2023年08月04日公開
釣り人が好む言葉に「解禁」がある。千葉県・片貝発のヒラメ釣りは、7月1日と8月1日に指定海域での禁漁を解く「限定解禁」があり、9月の「全面解禁」と合わせて3回の解禁がある。今シーズンのヒラメたちの模様を伺いに、九十九里浜のほぼ中央、片貝港『勇幸丸』を訪ねた。
午前4時、片貝港を出港
片貝港は首都圏中央連絡道・東金ICから30分程。東金九十九里道路・片貝ICからは2分程とアクセスが良い。カーナビに「若葉屋食堂(千葉県山武郡九十九里町小関2347-13)」を入力、港の入口脇にある電話ボックスが目印だ。『勇幸丸』が横付けされている岸壁付の前に車を停めることができ、3時過ぎには船長が来て船に明かりが灯る。船縁に手が届くほど近くに駐車できるので荷物の積み降ろしは楽々。乗船名簿に必要事項を記入してクーラーに氷を入れ、乗船すれば出船準備は滞りなく完了。『第二勇幸丸』は夜明け前の海へと出船した。
竿入れ早々、最初のアタリが!!
夜明け前の風が気持ちよい海を走ること1時間余り。船長から走行中の注意や船上でのマナー、仕掛けの扱いの注意など、ビギナーは勿論、長年釣りをしてきた釣り師にも耳を傾けて欲しいアナウンスがある。やがて朝陽が水平線から顔を覗かせ、釣り場に到着。仕掛けのセットは、船長が釣り座を廻って餌のイワシを配布するこのタイミングで充分だ。
「ここからやってみましょう、準備の出来た方はやってみてください」
の合図で午前5時過ぎに期待の第1投。
「沖側の水深の深いポイントから」
という船長のプランで水深はおよそ50m前後の根周り。
「オモリを引き摺らなければ根掛からない。水深変化にだけ気を付けて、底をマメにとってください」
など、釣り場に即した具体的なアドバイスがアナウンスされた。程なくして、右舷トモ(船尾)の江本さんにアタリ。タイミングを伺っていたが、食い込む引き込みも無いまま、痺れを切らせて合わせるもハリ掛かりはせず。この後、流し替えや釣り場移動を重ねて船中最初の魚が取り込まれたのは2時間後。右舷胴の間(中央)の斉藤さんが明確な喰い込みからキャッチしたのは1kg弱のマハタ。これを皮切りにウッカリカサゴ(カンコ)やメバル、クロソイなどの根魚が取り込まれ、ヒラメの登場をまだかまだかと釣り人たちは思いを募らせた。
美味しい“ゲスト・フィッシュ”図鑑
ヒラメ釣りは、ヒラメ以外に釣れる魚たちも楽しみの一つ。この日に釣れた美味しい“ゲスト・フィッシュ”をご紹介しよう。
ハリ掛かり後のファイトも、帰宅してからの食味も、ヒラメに全く引けを取らないマハタは定番の高級ゲスト。通常、記事に書く時は「3日以上寝かせて」と控えめに書いているが、個人的には5日以上チルドルームで寝かせてから刺身にして食べているハタ類。熟成は衛生管理に気が抜けないので、皆さんは自己責任・無理せずお試しになることをお含み置き頂きたい。
同じく根魚と呼ばれるクロソイも片貝沖の常連ゲスト。いつもより砂糖を多めに、甘く煮付けると美味しい。
この他にメバルやウッカリカサゴなど、味に定評のある根魚に恵まれたが、これらの魚に共通するのが“皮目の旨さ”。刺し身にするにも皮を引かず炙り刺しや湯引きにすると食感と身の甘みが引き立つ。是非、これらの魚たちは、しっかり血抜きして丁寧に持ち帰り、美味しく召しあがることをお薦めしたい。
船長に訊く、ヒラメ釣りのコツ
市東吉雄船長に今期のヒラメの模様を訊いた。
「7月に解禁した片貝沖北部の状況が良くなかったんで、8月1日には(例年と異なり)中部の漁礁周りを解禁することになりました。ここに来てイワシが出始めたんで、そっちの活性が上がってくれればな、と思います」
と今後の展開に期待。夏のヒラメ釣りのコツについては、
「夏は魚が結構動くので、餌を底付近では無く、マメに打ち直してヒラメの視界に入れてやるようにした方が良いと思いますね」
アタリが少ないとタナを下げたくなるのが人情だが、これが実は魚へのアピール不足に繋がっていることも。アタリを待つ間は底をしっかり切って、マメに底を取り直す「動」の釣りを心掛けたい。
また夏の釣りの注意点については「熱中症対策。やっぱりあれですね、水分補給や高機能シャツもありますが、出来ることは限られてますので、無理をしないことですね。体調が悪いと思ったら、すぐに声を掛けて頂ければ」と船長。昭和の頃とは夏の暑さも違うので、スポ根魂で頑張り過ぎないことが今は肝要だ。
8月1日から片貝沖中部が解禁!
難しい釣況で迎えた沖上がり1時間前。俄かに魚の反応が活発となる時合いが到来。これまでポツリポツリと釣れていたマハタがコンスタントにアタリ始め、2kg超えの良型も取り込まれた。ここで待望のガツガツガツ!という特徴的なアタリが。辛抱することしばしでグーンと竿先を絞り込み、取り込まれたのは“本命”のヒラメ、1.3kg。これまでの苦戦も吹き飛ぶ嬉しい1匹に、心地よい疲れで沖上がりの時間を迎えた。かくして、マハタは2kgを頭に6匹を釣った江本さんをはじめ、皆さん多彩な魚種でクーラーの中身は賑やか。お土産には事欠かない釣果に恵まれた。
8月1日に片貝沖中部の漁礁周りが解禁され、9月には北部・中央・南部の全海域が解禁を迎え、ますます期待の高まる片貝沖の“夏ビラメ”。感染予防対策とマメな水分補給で健康管理も万全に、夏のアクティブなヒラメ釣りをお楽しみ頂きたい。
今回利用した釣り船
出船データ
乗船料金:1万3,000円(餌・氷付き)
集合時間:午前4:00までに船着場へ(予約時に要確認)
この記事を書いたライター
6歳から釣りに親しみ、海・川・釣堀・湖のルアー・フライ・餌釣りに節操なくのめり込む釣り好き。2019年JGFA沖釣りサーキット・総合優勝/2010年JGFAオールジャパンゲームフィッシングコンテスト・マダイの部・優勝(10.2kg)…他