にすぎない」
と考えるのが山本の基本スタイル。チヌがサシエを喰ってくるまでのプロセスを楽しみながら、”結果”としてついてくるのが”釣果”といえる。中でも、必ず何らかの魚を寄せる作業から始まるのが、かかり釣りやウキダンゴ釣りなど、ダンゴを使う釣法。
山本「エサ取りすらマキエ」
と考え、まずはモクモクと煙幕を立てながらダンゴが着底していく様を想像し、これが自然に溶けてサシエが飛び出すのか…はたまたエサ取りが突くことで割れるのか…次第に賑やかになっていく海底の様子を、警戒心の強いチヌが遠巻きに見ているはず…と、山本の釣りはそんなイメージの繰り返しだ。一見、同じ動作をしているように見えて、実は一投ごとに違った演目を頭の中で描いている。そう、温暖化の影響からか、エサ取りの種類や数が増えてきた昨今のチヌ釣りは、何の前触れもなくいきなり本命が釣れることは無いに等しい。

そこで、貴重な1枚をキャッチするために最も重要となるのが”時合いの察知”。必ずといっていい程、まずはエサ取りが動くため、チャンスが近づくとダンゴの割れが早くなり、サシエの取られ方に変化が現れる。この変化に気づくかどうかは、先に述べた一連の流れをイメージできているか否か。釣り人側がチャンスの到来を察知できるようになれば、集中力が倍増するばかりかアタリへの対応力まで向上する。

また、このことによって生まれるオンとオフも見逃せない点で、心の余裕が”次の攻めの一手”に対する迷いまで軽減。聞いたことばかりで実力が伴わない私ではあるが、どんなに小さな変化も見逃さず、攻め時を見極められるよう、山本の釣りを参考にプライベート釣行に臨んでいる。

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大きな変化は”道具の進化”と”エサ”

この度の執筆を前に、『釣りビジョンVOD』内にある「FV CLASSIC」から、20年前に放送された第1弾を視聴したのだが、その感想は驚きの連続。冒頭で山本はこんな発言をしていた。
山本「かかり釣りは底にチヌを集めて釣る釣りですが、本来チヌはベタ底を泳いでいる魚ではありませんから…」
そう、2015年頃から注目され始め、今や必ずマスターしておきたいテクニックの一つが『中切り』。これはベタ底の本命だけを相手にするのではなく、少し上ずったチヌを中層で狙ってしまう二段攻撃。水深の浅いフィールドでは炸裂しにくくなるものの、番組が産声を上げたこの時、山本はすでに中層を意識した釣りを展開していた。

さらに、ダンゴとは別に、マキエとして用意していたのが”アケミ貝”。これをパラパラと撒きながら使うわけだが、当時は安価で入手できていたアケミ貝は乱獲で数が激減。徐々に外国産に頼るようになっていったのだが、供給が不安定な上に高騰が続き、昨今ではアケミ貝からサナギに代わってきた。
ここで見えてくるのは、”長い慣らし運転”。ダンゴにミンチ状のサナギを混ぜていく様子をメディアやこの番組で発信し続け、山本は10年ほどかけて偏食で警戒心の高いチヌにサナギをエサとして認識させたのだ。もちろん、多くのかかり釣り師の共感なくして成しえない実績なのだが、エサ取りの種類も多様化する昨今ではエサ取り対策としても必須となるサシエ。時代背景に飲み込まれることなく、かかり釣りは確実に進化を遂げたと感じる。

また、進化といえば、見逃せないのがタックル。上向きの両軸リールは機能満載の片軸リールとなり、ハンドル1巻きで最大83cmというハイギア仕様。素材と技術の躍進によって、ロッドの反発力も格段に上がり、どんなに大きな相手がかかってもアドバンテージを保ったままやり取りが楽しめるようになってきた。

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55cmの壁と60cmの壁

先に執筆した通り、
山本「サイズは結果論でしかない」
だが、20年番組を続けると、どうしても気になるのが”記録”。数字の捉え方は人それぞれだと思うが、第120弾の放送を終えた時点での通算釣果は928枚。うち年なしは53枚で、1回あたり7.7枚というさすがのアベレージを残してきた。しかし、さらに踏み込んで55cmを超える巨チヌを数えると、これが番組記録の60.3cmを含むたったの4枚。この20年の軌跡から”2つの高い壁”があるといえる。
ちなみに、この番組を含み、山本がチヌ釣り人生の中でキャッチした60cmオーバーは4枚。そのうち半分が産卵からの回復期にあたることから、
山本「60cmオーバーが出るのは圧倒的に梅雨時期」
と語る。春、ノッコミ期を迎えると、多くのチヌ釣り師が巨チヌに心躍らせていると思うが、本気で巨チヌに挑むとなれば、”釣り場”と”タイミング”の選定が絶対条件となる。

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これからの『チヌ道一直線』

振り返ると、あっと言う間に過ぎた時間であったが、このコラムで語り切れないほど色々な思い出が詰まった『チヌ道一直線』。今なお
山本「可能な限り回数を重ねていく。まだまだ勉強」
と語る山本太郎と共に、いずれぶつかるであろう”2つの高い壁”にも挑んでいきたいと思う。
なお、番組記録が生まれた回はまだUPされていないが、第41弾からほぼすべての回が『釣りビジョンVOD』にて視聴可能。チヌ釣りに興味を持ちながらも、まだ始められていないという方は、ぜひ参考にしていただきたい。

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