2024年03月13日公開
解禁から最初の週末、暖かい日が続いていたのが嘘のような寒さ。遠くに見える富士は美しい雪化粧、キンと冷えた河原には咲き急いだ河津桜の鮮やかなピンクの花びらが舞っていた。今シーズンのスタートは河津川水系を巡りながら春を見つける釣り旅だ。
山深き萩ノ入川、本谷川は水温低下で魚の姿見えず・・・
静岡県河津川。中でも七滝(ななだる)周辺は毎年訪れるお気に入りの流域である。とにかく穴場で、滅多に釣り人と出会うことがない。ルアーで狙う私達にとって、先行者がいないということはその日の釣果に大きく影響してくる大事な要素となっている。
が、しかし…。遊漁券を購入しにキャンプ場に向かっていると河原に一台の車が!こんな早朝に河原に車があるなんて釣り人に違いない!よくみると着替えをしている釣り人の姿が。なんと先行者が!萩ノ入川も本谷川も川幅が狭く小さな川なので先行者がいると厳しいのだ。こりゃどうしたものかと思いつつ、遊漁券を購入していると釣友から連絡が!
「もしかして河津にいる?」。そう、先程見かけた釣り人は友人だったのだ。彼にとって、渓流釣りで初めてアマゴを釣り上げたのが私達がオススメしたこの流域だったことを思い出した。あ~良かった。友人達が萩ノ入川へ入川したので私達は本谷川へと向かい情報交換しつつ釣りを開始する事にした。
早速一投目!ノーチェイス。細かく探りながらミノーを投げる。河原を降ったり、登ったりと場所を変えつつキャストをしていくがどこもノーチェイス!早朝の渓にはまだ陽が届かず寒さも厳しい。そのせいなのか川に生命感を感じることが出来なかった。友人達の入った萩ノ入川でもチェイスが一度もないと連絡があった。厳しい・・・。急激に下がった気温、水温のせいだろうか?友人達は早々に見切りをつけ別の支流へと向かっていった。
私達は暫し本谷川で粘る事に。あちこち釣り歩き、もうダメか~と思った時だった。滝壺にシンキングのミノーをキャストすると今日初のチェイスが!アマゴであろう良型の魚体が深みから飛び出してきた。一瞬ミノーに触れたがノーバイト。ここからはミノーチェンジをしても二度と姿を見せてくれることは無かったが「魚はいる!」そう思わせてくれる希望のチェイスとなった。
切り立った谷で小さな春がやってきた
早朝、釣り友に会った事で、友人が初めてアマゴを釣り上げたポイントを思い出し、久しぶりに向かう事にした。崖を歩きアップダウンが激しいポイントだ。ここは昔、実によく釣れたポイントであり、私達にとっては一級ポイントであった。ポイントに着くとそこには昔と変わらぬ姿があった。とりあえず目視できる魚はいない様だが、よく釣れたという私たちの中の神話は今なお健在だろうか?
相方とポイントをシェアし、ミノーを投げる。ミノーがダメならスプーンにスピナーとあらゆる手を尽くした。ポイントは切り立った崖が右にカーブし、水深もあり奥が探りにくい。うまくキャストが出来ない。いつもならチェイスが無ければ早々にポイントを変える私達だが今日は粘った。相方がシルバー系のシンキングミノーをキャストすると実に良い所に着水した!トゥイッチを入れ、巻き始めた時だった。竿先に重さが乗った!
来たか?来たのか?「何か軽いな~」と相方が言った瞬間、グッとした引きがあった。キタキター!小さな魚体ではあったが、釣り上がってきたのは間違いなくアマゴである。凛とした空気の美しい清流で小さな春はやって来たのだった。
初釣行の大鍋川へ
小さな春をもたらしてくれた本谷川を後にして初釣行の大鍋川へと向かった。川釣りと言うのは、駐車ポイントと入川口を探す事が難儀である。川沿いの細い道をウロウロしてやっと見つけた入川口。ここも山深く、陽が中々届かず空気は冷たい。しかし、見渡す限り良さそうなポイントが点在していた。
早速、相方と上下に分かれ釣り歩くことに。なるべく流れが緩く水深のあるポイントを狙っていった。石を乗り越え、川を切る。ウエーダーを着ていても川の冷たさが伝わってきて足がつりそうだ!毎年ながら川歩きの初日は川歩きがままならず、何度も転倒しそうになる。釣り上がると次々とポイントは現れるが、ここ大鍋川でも目視できる魚は居ず、チェイスが一度もなかった。
ルアーにフライ、餌釣りの釣り人達と言葉を交わしたが、みな口を揃えて「厳しいです!」の一言であった。友人達はと言うと、佐ヶ野川へ向かっていたが、こちらも未だチェイスがないとの事だった。河津川水系はどこも厳しい状況が続いていた。
最後の砦、桜と菜の花で色付く河津川本流では多くのチェイスにライズまで!
支流が駄目なら本流じゃ!海から4~5km上流のポイントへ。本流に着く頃には陽も差し背中がポカポカと暖かかった。ポイントは浅場の中に水深のあるスリットが点在し、良さそうな雰囲気だ!
川に手を浸けると支流よりも明らかに暖かく午後になり水温も上がってきた。水温計は11度を指していた。いかんせん本流はポイントが広くどこからやって行こうかと迷ってしまう。ひと足先に春(アマゴ)を手にした相方が余裕の「お先にどうぞ!」(笑)。ではでは、お言葉に甘えてここぞのポイントへ。
余裕の眼差しを向ける相方の横で第1投目!遠投し右岸からミノーを引いた。川の中腹に来ると「ガツ!」OH!NO~根掛かりである・・・泣ける。ルアー釣りは1投目が一番大事なのに~。隣では相方が余裕の1投目!着水から間も無く竿が大きく曲がった!ウソ~!ルアーを引きながらチェイスが見えた!とのこと。釣り上がってきたのは良型の美しいアマゴであった。「お先にどうぞ」を無駄にしてしまった私は指をくわえ釣り上がったアマゴを眺めた。
相方がアマゴの写真撮影をしている間に慌ててキャスト!すると足元まで良型のアマゴが追ってきた!しかし、ここでも後少しのところで喰わせることが出来なかった。この後4度のチェイスにも関わらずキャッチならず・・・。本流をかなりの距離釣り歩いたがチェイスやライズは目にするものの私には遠き春となった。
しかし、支流に比べ本流は間違いなく魚影が濃く、反応も良かった。山に陽が落ち、陽が翳ると共に反応は無くなってしまったが水温の上がる一瞬、喰い気は上がりこの時を逃さなければ、春を手にすることができるだろう。
私には遠き春となったが、河津川の河原には菜の花が咲き誇り、空を見上げれば美しい桜の花びらがヒラヒラと舞い、春の香りを感じる楽しい釣り時間となった。