2023年07月16日公開
その端麗な容姿と荘厳な魚体に誰もが息を呑む美魚「レイクトラウト」。日本で唯一、この魚を釣ることのできる栃木県「中禅寺湖」で、【マイクロピッチジギング】の第一人者『細井直人』さんに、その奥義を伝授してもらった!
遅すぎた中禅寺湖デビューと細井さんとの出会い
「レイクトラウト」、トラウトフィッシングを愛する釣り人ならば、一度は挑戦してみたいターゲットではなかろうか? 最大で1メートルを超すとされる巨大さは、日本の淡水ゲームフィッシュの中でも数少ない稀有な存在。大小さまざまな斑点と入り組んだ迷路のような斑紋が描かれている褐色の魚体には、苦み走った美しさがある。しかも、日本では日光の中禅寺湖にしか移入されていないという点が、このゲームフィッシュにある種の神秘性を与えている。
私、横沢鉄平は、少年時代から日本中を釣り歩き、やがては世界各地にまでその行動範囲を広げてきた。でも、日光の中禅寺湖だけは、50歳を過ぎるまで釣りをしたことがなかった。理由は自分でもわからない。でも、この湖には簡単に足を踏み入れてはいけないような、まだ釣りをする資格がないような、そんな畏敬の念を感じていたので、機が熟するまで時間を要したのだろう。
そんな私が初めて中禅寺湖で竿を出したのが2年前の夏。中学時代からの釣り仲間と2人で、ほぼ予備知識なしの手探り状態でトローリングとジギングを決行。結果は友人が62センチのブラウンを仕留めたものの、私はゼロという惨敗に終わった。その3週間後、懲りずに再チャレンジしたのだが、その時はあっさりとレイクトラウトを手にすることができた。それはなぜか? ボート桟橋で偶然知り合った「細井直人」さんに、最強の釣り方を教わったからだ。その釣り方が、【マイクロピッチジギング】なのだ。
必要不可欠なのは、SLJタックル+小型タングステンジグ
その後、私は年に何度か中禅寺湖に行くようになったが、大釣りはしていないものの、コンスタントにレイクトラウトを釣ることができている。もちろん、釣り方はマイクロピッチジギングだ。そして2023年の今年、細井さんと中禅寺湖で待ち合わせをして、2人で釣りをするという機会に恵まれた。これを機に、もう一度マイクロピッチジギングの方法を教わってきたので、今回、細井さんの許しを得て紹介したいと思う。
細井さんはもともと海のオフショアジギングで知られた釣り人だったが、ここ数年は中禅寺湖のとりこになってしまい、シーズン中は日光通いが続いている。特にレイクトラウトのレイクジギングについては、独自の研究によってスーパーライトジギングを応用したメソッドを確立。その釣法に【マイクロピッチジギング】と名付けた。
まず大事なことは、いわゆるスーパーライトジギング用のタックルを使うこと。それもスピニングの方が使いやすい。そして使うルアーはタングステン素材を使った15~20gのメタルジグ。なぜタングステンかというと、レイクトラウトはワカサギ、ゴリ、エビなど、意外に小さな生物を食している。だからマッチザベイトの観点で、ルアーは小さくなければいけない。しかも冷水性の魚なので、特に夏場は水深20m前後の深場にいることが多い。小さいジグは必然的に軽いので、そんな深場は攻めにくい。その点、タングステンならシルエットが小さくても重いので、ディープにもすぐに到達する。このタングステンであることが、大きなキモなのだ。
先生は1投目からヒット! そして素早くリリース
6月の終わり、約1年ぶりに再会した我々は、午前3時に遊漁券を購入して準備を開始。そしてまだ薄暗い4時に出船し、魚探を見ながら沖へと出ていった。
細井「いるいるいる! これ、きっとレイクトラウトですよ。多分1投目で釣れちゃいますね」
そういって細井さんは、顔をほころばせた。私はまだリーダーを結んでいる状態だったので、彼には先に釣り始めてもらった。ボトムまでジグを沈めた細井さんは、ロッドを細かく動かしながら、リールを巻く。これがマイクロピッチジギングのリーリング術なのだ。動作的にはバス釣りのミドストにかなり近い。ミドストは水平方向にルアーを泳がせるが、この釣りはそれを縦方向にやる感じ。
細井「喰った! やっぱり1投目できましたよ!」
まあ、珍しいことではない。細井さんは私が知る限り1投目で釣る確率が7割くらいだ。まだ暗い湖面にうっすらと魚影が見え始めた。たまに体全体をローリングしてルアーを外そうとする。これがレイクトラウト特有の動きだ。上がってくると、60cmはありそうだった
細井「水面でリリースしますね」
細井さんはよほどの事でもない限り、レイクトラウトを船に上げたりはしない。中禅寺湖のレイクトラウトは、自力で繁殖を繰り返している。その種族保護のためになるべく弱らせることなく、湖に戻したいのだ。
細井「もし、ラインが魚体に巻きついていたら、湖から上げない状態で絡まったラインをほどいてあげた方がいいです。ネットで上げてしまうと、余計に巻き付いて大変なことになります」
とりわけ真夏のレイクトラウトはディープから上げてくるので、リリース後にディープに戻れずに弱ってしまうことも考えられる。そんな悲劇が起きないよう、細井さんはディープ専用のリリーサーを考案して自作、速やかにディープへと魚を戻すことまでやっている。
【マイクロピッチジギング】の全貌!
マイクロピッチジギングは、とにかくボトムまでジグを落としたら、ひたすら細かいアクションを加えつつ、リールを一定速度で巻き続ける。
細井「プリプリと動かすイメージです」
通常のジギングだと、一定のレンジでジグをしゃくり続けたりするが、この釣りは原則的に水面近くまで巻き続ける。プリプリと左右に動きながら、水面を目指すジグに、レイクトラウトは猛然と追いすがってくるようだ。そして、多くの場合はサーモクラインの手前で焦ったように喰ってくる。レイクトラウトは冷水性の魚なので、水温が急激に上がってしまうサーモクラインより上には、なかなか出てこないのだ。それでも、まれに水面まで追ってくることがあるので、できれば水面近くまで巻き続けることが望ましい。
細井「よし、またかかりましたよ!」
細井さんは次々にテンポよくレイクトラウトを釣り上げていった。彼は、普通に人の3~4倍の釣果を叩き出す男。その差があまりに大きいので、かつては彼の釣果に疑念を持つ人もいたらしい。でも断言しよう、彼は本物だ。同じボートに乗り、ほぼ同じルアーを使い、使い方もほぼコピーしてみたのだが、この日の午前中、細井さんと私の差は10対ゼロ。3~4倍どころではない。その差は無限大だ。
ついに来た!マイクロピッチジギングに、ダイレクトなアタリ!
細井さんもさすがに半日ゼロだった私に同情したのだろう。午後は自分の釣りそっちのけで、私のためにいろんなアドバイスをくれた。
細井「追ってます、追ってます! あ~、見切られちゃった」
バーチカルに狙っているので、普通の魚探でもまるでライブスコープのように追ってくる魚が見えるのだ。
細井「この釣りは、追わせて喰わせる釣りなので、アタリがダイレクトに伝わってくるんです。それがたまらないですね!」
普通のジギングは、ラインをたるませた瞬間に喰ったりすることも多いし、意図せずスレ掛かりになることも珍しくない。でも、マイクロピッチジギングは、常に誘い続けているので、アタリがすぐにわかる。だから高確率であごのいい位置に針が刺さるのだ。
それにしてもなぜ私には釣れないのだろう。
細井「この釣りは、ロッドの硬さによってアクションが変わってくるんです。横沢さんのアジングロッドはティップが軟らかすぎて、あまりジグが動かせてないかもしれませんね。僕も3本タックルを出していますが、硬さだけは変えています。あとは、全く同じリール、同じライン、同じ長さのスーパーライトジギングロッドにしていますけどね」
同じようなアドバイスを、細井さんのお仲間のトガシさんからもいただいた。
やっぱりアジングロッドじゃダメか? というわけで、ライトジギングのベイトタックルに変えてみた。すると……。
細井「追ってますよ!」
横沢「よし、乗った!」
ついに来た! この引きはまさしくレイクトラウトだ! サイズも自分にとっては悪くない65センチ。ああ、長いトンネルをやっと抜けることができた。
2日目は、夕方から別の仕事が入った関係で、レイクジギングは2時間ほどしかできなかった。しかし、細井さんは3匹のレイクトラウトを軽々と仕留めた。私にはまた、なかなか釣れない。ベイトタックルだと、どうもアクションがつけにくいのだ。そこで、今度は少し硬めのバス用スピニングロッドに変えてみた。すると、すぐにレイクトラウトがかかったのだ!
細井「やっぱり、ロッドでアクションが変わるんですよ」
その細井さんの顔は「横沢さん、早くSLJ専用のロッドを買うべきですよ」
と、言っているようだった。
1日半の釣りで、レイクトラウトの釣果は、細井さんが14匹、私が2匹。
SLJ専用ロッド、いよいよ買うか!
施設等情報
施設等関連情報
〒321-1661 栃木県日光市中宮祠2482
TEL:0288-55-0410
この記事を書いたライター
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